■ベクトルの内積
[解説]
● ベクトルのなす角
2つのベクトル の始点を原点Oに重ねて,= =とするとき,∠AOB=θをベクトルの のなす角という。ただし,0°≦θ≦180°とする。
● ベクトルの内積の定義

2つのベクトル=(a1 a2) =(b1b2) のなす角をθとするとき,ベクトル の内積  を次の式で定義する。
= ||・||cosθ・・・(1)
= a1b1+a2b2・・・(2)
[例]
● 右図のように||=2 ||=3 θ=60°のとき
   = 2・3・cos60°= 3
● 右図のように||=1 ||=2 θ=90°のとき
   = 1・2・cos90°= 0  (cos90°=0)
● 右図のように||=2 ||=1 θ=180°のとき
  
= 2・1・cos180°= -2
● =(1 2) =(3 4) のとき
   = 3 + 8 = 11
● =(-2 3) =(5 1) のとき
   = -10 + 3 = -7


左の定義において,(1)は矢印で表される図形ベクトルに対応し,(2)は成分表示に対応しますが,
(1)を定義にすれば(2)が導かれます。・・・●4




[参考]
●1 ベクトルのなす角(入試問題読み物)
●2 ベクトルの内積は「なぜこのように定義するのか」
●3 ベクトルの積の注意事項

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●1 ベクトルのなす角(入試問題読み物)
・2つのベクトルのなす角は,0°≦θ≦180°の範囲で定められます。これは,三角関数のときに登場する「動径のなす角」や「複素数のなす角」と異なる独特の約束です。むしろ,小中学生が180°までしか測れない分度器を持たされている場合と同じです。

・1980年代に,次のような入試問題を見かけたことがあります。(引用元の表示については,御容赦下さい。)
ベクトル がx軸の正の向きとなす角をα,βとするとき,2つのベクトル のなす角をα,βで表せ。」
大学から示された解答は
|β-α|
ということでしたが,筆者の考える解答は下記のとおりですので参考にして下さい。

x軸で分割される2つの領域(y>0,y<0)について
ア)  が同じ側にあるとき
|β-α|

イ)  が異なる側にあるとき
  (1) α+β ≦180°のとき
 α+β

    (2) α+β >180°のとき
360°-(α+β)

●2 ベクトルの内積は「なぜこのように定義するのか」
・手元に,大手三社の平成17年度版教科書がありますが,ベクトルの内積を
= ||・||cosθ
と定義する理由・事情・補足説明的なものは何もありません。
・ | |記号で何割かの生徒が,
cosθでさらに何割かの生徒が「違和感」を持ってしまうようですので,「不自然でない導入」が必要な箇所です。
・5分以内でできて(「高級な説明」を15分もすれば誰も聞かなくなるでしょう・・・),それなりに違和感を取り除ける説明として,
2つのベクトルのかけ算で,
結果が数字1つ(スカラー)になり
後で豊かな応用が広がっているもの
は1つしかない。それが、この定義」でいかがか。
・以上で5分間程度で切り上げて,速攻で初歩的例題に突入するのがおすすめ。
・R2×R2→R の写像の内,についてもについても線型となるものというのが数学的に重要なポイントだと思われますが,ちらりとでも触れるのは完全に高校の範囲を超えてしまうのが,どの教科書も触れられない理由かも。しかし,その結果として,頭ごなしの導入となってしまう弱点はあります。
・力・移動で仕事量と結びつけるとストレートに意味づけできますが,物理を習わない生徒の方が多いので一層話が通じません。何よりも,数学は物理で定義されるわけではないというのが致命的かも。




違和感の中身
sinθやtanθもあるのになぜcosθだけを使うのか?
要するに「他にも定義の仕方はあるはずなのに,なぜこのような変な式を定義にするのか」というのが違和感。そこで,他の定義では役に立たないことを言えば(宣言しているだけ),少しは納得?

●3 ベクトルの積の注意事項
(1) 内積は数字であって,ベクトルではない。
例  = 5 <・・・○
(2) 3つのベクトルの積というものは,考えない。
例  <・・・ない
(3) ベクトルの割り算は,高校にはない。しかし,ベクトルの内積は数字なので,内積で割ることはできる。
例  <・・・ない,  <・・・○, 
(4) 2つのベクトルの積がベクトルになる定義もあるが,外積と呼ばれ× と書かれるので,これと区別するためにも単なるかけ算ではなく,内積はと書かなければならない。

(5) 
2つのベクトルの”単なる積"というものは考えないので,2 のような記号は使わない。(内積か外積か不明) 必要ならばと書く。
●4 = ||・||cosθ・・・(1)   = a1b1+a2b2・・・(2) の証明
 教科書において,この証明は余弦定理を用いて両辺を比較する方法で行われるのが普通ですが,ここでは,式を目で追うことが苦痛でない証明を示してみます。
 右図のように,x軸方向,y軸方向の基本ベクトルをとすると,
 
=(a1a2) =(b1b2)は基本ベクトルを用いて,a1+a2b1+b2と表せるので,


=(
a1+a2)・(b1+b2)
=  
a1b1 + a1b2

 +  a2b1 + a2b2
ここで,
==1・1・cos0°=1 (同じもの同士の積は1)
==1・1・cos90°=0 (異なるものとの積は0)
だから


=
a1b1 + a2b2


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