因数定理による因数分解
** 前のページの復習 **
【剰余の定理1】
整式で割った余りはに等しい.
【剰余の定理2.1】
整式で割った余りはに等しい.
【剰余の定理2.2】
整式で割った余りはに等しい.
(参考)
(1) 定理1において,見かけで判断してを整数と解釈することが多いが,実際にはそのような制限はない.したがって,は分数でもよく,無理数でもよい.を分数とすると2.1の定理が得られる.ただし,定理2.1では見かけで分かるようにを整数と考えて見やすい形に書いただけである.
例えば,のとき,
で,余り0,つまり割り切れるが,それはに対応している.
(2) 2.1と2.2には矛盾はないことに注意.例えばは,整式で割った余りなのか,で割った余りなのか,どっちなのかと問う必要はない.
例えば,のとき,
であるが,この余り3はで割った余りでもあり,で割った余りでもある.次の例から分かるように「余りは等しい」からである.(「商は2倍だけ違う」)


(要約)
 数学的には,定理1だけでよいが,分数の場合に見かけで分かり易いように,定理2.1,2.2も使ってよい.ただし,2.1,2.2ではは整数として使う.
 剰余の定理において,「余りが0」になる場合「割り切れる」から,次の因数定理が成り立つ.
【因数定理1】
整式についてが成り立つならば,で割り切れる.
【因数定理2.1】
整式についてが成り立つならば,で割り切れる.
【因数定理2.2】
整式についてが成り立つならば,で割り切れる.
【例題1】 次の式を因数分解してください.

 因数定理を使って因数分解するには,与えられた整式をとおいて,適当な整数
を代入して,ちょうど0になるものを探します.
 そういう意味では,人聞きがよくないですが,「因数分解は,ある程度はまぐれ当たりねらいです」.運が良ければ,速く当たり,運が悪ければ,なかなか当たりません.
(答案)
とおくと
だから
で割り切れる.
割り算を行うと








したがって,
残りが2次式になると,和と積を考える因数分解とか,たすき掛けの因数分解などを使って,さらに行けるところまで行けばよい
…(答)

 因数定理には「まぐれ当たり」の要素がありますが,全くのデタラメではありません.もう少し,効果的に「当てる」方法があります.整数係数で因数分解できる限り,もし


のように因数分解できるのなら,少なくとも次の関係が成り立ちます.


 したがって,「の約数」「の約数」でなければならない.
 で割り切れる
【重要】
 このようにして,整数係数の3次式が,もし整数係数で因数分解できるのなら
の約数
の約数
の中に,ちょうど0になるものがあるはずです.
【例題2】 次の式を因数分解してください.

の係数が1,定数項が6だから
±(分子は6の約数=1,2,3,6)/(分母は1)
すなわち,±1, ±2,±3,±6のうちのどれかで合うはずです.
(答案)
とおくと
だから
で割り切れる.
割り算を行うと









…(答)
 因数定理を使った因数分解のポイントは,因数を見つけたら,割り算によって次数が下げられるところにあります.
 しかし,因数が全部見つかったら,割り算も省略できます.
【例題3】 次の式を因数分解してください.

の係数が1,定数項が−3だから
±(分子は3の約数=1,3)/(分母は1)
すなわち,±1,±3;のうちのどれかで合うはずです.
(答案)
とおくと


だから
で割り切れる.
問題のの係数は1だから
…(答)
※※ややこしい話=早合点禁物※※
 【重要】にまとめたことは
整数係数の多項式が,「整数係数で因数分解できるときは」
±定数項の約数
最高次の係数の約数
の中に合うものがあるはずだ,ということで,必ず整数係数に因数分解できることを保証するわけではない.
すなわち,整数係数に因数分解できない場合には,何も言えない.
【例】
に対してのどれも0にはならない.実際には,になり,整数係数では因数分解できない.
【例】
のように適当に作った3次式や4次式の多くは整数係数の1次式で因数分解できない.
⇒ しかし,心配はいらない.なぜなら,そういう問題が「因数分解しなさい」という問題で出題されることはないからである.(できない問題を出題したら,問題が間違っていることになる)

【問題1】 次の式を因数分解してください.(選択肢の中から正しいものを1つクリック)
(1)

(2)


(3)

(4)


 通常,単に「因数分解せよ」という場合は,係数に「整数または分数」を使った範囲で(すなわち有理数の範囲で)因数分解することが求められています.特に断り書きがなければ,無理数や複素数を係数に使った因数分解は要求されません.
【例1】を因数分解せよ.
…(答)
【例2】を実数の範囲で因数分解せよ.
…(答)
【例3】を因数分解せよ.
…(答)
【例4】を複素数の範囲で因数分解せよ.…(答)
 係数に「整数または分数」を使った範囲で(すなわち有理数の範囲で)因数分解する場合に,次のような問題が出されたとき,の方は有理係数では因数分解できないので,を見つけない限り,問題は解けません.

 すでに述べた通り,±(1の約数)/(3の約数)の組合せの中にこの分数があります.
【例題4】 次の式を因数分解してください.

の係数が3,定数項が1だから
±(分子は1の約数)/(分母は3の約数)
すなわち,±1, ±1/3 のうちのどれかで合うはずです.
(答案)
とおくと
だから
で割り切れる.
割り算を行うと








…(答)

【問題2】 次の式を因数分解してください.(選択肢の中から正しいものを1つクリック)
(1)

(2)


 4次式を因数分解するときに,因数を1つ求めて割り算をしても,商はまだ3次式です.さらに,因数定理を使って割り算をすれば,2次式まで次数を下げられますが,この方法では因数定理を2回,割り算を2回行うことになり,計算量が多くなります.
 このような場合,初めに因数を2つ見つけるようにして,1回で2次下げる方がよいでしょう.
【例題5】 次の式を因数分解してください.

の係数が1,定数項が6だから
±(分子は6の約数)/(分母は1の約数)
すなわち,±1, ±2,±3,±6 のうちのどれかで合うはずです.
(答案)
とおくと

だから
で割り切れる.
割り算を行うと









…(答)
【問題3】 次の式を因数分解してください.(選択肢の中から正しいものを1つクリック)
(1)


(2)

(3)

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■[個別の頁からの質問に対する回答][因数定理による因数分解について/18.9.7]
問題2の(2)で、正解と思われる(2X+3)(X^2-X+1)を選ぶとXになります。なお解説は間違ってません。
=>[作者]:連絡ありがとう.最近アップしたばかりのページですが,突っ込みどころ満載のボケネタを混ぜたわけではない.紛らわしい選択肢を作っているうちに,管理人が罠にかかったということです.やはり,点検は他人が一番のようで,訂正しました.