■「掃き出し法」で不定,不能になる場合
○ この頁では,連立方程式の「掃き出し法」による解き方のうちで,不定,不能となる場合を扱います.
 係数行列が正則である場合(det(A)≠0であるとき.すなわち,A−1が存在するとき)
A=
の方程式に左からA−1を掛けることにより,直ちに
=A−1
という解がただ1つ存在することが分かります.
 これに対して,この頁で扱う問題は,係数行列が正則でない場合(det(A)=0であるとき.すなわち,A−1が存在しないとき)で,解が存在しない場合と不定解となる場合に分かれます.

○ 【例1】・・・解なしとなる場合
 次のような連立方程式は,zにどのような値を与えても成立しません.
 したがって,この連立方程式は「解なし」(不能)となります.
1x+2z=3…(1)
1y+4z=5…(2)
0z=6…(3)
 未知数y, zの立場を入れ替えると,次の連立方程式は,yにどのような値を与えても成立しません.
 したがって,この連立方程式は「解なし」(不能)となります.
1x+2z=3…(1)
0y=5…(2)
1z=6…(3)
 xについても同様です.
 これらを行列の形(拡大係数行列)で考えると,次のように「係数行列のある行がすべて0で,かつ,右辺の定数項が0でない」場合には,連立方程式は解なしになるということです.
a
d
0
b
e
0
c
f
0
p
q
r



r≠0
a
0
g
b
0
h
c
0
i
p
q
r


q≠0



○ 【例2】・・・不定解となる場合
 次のような連立方程式では,(3)式はzにどのような値を与えても成立します.
1x+2z=3…(1)
1y+4z=5…(2)
0z=0…(3)
 zの値は任意の数ですが,これをtとおくと,(1)(2)によりx, yの値はそのzの値で表されることになります.
x=3−2t
y=5−4t
z=t
↑自由に決められる変数が1個あるときは,1個の媒介変数を使って表される不定解となります.
この場合,必ずしもzを媒介変数にしなくても,例えばxを媒介変数にすることもできます.
x=t
y=−1+2t
z=
 さらに,次のような連立方程式は,y, zにどのような値を与えても成立します.
1x+2y+3z=4…(1)
0y=0…(2)
0z=0…(3)
 y, zの値は任意の数ですが,これをs, tとおくと(y, zは互いに等しくなくてもよいから,別々の文字で表す),(1)によりxの値はそのy, zの値で表されることになります.
x=4−2s−3t
y=s
z=t
↑自由に決められる変数が2個あるときは,2個の媒介変数を使って表される不定解となります.
右に続く
※ 連立方程式の解き方は,次の頁にもあります
○[中学校の内容]未知数が2個(x, yだけ)の簡単なものについて,代入法や加減法での解き方を扱うものは
○[高校の内容]未知数が2個(x, yだけ)の場合について行列との関わりを示すものは
○未知数が2個(x, yだけ)または3個(x, y, z)で,読者の入力した問題に対して解を自動的に計算するものは ○同次方程式が自明でない不定解をもつ条件を扱うものは ○逆行列,クラメールの公式による解き方を扱うものは ○Excelを使って解を求める方法は


 左記の不定解の場合を行列の形(拡大係数行列)で考えると,次のように「係数行列のある行がすべて0で,かつ,右辺の定数項が0である」場合には,連立方程式は不定解になるということです.
1
0
0
0
1
0
c
f
0
p
q
0

 元の連立方程式を考えると,上の例は,次の形の不定解を持つことになります.
x=p−ct
y=q−ft
z=t
 また,次のような場合には,2つの媒介変数で表示されることになります.
1
0
0
b
0
0
c
0
0
p
0
0

x=p−bs−ct
y=s
z=t


【要約】
 連立方程式を掃き出し法で解いて行くと,対角線上に1ができるが,その途中経過で「左辺の係数が全部0」となる場合が起ったら
○ 右辺の定数項が0でない ⇒ 解なし
○ 右辺の定数項が0 ⇒ 不定解 ⇒ 媒介変数を用いて表す


