== 領域における最大最小 ==
■ はじめに
○ 右図1のように,連立不等式 x0 , y0 , y−x+2 で表わされる三角形の領域において,y−x の取りうる値の範囲を求めたいものとする.

○ y−x のままでは,単なる「式」で xy も変るので分かりにくい.
 これを,y−x=k すなわち y=x+k とおくと「方程式」になり「直線」を表わす.
 このように,求めたい式の値を … =k とおき,k の取り得る値の範囲を考えると「図形」に対応させて考えることができる.

■ 1つの直線上では k の値は同じ

○ 例えば,右図1のAの直線の方程式は y=x+1 で,k=1 になっている.
 この直線の方程式が y=x+1 だということは,この直線上のどの点でも y=x+1 すなわち y−x=1 が成り立つことを表わしている.
x=−1, y=0 の点では,0−(−1)=1
x=0, y=1 の点では,1−0=1
x=1, y=2 の点では,2−1=1
他にも多くの点があるが,直線A上のどの点でも y−x の値が 1 になるのは,この直線上では y−x=1 が成り立つからである.
○ 右図1のBの直線の方程式は y=x+2 で,この直線上のどの点でも y−x の値は 2 になる.
x=0, y=2 の点では,2−0=2
x=1, y=3 の点では,3−1=2
  …
直線B上の点で y−x の値が 2 になるのは,この直線上では y−x=2 が成り立つからである.
○ 連立不等式 x0 , y0 , y−x+2 で表わされる領域は,上の水色の三角形の内部及び周上であるが,この領域内における y−x の最大値と最小値を求めるには次のように考えるとよい.
  y−x=k すなわち y=x+k とおくと,k は直線の切片を表わすから,上に行くほど大きく,下に行くほど小さくなる.
 例えば,直線Cは y=x+3k の値は大きいが,この直線は与えられた三角形の領域を通っていない.
右へ続く→
図1



→続き
[考え方]
○与えられた領域をある直線が通っている⇔領域内でその直線の k の値がとれる.
▼与えられた領域をある直線が通っていない⇔領域内でその直線の k の値がとれない.

上の三角形の領域では,
k=3の値はとれない.
k=2の値はとれる.(例えば点(0 , 2)においてy−x=2
k=1の値はとれる.(例えば点(0 , 1)においてy−x=1
……
k=−2の値はとれる.(例えば点(0,−2)においてy−x=−2
k=−3の値はとれない.

このように,y=x+kとおいてkの値を変化させると,直線はエレベーターのように上下し,点(0 , 2)において最大値2,点(2 , 0)において最小値−2となる.

 上の問題では,ある直線y=x+kが通っている点が1つでもあれば,そのkの値は領域内でとれる値となり,通るべき点は2つも3つもいらないことに注意
 実際には,最大値k=2となる点は(0, 2)の1点だけであり,最小値k=−2となる点は(2, 0)の1点だけであるが,これで十分
 他方において,−2<k<2となる点はそれぞれたくさんあるが,ある値がとれるかどうかという問題(最大値・最小値)にとっては,点が幾つあっても答は変らないので,「上の三角形の領域の内部」は最大値・最小値という問題に関係なく,三角形の周上だけで取りうる値はすべて実現されている.
 一般に,求める式の形がy=x+kのように直線図形になっているときは,つねに周上で最大値・最小値をとることが知られている.
[例題1]
  x , yが,不等式 x0 , y0 , y−x+2を満たすとき,2x−yの最大値と最小値を求めよ.
(1) まず領域を図示する.
(2) 次に,2x−y=kとおいて,幾つか直線を図示してイメージをつかむ.
※ 右図のように,kが大きくなると切片が小さくなることもある.
[解答]
_2x−y=kとおく
y=2x+(−k)において切片は −kだから,kが大きくなると切片は小さくなる.
(0 , 2)のとき最小値となり,k=0−2=−2
(2 , 0)のとき最大値となり,k=4−0=4…(答)

※ kの値は,図から切片として求まる場合もあるが,この問題のように (x , y)の座標が先に求まる場合は,代入すれば直ちに求まる(いただき〜♪と考えるべし).
[問題1]
  x , yが,不等式 y0 , yx , x+y2を満たすとき,y−2xの最大値と最小値を求めよ.
最大値 ,最小値

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[例題2]
 x0 , y0 , x+2y8 , 3x+y9のとき,x+yの最大値と最小値を求めよ.
(1) 領域を図示する.
(2) x+y=kとおいて,幾つか直線を描く.
(3) kの値を増やしていくとき,最初に領域にさわる所,最後に領域とさわる所を探す.
[解答] x0 , y0 , x+2y8 , 3x+y9の領域は右図の通り.
 また,x+y=k すなわち y=−x+k とおくと,右図の赤で示した直線になる.
傾きについては −3<-1<−1/2 が成り立つから,k が最大となるのは,(0 , 4)(3 , 0) ではなく交点 (2 , 3) になることに注意する.
 連立方程式 x+2y=8 , 3x+y=9 を解くと,交点は (x , y)=(2 , 3)
 傾きは −3<-1<− だから,図のように (2 , 3) において k が最大となる.
 最大値は 2+3=5

