■3次以上の因数分解(例題→選択問題)
※ 3次以上の式の因数分解を行う強力な方法として「因数定理」があるが,これは数学IIで習う.数学Iではもっと簡単に「因数分解公式」「置き換え」などで因数分解できるものだけを扱う.

[I]   a3+b3=(a+b)(a2ab+b2)
[II]  a3b3=(ab)(a2+ab+b2)
■証明するには右辺を展開してみるとよい.
 (a+b)(a2ab+b2)
 =a3a2b+ab2
 +a2bab2+b3
 =a3________+b3=(左辺)
 (1次が+)(2次の符号が交替)⇒(3次は両端だけ残る)
 (ab)(a2+ab+b2)
 =a3+a2b+ab2
 a2bab2b3
 =a3________b3=(左辺)
 (1次の符号が交替)(2次の符号は一定)⇒(3次は両端だけ残る)
このように「中間項が消える」のは,一方の符号だけが交替で現われるためである.
他の例
 (x+1)(x3−x2+x−1)
 =x4−x3+x2−x
 +x3−x2+x−1
 =x4________−1
 (x−1)(x4+x3+x2+x+1)
 =x5+x4+x3+x2+x
 −x4−x3−x2−x−1
 =x5___________−1
注意すべきこと
[I] [II] の公式は (a+b)2=a2+2ab+b2 とは全く関係がない.
すなわち
a3−b3 #等しくない# (a−b)(a2+2ab+b2)
a3+b3 #等しくない# (a+b)(a2−2ab+b2)

[I] [II]の例
x3+8=x3+23=(x+2)(x2−2·x+22)=(x+2)(x2−2x+4)
8x3−27=(2x)3−33=(2x−3)(4x2+(2x)·3+32)
______=(2x−3)(4x2+6x+9)

問題1 次の式を因数分解せよ. (正しいものを選べ.)

.
次の公式は教科書には登場しないが,入試ではよく出る.
[III]   a3+b3+c3−3abc
______=(a+b+c)(a2+b2+c2−ab−bc−ca)

■証明するには,まず (a+b)3 を作るとよい.
 a3+b3+c3−3abc
___=(a+b)3−3a2b−3ab2+c3−3abc
___=(a+b)3+c3−3a2b−3ab2−3abc
___={(a+b)+c}{(a+b)2−(a+b)c+c2}−3a2b−3ab2−3abc
___=(a+b+c)(a2+b2+c2+2ab−bc−ca)−3ab(a+b+c)
___=(a+b+c)(a2+b2+c2−ab−bc−ca)

[III]の例
x3+y3+1−3xy
___=(x+y+1)(x2+y2+1−xy−x−y)
x3−8y3+6xy+1=x3+(−2y)3+13−3·x·(−2y)·1
___=(x−2y+1)(x2+4y2+1+2xy+2y−x)
問題2 次の式を因数分解せよ. (正しいものを選べ.)

.
[IV]   x2 , x4 , x6 ··· のようにx の偶数乗から成る式を複二次式という.
 複二次式は x2=A と「置き換え」ると因数分解しやすい
[IV]の例
x4+x2−6 の因数分解
____x2=A とおくと
____(原式)=A2+A−6=(A+3)(A−2)
____元の x に戻すと (x2+3)(x2−2) …(答)
x4−6x2+8 の因数分解
____x2=A とおくと
____(原式)=A2−6A+8=(A−2)(A−4)
____元の x に戻すと (x2−2)(x2−4)
※安心するのはまだ早い! x2−4 は,さらに因数分解できる.
____(x2−2)(x+2)(x−2) …(答)
※ 考えようによっては,x2−2(x+)(x−) とも書けるが,通常「特に断り書きがなければ,係数は有理数(整数・分数)の範囲で因数分解する」ことになっているので上記の答案でよい.
.
問題3 次の式を因数分解せよ.
 (正しいものを選べ.)


.
[V]
 (x2+2x)2−2(x2+2x)−3 などのように「同じもの」が2回以上登場するときは,その同じものを A とおくと因数分解しやすい.
[IV]の例
(x2+2x)2−2(x2+2x)−3 の因数分解
____x2+2x=A とおくと
____(原式)=A2−2A−3=(A+1)(A−3)
____元の x に戻すと
____(x2+2x+1)(x2+2x−3)=(x+1)2(x+3)(x−1) …(答)

同じものがないときは「作る」
(x+1)(x+2)(x+3)(x+4)−8 の因数分解
(原式)=(x+1)(x+4)(x+2)(x+3)−8
=(x2+5x+4)(x2+5x+6)−8
x2+5x=A とおくと
(x2+5x+4)(x2+5x+6)−8
=(A+4)(A+6)−8=A2+10A+24−8=A2+10A+16
=(A+8)(A+2)
元の x に戻すと
(x2+5x+8)(x2+5x+2) …(答)
(※整数係数ではこれ以上因数分解できない.)
問題4 次の式を因数分解せよ.
 (正しいものを選べ.)
※ 途中計算は各自で左のように行うこと.



