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1. 整級数(べき級数)の収束半径
2. 収束半径の求め方
3. 偶数次,奇数次の項のみから成る級数
4. テイラー展開,マクローリン展開

1. 整級数(べき級数)の収束半径

 整級数のとき収束し,のとき発散するとき,を整級数の収束半径という.
 ただし,とは,不等号に関わらずで収束し,それ以外では収束しないことを表す.
 とはすべての実数について収束することを表す.
 のときは,収束する場合も,発散する場合もあるので,個別に具体的な級数に応じて考えるしかない.
【例1.1】
初項1,公比1,項数nの(有限)等比数列の和
は,n→∞のとき
ア)
|x|<1のとき,だから,整級数は収束する.
イ)
|x|>1のとき,だから,整級数は発散する.
ウ)
x=1のとき,1+1+1+…→∞だから,整級数は発散する.
x=−1のとき,x=1−1+1−1+1… 振動して発散する

2. 収束半径の求め方
 整級数について,次の極限値が存在する
とき,は収束半径である.(は∞や0になることもある)
(1) ←ダランベールの判定法

(2) ←コーシーの判定法
 証明は,このページにあります.
 概して(1)のダランベール方式が簡単に計算できる.(2)はのような形になっている場合に使うとよい.
 上記の(1)もしくは(2)を使えば,ほとんどの整級数について「収束半径」を求めることができる.これに対して,「収束域を求めなさい」という問題では,となる値についても調べて答える必要がある.
 例えば,【例1.1】で述べた

の収束半径はと答えればよいが,収束域を求めよという問題に答えるには,…(*1),…(*2),…(*3),…(*4)のうちのどれが正しいかも述べなければならない:(*1)が正しい.
 後で述べる【例4.4】のでは,収束半径に対して,収束域はになる.
【例2.1】
 整級数の収束半径を求めてください.
(1)の方法で求める

だから

【例2.2】
整級数の収束半径を求めてください
(1)の方法で求める

だから


【例2.3】
整級数の収束半径を求めてください
(1)の方法で求める

だから



【例2.4】
整級数の収束半径を求めてください
 先頭の項としてを使う.
 なお,なので,先頭の項は1である
(1)の方法で求める

だから


この整級数は,指数関数のマクローリン級数展開になっており,

の収束半径がである.すなわち,この級数はどんな実数値に対しても収束する.
【例2.5】
整級数の収束半径を求めてください

だから


ここで

であるから

(別解)
この問題のように,の形をしているものは,(2)の方法が有効であることが多い.

だから
【例2.6】
整級数の収束半径を求めてください

だから


ここで

であるから

(別解)
この問題のように,の形をしているものは,(2)の方法が有効であることが多い.

だから

【例2.7】
整級数の収束半径を求めてください

だから


【例2.8】
整級数の収束半径を求めてください

だから


【例2.9】
整級数の収束半径を求めてください

だから



3. 偶数次,奇数次の項のみから成る級数
 偶数次の項のみから成る級数,例えば

に対して,ダランベールの判定法を用いた収束半径の求め方

を形式的に適用しようとすると,奇数のnに対するが0であることから,
ア)nが奇数のとき

イ)nが偶数のとき
は定義できない
となって,収束半径が計算できないように見えるが,基本に立ち返って考えると,次のようになっている.
【ダランベールの収束判定法】
正項級数について,

が存在して,ならばは収束する.ならば発散する.

【整級数の収束半径】
整級数について,

が存在すれば,が収束半径.
(証明)

ならば収束するから,

のとき収束する.すなわち,収束半径

 上記の内容を,偶数次の項だけから成る級数,例えば,

に適用してみると

のとき収束するから,

すなわち収束半径は2となる.

【例3.1】
整級数の収束半径を求めてください
(解答)

のとき収束するから,


すなわち,収束半径は
【例3.2】
整級数の収束半径を求めてください
この級数は


という形で,のマクローリン級数展開を表しており,この級数の収束半径を求めるということです.
(解答)

のとき収束するから,

すなわち,になり,この級数は任意の実数に対して収束する.
【例3.3】
整級数

の収束半径を求めてください
(解答)


のとき収束する.


すなわち,

4. テイラー展開,マクローリン展開
【マクローリン展開】
 関数で何回でも微分可能であるとき,

【近似式】 のとき,n次式までを使って表した近似式をn次近似という.
1次近似:
2次近似:
3次近似:
【テイラー展開】
 関数が閉区間において連続で,開区間において何回でも微分可能であるとき


【近似式】 のとき,のn次式までを使って表した近似式をn次近似という.
1次近似:
2次近似:
n次近似:同様にしてのn次式で表したもの

(証明)
 テイラー展開においての場合がマクローリン展開であるから,テイラー展開の式を証明する.
 微分可能な関数については,平均値の定理が成り立つ.
の間の値)
 この式は,と十分近い値のとき

という近似値が成り立つことを示している.すなわち
…(1)
(1)はの1次式まで使って書かれているが,これを2次式まで精度を上げたとき
…(2)
の係数は次のようにして求められる.
 (2)の両辺を微分すると

 さらにもう一度微分すると

 したがって

と十分近い値のとき

 同様にして,
…(3)
の係数は,両辺を3回微分すると求められる.


