■行列の対角化とは

○ 行列の対角化とは
 対角行列はべき乗(累乗)計算が簡単にできるなど便利な性質があり,対角行列になおすことができればメリットが大きい.
 与えられた正方行列Aに対して,
P−1AP=
となるような行列Pを見つけてP−1APが対角行列になるようにすることを対角化という.
(参考)
(1) 対角行列の積を求めるには対角成分を掛けるだけでよい.
=
(2) 対角行列のn乗を求めるには各対角成分をn乗すればよい.
n=

※ 「対角化せよ」という問題に対しては,
P−1AP=
の形で答えるとよい.
 この式に左からPを,右からP−1を掛けた式,
A=PP−1
は同じ内容を表している.
※注1 m×n行列とj×k行列の積はn=jの場合のみ定義される.
したがって,行列のべき乗(累乗)が定義されるのは正方行列に限る.
:あり ,:なし


※注2 対角行列でない行列Aを対角行列にすることはできない.対角化とは,P−1APを対角行列にすることをいう.

○ P−1APの形の式の特徴

・ P−1AP=のとき
 左辺のn乗については,
(P−1AP)n=P−1AnPが成り立つ.
 右辺のn乗については
n=が成り立つ.
したがって,
P−1AnP=
両辺に左からPを,右からP−1を掛けると
An=PP−1
が求まる.
※ 対角行列Dで表すとき,次のように変形してもよい.
P−1AP=DA=PDP−1
のとき
An=( PDP−1 )n=PDnP−1=PP−1
※ 行列の積について
(1) 交換法則は成立しない.
一般にはABBA
 このため,行列の積について文字の順序を入れ替えることはできない.
(2) 結合法則は成立する.
つねに(AB)C=A(BC)
 このため,どの掛け算を先に行うかは自由に変えられる.また,ABCと書くとき,どちらの意味に解釈されても結果は等しくなるので,(AB)CA(BC)を単にABCと書くことができる.

 ある行列Pとその逆行列P−1との積は単位行列になる
P−1P=PP−1=E
が,交換法則が成り立たないから
P−1AP=?=P−1PA=A
などと変形することはできない.(間にAがあるから勝手に順序を入れ替えてP−1Pを作ることはできない.)
 結合法則を利用するとP−1APの形の式のn乗は,次のように簡単になる.
○ 2乗のとき

(P−1AP)(P−1AP)=P−1A(PP−1)AP=P−1AEAP=P−1AAP
だから
(P−1AP)2=P−1A2P
が成り立つ.

○ 3乗以上のときも

(P−1AP)(P−1AP)···(P−1AP)
=P−1APP−1AP···P−1AP
において隣り合うPP−1を先に計算してEにしておくと,掛け算ではすべて無視できて
(P−1AP)n=P−1AnP
となることが分かる.

○ 対角化と累乗計算の例
 与えられた正方行列Aに対して,
P−1AP=D (Dは対角行列)
となるような行列Pを見つける方法については,次の頁で扱う.ここでは,行列Pが見つかったときの累乗計算を示す.
例1
A=
のとき,
P=
とおくと,
P−1=
P−1AP=
となるから
P−1AnP=
よって
An=
=
例2
A=
のとき,
P=
とおくと,
P−1=
P−1AP=
となるから
P−1AnP=
よって
An=

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