■固有値,固有ベクトルの求め方携帯版

■固有値,固有ベクトルを求めるには
 与えられた正方行列Aの固有値,固有ベクトルを求めるには,次のようにすればよい.

(1) 行列Aの固有方程式
det(A−λE)=0
を未知数λの方程式として解いて固有値λを求める.
Aがn次正方行列のとき,固有値は[重解・虚数解も含めると]全部でn個ある.

(2) 各々の固有値を連立方程式
(A−λE)=
に代入して,対応する固有ベクトルを求める.
固有ベクトルの定数倍もまた固有ベクトルとなるので,固有ベクトルを答えるときはのように任意定数を付けた形で答えるとよい.

例1  A=の固有値,固有ベクトルを求めよ.
(解答)
(1) まず,固有方程式det=0を解いて固有値を求める.
(8−λ)(5−λ)−4=0
λ2−13λ+40−4=0
λ2−13λ+36=0
(λ−4)(λ−9)=0
λ=4 , 9
(2) 次に,各々の固有値に対応する固有ベクトルを求める.
(i) λ1=4(A−λE)=に代入すると

←→ 
←→ 4x1+x2=0
←→  ( t は任意定数 , t0 )
となるから,
固有ベクトルは  ( t は任意定数 , t0 )
(ii) λ2=9(A−λE)=に代入すると

←→ 
←→ −x1+x2=0
←→  ( t は任意定数 , t0 )
となるから,
固有ベクトルは  ( t は任意定数 , t0 )
ゆえに,
固有値λ1=4,固有ベクトル ( t は任意定数 , t0 )
固有値λ2=9,固有ベクトル ( t は任意定数 , t0)…(答)
※この結果,行列による一次変換で方向が変わらないベクトル(固有ベクトル)が2つあることになります.

 1つはに平行なベクトルで,


のように方向が変わらず大きさが固有値λ1=4倍になります
 もう一つはに平行なベクトルで,


のように方向が変わらず大きさが固有値λ2=9倍になります

○ 与えられた正方行列Aに対して
零ベクトルでなく:
. …(*1)
方向が変わらない:
A=λ …(*2)
となるようなベクトルが存在するとき,
λを行列Aの固有値,を固有ベクトルという.

○ (2)式を変形すると
(A−λE)=…(*3)
となるが,
 一般に,与えられた正方行列Pに逆行列(P−1)が存在すれば(det(P)0のとき
P= ⇒ =P−1=
となり,P=を満たすベクトルは自明解 =だけとなる.

 したがって,自明解でない解が存在するためには
P−1が存在しないこと
 ←→ det(P)=0
が条件となる.
 (*3)式が自明解でない解をもつ条件はdet(A−λE)=0になる.

○ det(A−λE)λのn次式になり,行列A固有多項式と呼ばれる.
また,det(A−λE)=0を行列A固有方程式という.固有方程式はλのn次方程式になるので,重解や虚数解をもつ場合もすべて数えると全部でn個の解をもつ.



○ 解が不定となる連立方程式の解き方1
 未知数が2個の連立方程式で2つの方程式が同じ式であるとき
 これらの連立方程式は,次の方程式が1つ与えられているのと同じになる.
4x+y=0 …(A)
 未知数が2個で方程式が1つなので,通常の連立方程式のように例えばx=2 , y=3というような確定的な解はない.(不定形の解になる.)
 実際には,「4x+y=0を満たすx , yの組」はすべて解となる.
 図形的には,「直線4x+y=0上の点 ( x , y )」はすべて解となる.…(C)

 問題によっては(C)のように文章で答えてもよいが,以下において連立方程式の不定解の表し方を考える.

 (A)だけでは方程式が1つしかないので,1つの文字についてだけ解くことができもう一つの文字については解くことができないと考えるとよい.見た目で混乱しないように解くことをあきらめる方の文字は右辺に移項してかっこに入れてしまうとよい.
y=(−4x)

 実質的にはこれで答えになっているが,もともと未知数が2個あったのに対して,この形ではyだけに「ひいき」していてxを「安っぽく」扱っているように見えるので,どちらにも偏らない第3の変数tを導入して,次のように表すと「見た目にもスマート」で「各々の変数を分けて表せる」.

 この解をベクトルの形式で表すと
となるが,このベクトルは次のように書ける.

