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高校〜大学基礎の数学用語.公式.例
無限級数(series)
無限級数
 無限数列の各項を「前から順に」加えたもの

を無限級数という.無限級数はΣ記号を用いて

とも書かれる.
雑談
 高校の数学の教科書では,無限数列の和のことを「無限級数」という.これに対して,大学の教科書では,無限級数のことを単に「級数」ということもある.級数と言えば無限級数の省略なので,『有限級数』というものはない.数列の第n項までの有限項の和というものを表すには,次に述べる「第n部分和」という用語を使う.
第n部分和
 無限数列の初めのn項の和

を作ると,もう1つの数列

が得られる.このとき,を無限級数の第n部分和という.(高校の教科書では「第n項までの部分和」)
無限級数の和
 第n部分和の数列が収束してその極限値がであるとき,無限級数はに収束するといい,をこの無限級数の和という.

 第n部分和の数列が有限確定値に収束しないとき,無限級数は発散するという.(無限級数が発散するとき,無限級数の和は存在しない.[のとき,またはは発散の場合に含まれ,和は存在しないがの記号で表くこともある])
雑談
 「級数」と「級数の和」の関係は,「数列」と「数列の和」の関係と全然違うことに注意!
 すなわち,数列の和は幾つかの項の和を表すのに対して,「級数」とは無限数列の和のことで,級数が収束するとき,その極限値を「級数の和」というのであるから,収束する限り「級数」と「級数の和」とはほとんど同じものです.収束しないときは,級数の和は存在しないという.

[重要]
• 有限数列の和とは異なり,無限級数はその並び方に重要な意味がある.
• 無限級数の和を求めるとき,加え方の順序を勝手に変えたり,勝手に括弧を付けて幾つかずつ先に計算したりしてはいけない.
• 第n部分和を求めてから,その極限を調べるのがポイント.
 無限級数の定義の初めの方で「前から順に」と述べたことには,意味がある.すなわち,有限数列の和とは異なり,無限級数は「加え方の順序を勝手に変えたり」「勝手に括弧を付けて幾つかずつ先に計算したり」すると,結果が変わってしまう.
 そのため,無限級数の計算をするときは,厳密に「前から順に」加えて行かなければならない.もっと正確に言うと,無限級数の計算をするには,まず「第n部分和」を求めて,nの値がどのよう形で無限に大きくなっても,「第n部分和」が一定の値に近付くかどうかを調べなけれならない.
 このように,の極限で起こることはすべて「第n部分和」で準備されたものの結果となっているので,いきなり「無限」を考えるのでなく「第の部分和」の性質を十分調べておくことが重要となる.
例1
の和を求めたいとき
ア) 初めから2つずつ組み合わせて消すと

イ) 初めの1つ以外を2つずつ組み合わせて消すと

ア)イ)のどちらが正しいか?実は両方とも間違っている.ア)イ)とも「前から順に」加えずに,「加え方の順序を勝手に変えている」のが間違いの原因です.
正しくは,次のように「第n部分和」を使って求める.
≪ミニ実験で傾向をつかむ≫
第1項までの和:1
第2項までの和:1−1=0
第3項までの和:1−1+1=1
第4項までの和:1−1+1−1=0
→0と1が交代に出てくる
1) nが奇数のとき,第n部分和は
2) nが偶数のとき,第n部分和は
nが限りなく大きくなるとき,(偶数も奇数もどこまでも登場するから)奇数番目までの和と偶数番目までの和が一致しないから,無限級数は収束しない.
 この無限級数の和は存在しない.
例2
一般項がで定義される数列になっているもの,すなわち
の和を求めたいとき
ア) 3つずつ足していくと

イ) 初めの1つ以外を3つずつ足していくと

ウ) 初めの2つ以外を3つずつ足していくと

ア)イ)ウ)のどちらが正しいか?もちろん,全部間違っている.「前から順に」加えずに,「加え方の順序を勝手に変えている」のが間違いの原因です.
正しくは,次のように「第n部分和」を使って求める.
1) n=3k+1(kは0以上の整数)のとき,第n部分和は
2) n=3k+2(kは0以上の整数)のとき,第n部分和は
3) n=3k(kは正の整数)のとき,第n部分和は
nが限りなく大きくなるとき,nを3で割った余りによって異なる値になるから,無限級数は収束しない.

無限級数が収束するための必要条件
(1) 無限級数が収束するならば,
は無限級数が収束するための
必要条件であるが,十分条件ではない.
であっても,無限級数が収束する場合も収束しない場合もある.
(2) 数列が0に収束しなければ,無限級数は発散する.
(解説)
(1)←

だから
は有限確定値)
のとき

(2)←
(1)の対偶により示される.
※(2)により,無限級数が収束しないこと(発散すること)は簡単に示せる.
前出の例1において,無限級数が収束しないことは,次のように示してもよい.
だから無限級数は収束しない.
前出の例2も同様にして,
は0以上の整数)のとき,だから無限級数は収束しない.
(1’)で,無限級数が収束する例
1)例3 のとき,
2)例4 のとき,
(1”)で,無限級数が収束しない例
1)例5 のとき,であるが

2)例6 のとき,であるが,右図のように


であるから

により,無限級数は発散する.