と十分近い値のとき

 このようにして,n次式まで使うと次の形の近似式が得られる.

…(4)
 の近傍で無限回微分可能であるとき,この次数nを無限に近づけると,この式はに収束することが知られている.

 この式をのテイラー展開と呼び,特にの場合をマクローリン展開という.

【例4.1】
 関数のマクローリン展開,およびその収束半径を求めてください.
(解答)
だから


萩L号を使って書けば

収束半径は次のように求められる.(前述の例2.4の再掲)

だから


【例4.2】
 関数のマクローリン展開,およびその収束半径を求めてください.
(解答)


(4の倍数で1周する)


萩L号を使って書けば

収束半径は次のように求められる.(前述の例3.2と類似)

のとき収束するから,

すなわち,になり,この級数は任意の実数に対して収束する.

【例4.3】
 関数のマクローリン展開,およびその収束半径を求めてください.
(解答)
だから



萩L号を使って書けば

(参考)
通常,例4.1に示したのマクローリン展開は,何度も見るから覚えてしまうことが多い.その結果からスタートすると,即答可能になる.

だから

収束半径は次のように求められる.

だから

【例4.4】
 関数のマクローリン展開,およびその収束半径を求めてください.
(解答)



だから




萩L号を使って書けば

収束半径は次のように求められる.

だから


【例4.5】
 関数のマクローリン展開をの項まで求めてください.
(解答)

だから



【例4.6】
 が十分小さいとき,の2次の近似式を求めてください.
(解答)

だから




(マクローリン展開の応用)
【例5.1】
 マクローリン展開を利用して,次の極限値を求めてください.
(1)
(2)
(3)
(解答)
(1)

だから


(2)

だから


(3)

だから


これらの問題は,ロピタルの定理を用いても解ける.どちらの方法も微分を利用する.微分を使わずに解くのは難しい.

(その他,マクローリン展開と収束域の例)
**三角関数**
(5.1)
・・・(5.1A)
・・・(5.1B)
(5.2)
・・・(5.2A)
・・・(5.2B)
(5.3)

Bnはベルヌーイ数


3以上の奇数に対するベルヌーイ数は0になるので,偶数項かつ正の数で考えた
をベルヌーイ数とする書物もある.
(5.4)

(5.5)

(5.6)

Enはオイラー数


奇数に対するオイラー数は0になるので,偶数項かつ正の数で考えた
をオイラー数とする書物もある.

**逆三角関数**
(6.1)


二重階乗の記号を使うと,もう少し簡単に書ける.
二重階乗とは,
(1) ある数が偶数であるとき,その数以下の正の偶数を掛け合わせたもの

ただし,は別途定義する.
(2) ある数が奇数であるとき,その数以下の正の奇数を掛け合わせたもの


この二重階乗の記号を用いると

(6.2)

のとき,


すなわち

が成り立つから,(6.1)から次の式が得られる.


(6.3)



**双曲線関数**
(7.1)


(7.2)


(7.3)


Bnはベルヌーイ数

**指数関数**
(8.1)

(8.2)

のマクローリン展開の結果にを代入すればよい)
(8.3)

のマクローリン展開の結果にを代入すればよい)
(8.4)

のマクローリン展開の両辺にを掛けるとよい)
(8.5)

(※一般項を求めて萩L号で表すことは,かなり骨の折れる作業になる)
(8.6)

(8.7)

(8.8)

(8.9)


**対数関数**
(9.1)

(9.2)
(※一般項をnの式として示し,の極限を計算するという手順を踏まなければ,収束半径は求められない[以下の問題も同様])
(9.3)
(9.4)
(9.5)


**無理関数**
(10.1)
(10.2)
(10.3)

(10.4)


**分数関数など**
(11.1)


(11.2)


 分母が2次以上の場合でも,理屈上は
と求めて行けば,マクローリン展開が得られますが,元の分数式のまま微分していくと,しばしば計算が煩雑になります.
 分母が因数分解できる場合は,部分分数分解を利用することにより,上記の(11.1)(11.2)などの和差に帰着できることがあります.
(11.3)



(11.4)




分数式の取り扱いとして,分数を商と余りに分けて,分子の次数が分母の次数よりも小さくなるように変形してから,マクローリン展開を考えます.(数研の参考書で「分数式は富士の山」と呼ばれる前処理を行っておきます)
(11.5)




分母が因数分解できない場合(D<0)でも,3乗の形を利用できることもあります.
(11.6)




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