 以下において,連立方程式と同様に,1行目を(1),2行目を(2),..などと表す.
 また,繁雑になるのを避けるため,書き換えた式を再び(1)(2)(3)と振り直すものとする.
【例題1】
 次の連立方程式の解を掃き出し法で求めてください.
.x+3y+3z=−11…(1)
−2x−4y−2z=14…(2)
.x+y.−z=−2…(3)
(解答)
 連立方程式を拡大係数行列で表すと,次のようになる.
1
−2
1
3
−4
1
3
−2
−1
−11
14
−2
(2)−(1)×(−2)
(3)−(1)により
1
0
0
3
2
−2
3
4
−4
−11
−8
9
(2)÷2により
1
0
0
3
1
−2
3
2
−4
−11
−4
9
(1)−(2)×3
(3)−(2)×(−2)により
1
0
0
0
1
0
−3
2
0
1
−4
1
(3)により,「解なし」
【例題2】
 次の連立方程式の解を掃き出し法で求めてください.
.x+2y+3z=−1…(1)
3x+6y+9z=−1…(2)
.x+2y+z=−9…(3)
(解答)
 連立方程式を拡大係数行列で表すと,次のようになる.
1
3
1
2
6
2
3
9
1
−1
−1
−9
(2)−(1)×3
(3)−(1)により
1
0
0
2
0
0
3
0
−2
−1
2
−8
(2)により「解なし」
【例題3】
 次の連立方程式の解を掃き出し法で求めてください.
2x−y+3z=7…(1)
x−2y+3z=8…(2)
x+3y−2z=−7…(3)
(解答)
 連立方程式を拡大係数行列で表すと,次のようになる.
2
1
1
−1
−2
3
3
3
−2
7
8
−7
(1)(2)を入れ替える
1
2
1
−2
−1
3
3
3
−2
8
7
−7
(2)−(1)×2
(3)−(1)
1
0
0
−2
3
5
3
−3
−5
8
−9
−15
(2)÷3
1
0
0
−2
1
5
3
−1
−5
8
−3
−15
(1)−(2)×(−2)
(3)−(2)×5
1
0
0
0
1
0
1
−1
0
2
−3
0
(3)によりzは任意(=tとおく)
x=2−t
y=−3+t
z=t
【例題4】
 次の連立方程式の解を掃き出し法で求めてください.
3x+2y+5z=11…(1)
x−5y+13z=−19…(2)
2x+3y.=14…(3)
(解答)
 連立方程式を拡大係数行列で表すと,次のようになる.
3
1
2
2
−5
3
5
13
0
11
−19
14
(1)(2)を入れ替える
1
3
2
−5
2
3
13
5
0
−19
11
14
(2)−(1)×3
(3)−(1)×2
1
0
0
−5
17
13
13
−34
−26
−19
68
52
(2)÷17
1
0
0
−5
1
13
13
−2
−26
−19
4
52
(1)−(2)×(−5)
(3)−(2)×13
1
0
0
0
1
0
3
−2
0
1
4
0
(3)によりzは任意(=tとおく)
x=1−3t
y=4+2t
z=t


 以下,正しい番号を選択してください.
 なお,s, tは各々任意の数を表すものとします.
[問題1]
連立方程式の拡大係数行列が次の形になるとき,この連立方程式の解として正しいものを選んでください.

1
0
0
0
1
0
−1
−1
0
1
2
3

1解なし
2 x=1+t
y=2+t
z=t
3 x=1−t
y=2−t
z=t
4 x=t
y=2t
z=3t

[問題2]
連立方程式の拡大係数行列が次の形になるとき,この連立方程式の解として正しいものを選んでください.

1
0
0
−2
0
0
3
0
0
4
5
0

1解なし
2 x=4−3t
y=5
z=0
3 x=4t
y=5t
z=0
4 x=4+2s−3t
y=5t
z=0

[問題3]
連立方程式の拡大係数行列が次の形になるとき,この連立方程式の解として正しいものを選んでください.

1
0
0
0
1
0
2
5
0
−4
3
0

1解なし
2 x=−4−2t
y=3−5t
z=t
3 x=−4t
y=3t
z=0
4 x=−4t
y=3t
z=t

[問題4]
連立方程式の拡大係数行列が次の形になるとき,この連立方程式の解として正しいものを選んでください.

1
0
0
−1
0
0
2
0
0
3
0
0

1解なし
2 x=3t
y=0
z=0
3 x=3t
y=s
z=t
4 x=3+s−2t
y=s
z=t


[問題5]
次の連立方程式の解を掃き出し法で求めてください.

.x+2y+3z=2…(1)
4x+5y+6z=8…(2)
.y+2z=0…(3)

1解なし
2 x=2+t
y=−2+t
z=t
3 x=2+t
y=−2t
z=t
4 x=2t
y=−2+t
z=t

[問題6]
次の連立方程式の解を掃き出し法で求めてください.

.x+2y+z=2…(1)
2x+3y+2z=4…(2)
6x+5y+6z=12…(3)

1解なし
2 x=2−t
y=0
z=t
3 x=2−t
y=s
z=t
4 x=2−t
y=t
z=t

[問題7]
次の連立方程式の解を掃き出し法で求めてください.

.x+2y+2z=1…(1)
.2x−2y−3z=7…(2)
−3x+6y+8z=−13…(3)

1解なし
2
x=
y=−t
z=t
3
x=+
y=−t
z=t
4
x=+
y=−+t
z=t


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