■[個別の頁からの質問に対する回答][3次以上の因数分解について/18.8.26]
x三乗ーx二乗ー10xー8 を因数分解がわかりません
=>[作者]:連絡ありがとう.数学Tの教材から質問しておられますが,その問題は数学Tの問題ではなく,数学Uの剰余定理,因数定理を使う問題です.このページ
とおいて,となるaの値を探す.
aは−8の約数になるから,a=±1,±2,±4,±8のうちで合うものを探します.(因数分解は,あてもんです.まぐれ当たりがほとんどです.とはいえすぐ見つかります.a=−1)x+1で割り切れるから割り算をすると,残りは2次式だから見ただけで分かります.
■[個別の頁からの質問に対する回答][について/18.4.12]
問題2の解説と回答の結果が異なります
=>[作者]:連絡ありがとう.問題2の何番がどう違うのですか?
■[個別の頁からの質問に対する回答][3次以上の因数分解について/18.2.23]
x4乗+3x2乗+4の因数分解が、分かりません。
=>[作者]:連絡ありがとう.その次のページの(4)の項目に,そのものずばりの問題と解答があります.
■[個別の頁からの質問に対する回答][3次以上の因数分解について/18.2.14]
こんにちは。三次方程式の解法について質問させてください。 三次の変数aを消す為に両辺をaで割るというのは何となくわかるのですが、 その後に立法完成させるべくX=x-b/3 or X=x+b/3を代入して、X^3+pX+q=0の式を導くというのは、なぜそのような操作ができるのでしょうか? 一部のサイトでは平行移動といって幾何的にグラフ移動の説明をするものもありますが、あくまでも代数的な操作理由が知りたいです。  また代入すべき変数Xは、元の三次式の係数に関係なく、とにかくX=x-b/3 or X=x+b/3を代入してかまわないのでしょうか?
=>[作者]:連絡ありがとう.

のとき

とおくと

となっての項が消せるところに目を付けたのがカルダノ公式です.
とおくというのは各自の自由ですが,結果が生きて使えるという保証はないでしょう.X=x+b/3では2次の項は消えません.
※この教材ではカルダノ公式は扱っていませんが,実際にはとなってからの変換の方がミラクルで,思いついた人が偉いとしか言いようがないでしょう.なぜ思い付くのかなどと考えても無駄でしょう - - 相手は数学史に残る偉人なのだから,後の人は真似をすることから始めるのが無難
■[個別の頁からの質問に対する回答][3次以上の因数分解について/17.12.13]
複素数の範囲での解説もお願いします。 xの4乗-1の因数分解です
=>[作者]:連絡ありがとう.複素数の範囲での因数分解は数学Uで扱っています.
なお,このページの解説に沿ってwxMaximaをインストールし,画面上で空打ちをして入力欄を作ってから
gfactor(factor(x^4-1)); SHIFT+Enter
とすると,次のように因数分解の結果が出ます.
(x-1)*(x+1)*(x-%i)*(x+%i)
wxMaxima上では虚数単位は %i で表されています.
※このレベルなら暗算でできますが,筆者が計算間違いしそうな問題は,wxMaximaを検算に使っています.
■[個別の頁からの質問に対する回答][3次以上の因数分解について/17.4.23]
x4乗−16の答えがわかりません。 教えてください!
=>[作者]:連絡ありがとう.まず,x4−16の答という言い方はおかしいです.x4−16の因数分解というべきです.
x4−16=(x2−4)(x2+4)=(x−2)(x+2)(x2+4)
x2+4の部分をこれ以上因数分解すると虚数係数となるので,通常(実係数,さらに有理係数を前提とする)はこれ以上因数分解しない.
■[個別の頁からの質問に対する回答][3次以上の因数分解について/17.3.22]
8x3乗−27の答えを教えて下さい
=>[作者]:連絡ありがとう.(1) まず初めに「8x3乗−27の答え」というものはないことに注意してください.「8x3乗−27=0の答え」はありますし「8x3乗−27の因数分解」はあります.文字式の場合と方程式の場合では使われる用語が違います.(2) 次に,8x3−27の因数分解は[I] [II]の例 という箇所に窓枠で囲って書いてあります.書いてあることに気が付かなかった場合は,見たら解決です.書いてあっても,それが因数分解の答えだとは思えない場合は少々込み入った話になります.
の部分をどうしても1次式の積にしたい場合は解の公式を使って虚数の係数で因数分解しますが,通常「因数分解しなさい」という場合は無理数や虚数の係数を使わずに,整数や分数の範囲で因数分解します.
因数分解しなさいという場合:はそのままでよい
複素数の範囲で因数分解しなさいという場合:
■[個別の頁からの質問に対する回答][3次以上の因数分解について/17.3.22]
X4乗-6X2乗➕1の因数分解
=>[作者]:連絡ありがとう.サブメニューをたどって,因数分解の応用問題を見てください.x4−6x2+1=(x2+1)2−(??)2と変形できるか,それともx4−6x2+1=(x2−1)2−(??)2と変形できるかを両方試してから判断します.
質問の仕方がかなり横着なのでそれ以上は答えない方がよいでしょう.
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