 次に,図のように (0 , 0) において k が最小となるから,最小値は 0+0=0

 最大値 5x=2 , y=3 のとき )
 最小値 0x=0 , y=0 のとき )…(答)
[問題2]
 x0 , y0 , 2x+y8 , x+3y9 のとき,x+2y の最大値と最小値を求めよ.
__________________最大値 ,最小値
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[例題3]
 x2+y25 のとき,y−2x の最大値と最小値を求めよ.
[公式] 【判別式】
_____ax2+bx+c=0 (ただし a0
の実数解の個数は
_____D=b2−4ac>0 のとき2個
_____D=b2−4ac=0 のとき1個
_____D=b2−4ac<0 のときなし
D の符号で調べることができる.
_____ax2+2b’x+c=0 (ただし a0
の場合は
_____D’=b’2−ac>0 のとき2個
_____D’=b’2−ac=0 のとき1個
_____D’=b’2−ac<0 のときなし
を使えば簡単になる.( D でやってもよい.)
※ x2+y2=5y=2x+k の共有点の個数は,これらから y を消去してできる x の2次方程式
_________x2+(2x+k)2=5
_________5x2+4kx+(2−5)=0
の判別式は
_____D’=(4k)2−20(2−5)
または,
_____D’=(2k)2−5(2−5)=−k2+25
[解答]
y−2x=k すなわち y=2x+k とおくと,傾き 2,切片 k の直線になる.
 x2+y25 において kの値が変化するとき,右図のように円に接するとき k が最大・最小となる.

 y=2x+kx2+y2=5 が接するときの kの値を求める.
 y を消去すると
_________x2+(2x+k)2=5
_________5x2+4kx+(k2−5)=0
接するのは判別式が0となる時だから
_________D’=(2k)2−5(k2−5)=−k2+25=0
より
_________k=±5
2つある接点 P, Q のどちらが k=5 に対応するのかは,見れば分かる.上にある方( k の大きい方)が k=5 となる.
 よって,最大値は 5,最小値は −5 …(答)
 この問題では,最大値・最小値が先に求まり,それを実現する x , yの値がまだ求まっていない.
 問題文に「最大値,最小値を求めよ。また,そのときの x , yの値を求めよ.」と特に指定されていなければ x , yの値を求めなくてもよい.
 指定されていれば,例えば最大値 k=5 となるのは,この値を代入して
_________5x2+20x+20=0
_________x2+4x+4=0
より x=−2 , y=1 とすればよい.
[問題3]
 x2+y25 , y0 のとき,2x+y の最大値と最小値を求めよ.
最大値 ,最小値 −

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■以下の内容は,教科書と比べると難しい,参考書では普通
[例題4]k が半径(の2乗)を表わす場合 ]
 y0 , yx , 2x+y6 のとき,x2+y2 の最大値と最小値を求めよ.
 x2+y2=k とおくと,k は原点を中心とする円の半径(の2乗)を表わす.
 そこで,円を描いて半径が最大・最小となる点を求めるとよい.
[解答]
 x2+y2=k とおくと,k は原点を中心とする円の半径(の2乗)を表わす.
 点 (3 , 0) においては k=32+02=9
 点 (2 , 2) においては k=22+22=8
円は外にふくらんでいるから(何と通俗的な解説!)これら2点の間の線分で最大となることはない.
だから,点 (3 , 0) において最大値 9 をとる.
 また原点において最小値 k=02+02=0 をとる.…(答)
[問題4]
 y2 , x2 , x+y2 のとき,x2+y2 の最大値と最小値を求めよ.
最大値 ,最小値
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[例題5]k が半径(の2乗)を表わす場合 ]
 y0 , x0 , x+y1 のとき,(x+1)2+y2 の最大値と最小値を求めよ.
 (x+1)2+y2=k とおくと,k(−1 , 0) を中心とする円の半径(の2乗)を表わす.
 そこで,円を描いて半径が最大・最小となる点を求めるとよい.
[解答]
 (x+1)2+y2=k とおくと,k(−1 , 0) を中心とする円の半径(の2乗)を表わす.
 点 (1 , 0) において最大値 k=4
 点 (0 , 0) において最小値 k=1 をとる.…(答)
[問題5]
 x2+y21 のとき,x2+y2−4x の最大値と最小値を求めよ.
最大値 ,最小値
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■[個別の頁からの質問に対する回答][領域における最大最小について/17.2.9]
例題2の傾きの範囲は -3<k<-1/2 ではないでしょうか?
=>[作者]:連絡ありがとう.少し記述に問題がありましたので訂正しました.