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== 複素数の計算 ==

■虚数単位iの導入
 根号を用いて2次方程式を解くには、x2=a ⇒ x=±という変形を行います。
 これによりx2=−1を解くと、x=±のように根号の中が負である数が登場します。
 同様にして、x2=−2 ⇒ x=±
x2=−3 ⇒ x=±
となりますが、「負の数のルート」を表す記号を1つずつ作らなくても1つだけi=と定めると、他の負の数のルートはすべてこのiで表すことができます。

【虚数単位iの定義】
 x2=−1の1つの解を虚数単位といい、iで表します。
すなわち
i= …(1)
i2=−1 …(2)
 さらに、x2−2x+5=0すなわち(x−1)2=−4のような2次方程式についても
x−1=±
x−1=±2i
x=1±2i
 一般に2次方程式を解くと、
(x−p)2=−qx−p=±
x=p±
の形の数が登場します。(p , qは実数)
 そこでa+bi (a , bは実数)の形の数を考えれば、すべての2次方程式の解を表すことができます。このa+bi (a , bは実数)の形の数を複素数といい,aを実部、bを虚部といいいます。

■虚数単位i=を定義すると、負の数のルートはすべてこの虚数単位で表すことができます。
(1) =−i
(2) ===i
(3) ===i
(4) ===2i
(5) ===i
(6) 

※ 負の数のルートについて,次のようなものは必ずしも等しいとはいえません.
×←××→
※ 次の変形規則が自由に使えるのは,a>0, b>0の場合であり,それ以外の場合は必ずしも成り立つとは限りません.

(解説)
のとき
は成り立つ


だから,は成り立つ


だから,は成り立つ


だから,は成り立たない
のとき
は成り立つ


だから,は成り立つ


だから,は成り立たない


だから,は成り立つ
○ 正しく変形するためには,「負の数のルートが登場したら,そのたびに虚数単位iで表すようにします.」
×=i×i=i2 =−
=
になります.

【問題1】
 次の式を計算してください.負の数のルートが登場するときは,虚数単位iを使って表してください.
(下の選択肢から選んでください.)
(2)


9i −9i 3i −3i

【複素数の定義】
 a+bi (a , bは実数)の形の数を複素数といい、a実部b虚部という。(2つの要素から成り立っている数・・・複素数)
 複素数のうちで、特にb=0のものを実数という。
 5+0iすなわち5は実数
 これに対してb0のものを虚数という。
 5−3iは虚数
 複素数のうちで、特にa=0のものを純虚数という。
 0+3iすなわち3iは純虚数

【複素数の計算規則】
(1)虚数単位iを含んだ式の和差積商は,普通の文字式におけるaxと同じように,係数をまとめて簡単にしたり,展開,約分など行うことができます.
2a+3a=5aと同様に2i+3i=5iとできます.
(2+x)(3+x)=6+5x+x2と同様に(2+i)(3+i)=6+5i+i2とできます.
(x−2)2=x2−4x+4と同様に(i−2)2=i2−4i+4とできます.

それでは,虚数単位の定義はどうなったのかと心配になりますが,普通の文字とは次の点が異なります.

(2)虚数単位i2が登場したら−1に書き換えます.(登場するたびに書き換えてもよく,まとめて書き換えてもよい.)
(1+i)2=1+2i+i2=1+2i+(−1)=2i
i3=i2i=−i
i4=i2i2=(−1)×(−1)=1
上で求めたi3=−iの結果を使ってi4=i3i=−i×i=−(−1)=1としてもよい.(どの段階で−1に書き換えても同じになります.)
○ iを含む式は,最終的にa+bi (a, bは実数)の形になるように変形します.
(1+2i)+(3+4i)=4+6i
(1+2i)−(5+7i)=−4−5i
(1+2i)(1−3i)=1−i−6i2=1−i+6=7−i

○ iを分母に含む式は,無理数の分母の有理化と同様の変形(共役複素数を掛ける)により,分母を実数にします.
分母がa+bi ⇒ 分母分子にa−biを掛ける.
分母がa−bi ⇒ 分母分子にa+biを掛ける.
===
と同様にして
===−i
(※iで割ることが符号を変えることと同じ結果になり,奇妙に見えますが,
i2=−1だから=−i
が成り立ちます.)
====−1+
と同様にして
===
i2=−1に注意)

※一般には,分母を2乗にしても実数にはできません.分母を実数にするためには,分母a+biの虚部の符号が逆のa−bi(共役複素数)を掛けなければなりません.
=== ←×
==== ←○
 iが付いていたら虚数,iが付いていなければ実数です.
 一番広い範囲のa+biの形で表される数が複素数です.

※正確に言えば
のような分数は,複素数としてa+bi (a, bは実数)の形で「実部と虚部に分けて表す」と
+ia=, b=ということ)
になりますが,「いつでも分けられる」ということが分かるので,最終形として
は許容されます.