[注]
(A)式をx=… の形にしてもよいが,その場合は途中経過と結果に分数が残り「見た目がスマートではない」のでこの形を好む解答者や採点官はあまりいない.(数学的にはまったく問題ない.)
 ⇒  ⇒ 


例2  A=の固有値,固有ベクトルを求めよ.
(解答)
(1) まず,固有方程式det=0を解いて固有値を求める.
(1−λ)(2−λ)(3−λ)+0·0·2+0·1·(−1)−(1−λ)·(−1)·0−0·1·(3−λ)−0·2·(2−λ)=0
(1−λ)(2−λ)(3−λ)=0
λ=1 , 2 , 3
(2) 次に,各々の固有値に対応する固有ベクトルを求める.
(i) λ1=1(A−λE)=に代入すると


0x1=0は,どんな実数x1についても成り立つから,x1=t
( t は任意定数 , t0 )
←→ 
←→  ( t は任意定数 , t0 )
となるから,
固有ベクトルは  ( t は任意定数 , t0 )
(ii) λ2=2(A−λE)=に代入すると

←→ 
←→  ( t は任意定数 , t0 )
となるから,
固有ベクトルは  ( t は任意定数 , t0 )
(iii) λ3=3(A−λE)=に代入すると

←→ 
←→  ( t は任意定数 , t0 )
となるから,
固有ベクトルは  ( t は任意定数 , t0 )
ゆえに,
固有値λ1=1,固有ベクトル ( t は任意定数 , t0 )
固有値λ2=2,固有ベクトル ( t は任意定数 , t0 )
固有値λ3=3,固有ベクトル ( t は任意定数 , t0)…(答)
○ 解が不定となる連立方程式の解き方2
 未知数が3個の方程式2つのときも上と同様にして「1つの文字について解くのをあきらめる」とよい.

(B)(C)は同じ式だからこれらは次の連立方程式と同じ
ここで未知数yについて解くのをあきらめると,未知数2個,方程式2個の普通の方程式になって解ける.
⇒ 
yの代わりに第3の変数tを立てる
⇒ 
⇒ 


○ 解が不定となる連立方程式の解き方3
 条件式がない変数は任意の値をとることができる.  

 (i)において未知数がx1 , x2 , x3x2=0 , x3=0という解が得られたとき,x1は制限条件が何もない.このとき,x1は任意定数になる.この事情を中学校で習った直線の方程式で思い出してみると.点(3 , 0)を通りx軸と垂直な直線は次の図のような点を通っている.
 これらの点はx座標が3でy座標はいろいろな値がある.実はx=3という条件を満たしていればyはどんな値でもあり制限がない.
 方程式では制限のないものは書かないので,この直線の方程式はx=3と書く.

 逆に,方程式がx=3であるということはyは任意の値をとれるということを表している.
 x=3 ←→ x=3,yは任意 ←→ ( 3 , t )で表される点はすべて ←→ x=3, y=t
(なお,この直線は原点を通らないので,(x,y)=t(... , ...)の形には書けない)
 以上の簡単な復習から分かるように,左の連立方程式において,未知数がx1 , x2 , x3x2=0 , x3=0という条件になるということは,x1には条件が指定されていないということで
x1は任意定数
x2=0
x3=0
ということになる.
したがって, ( t は任意定数 , t0 )
が解となる.


■問題■ 次の行列の固有値,固有ベクトルを求めよ.
(1) A=
(2) A=
(解答)
(1)
固有値−1,固有ベクトル ( t は任意定数 , t0 )
固有値4,固有ベクトル ( t は任意定数 , t0 )
(2)
(※成分に分けて書くと)
固有値2,固有ベクトルx1=0, x2=0, x3=t
固有値−1,固有ベクトルx1=t, x2=t, x3=−t
固有値1,固有ベクトルx1=−t, x2=t, x3=−3t
(いずれも,t は任意定数 , t0

※固有値と固有ベクトルは wxMaximaを使うと簡単に求めることができます.→この頁

【その他,固有値,固有ベクトル練習用の問題】
(1) 2次の正方行列が異なる2つの実固有値を持つ場合

引用元:ラング「線形代数学(下)」(芹沢正三訳/ちくま学芸文庫)p.078
固有方程式(特性方程式)は
det
より




固有値は
のときに代入すると

より
4x+4y=0
5x+5y=0

←→x+y=0
←→y=(−x)
固有ベクトルは
tは任意の数)
のときに代入すると

より
−5x+4y=0
5x−4y=0

←→5x−4y=0
←→
固有ベクトルは
tは任意の数)
これはsは任意の数)と書いてもよい
wxMaximaでは
Enterキーを押して入力欄を作り
A : matrix([2,4],[5,3]);
と入力し,
eigenvectors(A);
とすれば
[[[7,-2],[1,1]],[[[1,5/4]],[[1,-1]]]]
という結果が得られる.
これは固有値7は重複度1で,これに対応する固有ベクトルが
固有値−2は重複度1でこれに対応する固有ベクトルがであることを示している.
(2) 2次の正方行列が1つの実固有値(2重解)を持つ場合

