そもそも
【分母に根号がない形とは】
(解説)をに書き直したり,をに書き直えることを「分母に根号がない形」にするといいます. よりは,の方が便利な事があります. 【例1】 この数字のだいたいの大きさを求めるために,を使って割り算をしようと考えた場合, のように「小数点を移動」して割り算を始めようとしても,が無限小数になっているので,1000倍しても10000倍しても計算が始められません. これに対しての形を使えば のように前から順に必要な桁数だけ求めることができます. |
【例2】 文字式でのような式は文字の部分が同じとは言えないので,係数をまとめて簡単にすることができません.
これと同様に
のような形をしていると,の係数をまとめて簡単にすることができませんが, の形になっていると と簡単にすることができます. ※このように,さまざまな計算の中にのような根号があるときは,分母に根号がない形に変形した方が計算しやすいことがあります.特に,足し算や引き算の中に根号が含まれているときは,分母に根号がない形が使いやすくなります. ※分母に根号がない形に変形すると,分子に根号が登場するのが普通ですが,「分子に」根号があるのは「横に」根号があるのと同じで,よい形なのです.
「分母に根号がない形」あるいは「分母に根号を含まない形」に変形することを,高校では「分母の有理化」といいますが,この用語は中学校の教科書には出ていないようです.(高校でもう一度習います).
のような根号の付いている数を無理数といい,整数や整数の比で書かれる分数は有理数と呼ばれます.そこで,この頁で述べている内容は,分母を無理数から有理数に変えることなので「分母の有理化」とも呼ばれます. |
基本
【例】
(1) (2) (3) (4) (1) のように分母に根号のある式を正しく変形して,分母に根号のない形にするには「分母と同じものを」分母と分子の両方に掛けます. …(答)
○中学校で習う「根号」は2乗すればその中に書かれた数を表すようになっています.
≪例≫ ,, そこで,「分母に書かれた根号と同じ数を掛けると根号がはずれる」というのが,分母から根号を取り除くための基本的な考え方です. だから,要点は簡単で,分母にがあればを掛ける,分母にがあればを掛ける,分母にがあればを掛けるとなります. ○しかし,分母だけに勝手になどを掛けると,分数の値が変わってしまって,等しい変形にはなりませんので,分母と分子に同じ数を掛けなければなりません. この変形は,小学校以来,通分や約分のときに学んで来た変形です. (←とする) (←とする) ○分母を根号のない形にするためには,分子にも根号を掛けなければなりません.そうすると分子が根号のある形になります.これは仕方のないことです. 分母をきれいにするためには,分子がボロボロになってもよい.「分母を助けるために分子には泣いてもらう」と割り切ること.両方によい顔をしようなどと中途半端に気を使うと間違ってしまう. (2) のように分母が「根号のない数」と「根号のある数」の積になっている場合
▲次の答案は間違いではないが,このように書くと「この子は勉強をしていない」とばれてしまうので,できれば避けた方がよい.
⇒「初めに」分母と分子に2も一緒に掛けてしまって,「最後に」2で約分するのなら,無駄な作業を2回行っていることになります.初めから2は掛けないようにすべきです.
◎お薦めの答案はよい子なので,そのままで使えます.片方(本当は半分ではなくルートだが言いにくいので通俗的に)しかなくて悪い子はだけです. だから,下に書いた答案のように,片方しかないだけをもう一枚付けての1枚にするのです. …(答) |
(3) のように分母の根号が簡単になる場合は,初めに根号を簡単にしてから,次に分母の処理をします. …(答) (4) のように根号の中が分数になっているときは,次の公式を使って変形してから考えます.
(ただし)
【例】…(これよりも下の解説は中学生には難しい・・・できなくてもよい.今,何をしてるのか確かめるために流し読みする程度)
(*1)〜(*2)の形の問題は,中学校の教科書では登場しません.これらは高校1年生で習うはずです.(*1) (*2) そもそも,1つの根号で書かれた,のような数は2乗すれば整数や(整数の)分数になりますが,2つの根号の和で書かれた数は2乗しても整数や(整数の)分数にはなりません.
←2乗は整数 ○
だから,分母が根号の和や差(整数と根号の和や差も)になっているときは,「分母と同じ数」を掛けても根号ははずれません.このような場合には次の展開公式でもも2乗になることを利用します.だけが登場してが登場しない公式はこれだけです.
←2乗は整数 ○ ←2乗しても根号が残る × ←2乗しても根号が残る × (*1) 分母が根号の和になっていれば,根号の差を掛ける (*2) 分母が根号の差になっていれば,根号の和を掛ける (*) 3つ以上の和や差になっているときは,何回かに分けて行う (こんな問題を中学生向けに出すことはない) (*) 分母に「整数や分数で表せない数」(高校ではこれを無理数という)がある場合でも,平方根で書ける数でなければ2乗しても整数や分数にはなりません.例えば,円周率や高校で習う3乗根(3乗したら2になる数字)などが含まれている場合には,この頁で扱った方法では分母を整数や分数に直すことはできません. |
例と答
次の各式を分母に根号のない形にしてください.和や差になっているものは,できるだけ簡単にしてください.
(1)
(解答)(途中経過) |
(2)
(解答)(途中経過) |
(3)
(解答)(途中経過) |
(4)
(解答)(途中経過) |
(5)
(解答)(途中経過)
だから
|
(6)
(解答)(途中経過)
だから
|
(7)
(解答)(途中経過) を変形するには,初めに,次の公式を使って2つの根号に分けます.
(ただし)
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(8)
(解答)(途中経過) 初めに,根号の中を約分して簡単にしておきます. 次に,分母と分子の2つの根号に分けます.
←
|
(9)
(解答)(途中経過) 初めに,根号の中を約分して簡単にしておきます. 次に,分母と分子の2つの根号に分けます. |
(10)
(解答)(途中経過)
第2項を「分母に根号がない形」に直して
の形に持ち込む方向で変形していきます.
← (上に掛けてある)ということは(横に掛けてある)というのと全く同じ
次のように分子に集めてもよい. |
(11)
(解答)(途中経過) 初めに,根号の中を簡単にしておきます. 次に,第2項を分母に根号のない形に直します. 次のように分子に集めてもよい |
(12)
(解答)(途中経過) 第1項は,根号2つの分数に分けます.第2項は分数を約分しておきます.
なので分子は1になります
さらに第2項を根号2つの分数に分けます. 以下の手順は,前の問題と同様です. ただし,分数が幾つもあるときの≪進め方≫は,次のように考えます.
▲「通分すると複雑になる」
◎「1つずつ分母を書き替える」 次のように分子に集めてもよい |
問題1
分母に根号のない形にしてください.(選択肢の中から正しいものをクリック) |