※これに対して,
のような式をそのまま放置しておいてはいけません.これらの式では,実部と虚部が分かりません.


【問題2】
 次の式を簡単にしてください.
(下の選択肢から選んでください.)
(2) (2+3i)(1−i)


3+2i −1+5i 5+i 5−5i
(3) (1−i)2


0 2i −2i 2−2i
(4) i3+i4+i5+i6


0 2 4 2i 4i
(5)


1 2+3i 3+2i −2+3i −2−3i
(6)



2+4i 3+i 6+2i 6−2i

【複素数の相等】
a, b, c, dが実数のとき

○ 2つの複素数が等しいのは,実部も虚部も等しいときに限る.
a+bi=c+dia=cかつb=d…(1)
○ 特に,
a+bi=0a=0かつb=0…(2)

(※複素数の等式1つは,実部と虚部に分けた1組の連立方程式と同じ値打があるということです.)
(解説)
(1) 実部だけが等しくても,2つの複素数が等しいとは言いません.
5+3i≠5+4i
虚部だけが等しくても,2つの複素数が等しいとは言いません.
4+3i≠5+5+3i
実部が少ない分を虚部が埋めわせることはできません.
3+5i≠5+3i
(2) 0+0iのとき,単に0と書きます.

※(1)から(2),(2)から(1)のどちらも導けますので,どちらでやってもかまいません.
【例】
 x, yが実数のとき,
x+3i=4+yiならばx=4かつy=3
(1)を使って,両辺の実部と虚部をそれぞれ比較すれば得られます.
ただし,(1)から(2),(2)から(1)のどちらも導けますので,(2)でやってもかまいません.
たとえば,
x+3i=4+yi
(x−4)+(3−y)i=0
x−4=0かつ3−y=0
x=4かつy=3
とすれば(2)で考えていることになります.

x, yが実数という条件がなければ,この問題は解けません.
例えば
1) x=−3i, y=4iのとき,(−3i)+3i=0, 4+4i2=0
  となって,x+3i=4+yiが成り立ちます.
2) x=4−3i, y=0のとき,(4−3i)+3i=4+0i
  となって,x+3i=4+yiが成り立ちます.
*) 要するに,x, yが実数という条件がなければ,x+3i=4+yiを満たす複素数x, yは幾らでもあります.

【問題3】
 次の等式を満たす実数x, yを求めてください. (下の選択肢から選んでください.)
(3) (−2+i)x+(3−i)y=−7+3i


x=2, y=1 x=2, y=−1

x=−2, y=1 x=−2, y=−1
(4) (x+yi)(2−3i)=−7−9i


x=1, y=3 x=1, y=−3

x=−1, y=3 x=−1, y=−3

【問題4】 (実係数方程式の虚数解)
 x=2−iが2次方程式x2+ax+b=0の解となるように実数a, bの値を定めてください.
(下の選択肢から選んでください.)


a=4, b=5 a=4, b=−5

a=−4, b=5 a=−4, b=−5



【問題5】 (実係数方程式の虚数解)
 x=1+iが3次方程式x3+ax+b=0の解となるように実数a, bの値を定めてください.
(下の選択肢から選んでください.)


a=2, b=4 a=2, b=−4

a=−2, b=4 a=−2, b=−4


【問題6】 (複素係数方程式の実数解)
 2次方程式x2+(a+2i)x−(4+8i)=0が実数解をもつように実数aの値を定めてください.
(下の選択肢から選んでください.)


a=2 a=−2 a=3 a=−3 a=4 a=−4

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■[個別の頁からの質問に対する回答][複素数の計算について/17.5.10]
「√{2×(−1)}=√2√−1」と「次の変形規則が自由に使えるのは,a>0, b>0の場合であり,それ以外の場合は必ずしも成り立つとは限りません√a√b=√ab」が少し気になりました 自由に使ってないのかもわかりませんが、a,bの少なくとも一方が正であれば良いような気がします 「√{2×(−1)}=√2√−1」が成り立つ根拠となるものはどこを見たら良いでしょうか 分数の方を計算してみると分母が鬼門なので、少なくともb>0であれば掛け算も分数も良さそうです
=>[作者]:連絡ありがとう.注意深く読んでもらっているということがよくわかります.
ご質問の場合については,その通り少なくとも一方が正なら成り立ちます.東京図書の教科書には,
(1) a>0, b>0 (2) a>0, b<0 (3) a<0, b>0 (4) a<0, b<0 の各場合について
(A) (B)
のどれが成り立つか一覧表を作りなさい.という問題が出ています.その問題は深く考えさせる良問だと思う.
私の教材で「次の変形規則が自由に使えるのは,a>0, b>0の場合であり,それ以外の場合は必ずしも成り立つとは限りません.」とは,成り立つ場合と成り立たない場合があるということです.いわゆる部分否定です.とりあえずにっこり笑って「安全に変形できる」のは,「両方とも正の場合」ということで,それ以外は正誤様々です.