引用元:ラング「線形代数学(下)」(芹沢正三訳/ちくま学芸文庫)p.079
固有方程式(特性方程式)は
det
より


固有値は(2重解)
のときに代入すると

より
y=0 固有ベクトルは
tは任意の数)
wxMaximaでは
Enterキーを押して入力欄を作り
A : matrix([1,1],[1,0]);
と入力し,
eigenvectors(A);
とすれば
[[[1],[2]],[[[1,0]]]]
という結果が得られる.
これは固有値1は重複度2で,これに対応する固有ベクトルがであることを示している.
(3) 実係数の2次の正方行列が異なる2つの虚数の固有値を持つ場合

引用元:ラング「線形代数学(下)」(芹沢正三訳/ちくま学芸文庫)p.078
固有方程式(特性方程式)は
det
より



2次方程式の解の公式により固有値は
のときに代入すると

より
xi+y=0…(1)
−x+yi=0…(2)

(1)の両辺にiを掛けると(2)に一致するから(1)←→(2)
←→xi+y=0
←→y=(−xi)
固有ベクトルは
tは任意の数)
のときに代入すると

より
−xi+y=0…(1)
−x−yi=0…(2)

(1)の両辺に−iを掛けると(2)に一致するから(1)←→(2)
←→−xi+y=0
←→y=(xi)
固有ベクトルは
tは任意の数)
これらはtは任意の数)と書いてもよい
wxMaximaでは
Enterキーを押して入力欄を作り
A : matrix([3,2],[-2,3]);
と入力し,
eigenvectors(A);
とすれば


という結果が得られる.
これは固有値は重複度1で,これに対応する固有ベクトルが
固有値は重複度1で,これに対応する固有ベクトルがであることを示している.
(4) 複素成分の2次の正方行列が異なる2つの固有値を持つ場合

引用元:ラング「線形代数学(下)」(芹沢正三訳/ちくま学芸文庫)p.078
固有方程式(特性方程式)は
det
より



2次方程式の解の公式により固有値は
のときに代入すると

より
…(1)
…(2)

(1)の両辺にを掛けると(2)に一致するから(1)←→(2)
←→
←→
固有ベクトルは
tは任意の数)
のときに代入すると

より
…(1)
…(2)

(1)の両辺にを掛けると(2)に一致するから(1)←→(2)
←→
←→
固有ベクトルは
tは任意の数)
これらはtは任意の数)と書いてもよい
wxMaximaでは
Enterキーを押して入力欄を作り
A : matrix([1,%i],[%i,-2]);
と入力し,
eigenvectors(A);
とすれば


という結果が得られる.
これは固有値は重複度1で,これに対応する固有ベクトルが
固有値は重複度1で,これに対応する固有ベクトルがであることを示している.

(5) 3次の正方行列が異なる3つの実固有値を持つ場合

引用元:ラング「線形代数学(下)」(芹沢正三訳/ちくま学芸文庫)p.078
固有方程式(特性方程式)は
det
より






この式を簡単にすると


固有値は
のときに代入すると

より
2x+2y+2z=0
2x+5y+2z=0
−3x−6y−3z=0

←→
x+y+z=0…(1)
2x+5y+2z=0…(2)
x+2y+z=0…(3)

(1)−(3)よりy=0
これを使って(1)(2)(3)を書き直すとすべてx+z=0になるから
y=0
z=(−x)

固有ベクトルは
tは任意の数)
のときに代入すると

より
x+2y+2z=0
2x+4y+2z=0
−3x−6y−4z=0

←→
x+2y+2z=0…(1)
x+2y+z=0…(2)
3x+6y+4z=0…(3)

(1)−(2)よりz=0
これを使って(1)(2)(3)を書き直すとすべてx+2y=0になるから
z=0

固有ベクトルは
tは任意の数)
のときに代入すると

より
−x+2y+2z=0
2x+2y+2z=0
−3x−6y−6z=0

←→
−x+2y+2z=0…(1)
x+y+z=0…(2)
x+2y+2z=0…(3)

(1)−(3)よりx=0
これを使って(1)(2)(3)を書き直すとすべてy+z=0←→z=(−y)になるから
x=0
z=(−y)

固有ベクトルは
tは任意の数)

※固有ベクトルが零ベクトルになることはないが,固有値が0になることはあります.固有値が0の場合はこの問題のようにt≠0となるどんな値tについても,零ベクトルではないベクトル

となって原点(0,0,0)に移されます.
wxMaximaでは
Enterキーを押して入力欄を作り
A:matrix([-1,2,2],[2,2,2],[-3,-6,-6]);
と入力し,
eigenvectors(A);
とすれば
[[[-3,-2,0],[1,1,1]],[[[1,0,-1]],[[1,-1/2,0]],[[0,1,-1]]]]
という結果が得られる.
これは固有値−3は重複度1で,これに対応する固有ベクトルが
固有値−2は重複度1で,これに対応する固有ベクトルが
固有値0は重複度1で,これに対応する固有ベクトルが であることを示している.

上記の途中経過に登場する3元連立1次方程式を解くには
linsolve([2*x+2*y+2*z=0, 2*x+5*y+2*z=0, -3*x-6*y-3*z=0], [x,y,z]);
などと入力すればよく,そのとき得られる出力
[x=-%r1,y=0,z=%r1]
は,%r1が上記の解説のtに対応するパラメータで,このパラメータで表示される不定解となることを示している.
(6) 3次の正方行列が1つの実数解と1つの2重解とを持つ場合

引用元:新編 高専の数学2 問題集(田代嘉宏編/森北出版)p.112
固有方程式(特性方程式)は
det
より




この式を簡単にすると

因数定理を用いて因数分解する.を代入すると成り立つから左辺はで割り切れる.因数分解すると

固有値は (は2重解)
のときに代入すると

より
−z=0…(1)
2x+y+2z=0…(2)
2x+y+z=0…(3)

(1)よりz=0
これを使って(2)(3)を書き直すと2x+y=0になるから
z=0
y=(−2x)

固有ベクトルは
tは任意の数)
のときに代入すると

より
−x−z=0…(1)
2x+2z=0…(2)
2x+y=0…(3)

(1)−(2)よりz=(−x)
(3)よりy=(−2x)
固有ベクトルは
tは任意の数)
wxMaximaでは
Enterキーを押して入力欄を作り
A:matrix([1,0,-1],[2,2,2],[2,1,2]);
と入力し,
eigenvectors(A);
とすれば
[[[1,2],[1,2]],[[[1,-2,0]],[[1,-2,-1]]]]
という結果が得られる.
これは固有値1は重複度1で,これに対応する固有ベクトルが
固有値2は重複度2で,これに対応する固有ベクトルが であることを示している.

上記の途中経過に登場する3元連立1次方程式(1)82)(3)を解くには
linsolve([-x-z=0,2*x+2*z=0,2*x+y=0],[x,y,z]);
などと入力すればよく,そのとき得られる出力
[x=%r2,y=-2*%r2,z=-%r2]
は,%r2が上記の解説のtに対応するパラメータで,このパラメータで表示される不定解となることを示している.

*** メモ ***
○ここまでは,行列→固有値→固有ベクトルの順に求めるという基本を解説しており,この基本を身に付けてもらうことが重要なことですが,「必ず固有値が固有ベクトルよりも先に決まるとは限りません」.

○何らかの事情で固有ベクトルが先に求まった場合にも,それに対応する固有値を求めることができます.
問題(1)を例にとって示します.
行列の固有値がでこれに対応する固有ベクトルがであるとき,

が成り立ちます.
そこで,何らかの事情での固有ベクトルがであることが分かれば

により,固有値−1が求められます.
同様にしての固有ベクトルがであることが分かれば

により,固有値4が求められます.
※固有ベクトルを0倍以外の定数倍したものもまた固有ベクトルなので,上記の議論はの固有ベクトルをとした場合でも同様に

により,固有値−1が求められます.

の固有ベクトルをとした場合でも同様に

により,固有値4が求められます.
○さらに,固有値と固有ベクトルの組が与えられれば元の行列は次のように復元できる.
問題(1)を例にとって示します.
行列が未知で,
固有値−1に対応する固有ベクトルが
固有値4に対応する固有ベクトルがであるとき


まとめて書くと




となって,元の行列が求められる.
※固有ベクトルを0倍以外の定数倍したものもまた固有ベクトルなので,上記の議論は,固有値−1に対応する固有ベクトルが,固有値4に対応する固有ベクトルがとしたときも同様にして




となって,元の行列が求められる.
【要約】 行列A ←→ 固有値,固有ベクトルのすべての組
(7) 
行列の固有ベクトルに対応する固有値を求めてください.また,固有ベクトルに対応する固有値を求めてください.
解説
(8) 
行列の固有ベクトルに対応する固有値を求めてください.また,固有ベクトルに対応する固有値を求めてください.
解説
(9) 
固有値−3に対応する固有ベクトルがで,固有値4に対応する固有ベクトルがとなる行列を求めてください.
解説
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