【例1.1】
 無限級数の収束・発散を調べてください.
(解答)
のときだから発散する
【例1.2】
 無限級数の収束・発散を調べてください.
(解答)
のときだから

したがって,この無限級数は発散する
【例2.3】のようにζ関数と比較してもよい.

比較判定法
 2つの正項級数の各項の間にが成り立つとき
(1) が収束するならば,も収束する.
(2) が正の無限大に発散するならば,も正の無限大に発散する.
以上の内容は,は定数)の場合にも成り立つ.
比較によく用いられる正項級数
(A) 無限等比級数

ならば収束し,和は
ならば発散する
無限等比級数の収束・発散については,高校数学Vで習う.ここでは,証明略
(B) ζ(ゼータ)関数

ならば正の無限大に発散する
ならば収束する
s=1のとき(調和級数のとき)発散することの証明は,前述の例6で行っている. s>0, ≠1の他の値の場合も,同様にして定積分との比較によって示せる.


ここで

は,のとき,無限大に発散,のとき収束するから
のとき,
により,無限級数も発散する.
のとき,は上に有界となるから,収束する.したがって,も収束する.

【例2.1】
 無限級数の収束・発散を調べてください.
収束することを示すには,|公比|が1よりも小さな無限等比級数と比較できたらよい.
発散することを示すには,|公比|が1よりも大きな無限等比級数と比較できたらよい.
(解答)
が十分大きな値のとき(),となるから



右辺は収束するから,左辺も収束する
【例4.2】のようにコーシーの判定法を用いても示せる

【例2.2】
 無限級数の収束・発散を調べてください.
ζ関数(s=2)と比較できたら示せる
(解答)
が十分大きな値のとき(),となるから


右辺は収束するから,左辺も収束する
【例2.3】
 無限級数の収束・発散を調べてください.
ζ関数(s=1)と比較できたら示せる
(解答)
だから



右辺は発散するから,左辺も発散する
【例1.2】のように示してもよい.
【例2.4】
 無限級数の収束・発散を調べてください.
の積分と比較できたら示せる
(解答)
右図で茶色の階段状図形の面積は水色の面積よりも大きいから


ここで


だから無限級数も発散する
【例2.5】
 無限級数の収束・発散を調べてください.
の積分と比較できたら示せる
(解答)
右図で水色の面積は濃い茶色の階段状図形の面積と薄い茶色の階段状図形の間にあるから


…(*)
ここで
とおく置換積分を行う
(k=1のときは【例2.4】の通り.k≠1のときは以下のようになる)


したがって

ア) 0<k<1のとき,だから,(*)式の第2辺が無限大に発散.追い出し論法により第3辺も無限大に発散する.
イ) k>1のとき,だから,(*)の第2辺が収束.第1辺は単調増加かつ上に有界になるから収束.を足しても同じ.
以上をまとめると,ア)および【例2.4】から,0<k≦1のとき,発散する.イ)から,k>1のとき収束する.

正項級数の収束判定法
 正項級数の収束判定法には,ダランベールの判定法,コーシーの判定法などがある.
 一般に,コーシーの判定法の方がダランベールの判定法よりも精密で,適用範囲が広い.しかし,コーシーの判定法は複雑で扱いにくい.そこで,正項級数の収束判定を行うには,次の手順で考えるとよい.
(1) まず,ダランベールの判定法を試みる.
(2) ダランベールの判定法でできない問題は,コーシーの判定法を試みる.
n乗が付いた形になっているものは,コーシーの判定法が使えることが多い.
(3) 上記のいずれでもできない場合は,ラーベの判定法などを考える.
【ダランベールの判定法】
 無限正項級数について,
(1) ある番号より先のnについて
となるが存在するならば,
は収束する.
となるならば,
は発散する.
(ただし,はnに無関係な定数とする)
(2) [次の形で使ってもよい]
となるが存在し,
ならば,は収束する.
ならば,は発散する.
(解説)
この判定法では,取り扱い簡単な無限等比級数と比較判定する
(1)←
初めの有限個を取り除いて,ある番号よりも先の数列を考え,数列の番号を付けなおして,とする.
となるが存在するならば,
が成り立つから







だから,この式の右辺は収束する.
 は上に有界で,かつ単調増加であることになり,収束する.(証明終わり)
となるが存在するならば,
が成り立つから


だから,この式の右辺は無限大に発散する.
 追い出しの原理により,左辺も無限大に発散する.(証明終わり)

【例3.1】
 無限級数の収束・発散を調べてください.
(解答)
とおくと,
ダランベールの判定法(2)により収束する
【例3.2】
 のとき,無限級数の収束・発散を調べてください.
(解答)
とおくと,
ダランベールの判定法(2)により,のとき,この無限級数は収束する.のときは発散する.
【例3.3】
 無限級数の収束・発散を調べてください.
(解答)
とおくと,

ダランベールの判定法(2)により,この無限級数は収束する.
【例3.4】
 無限級数の収束・発散を調べてください.
(解答)
とおくと,
ダランベールの判定法(2)により,この無限級数は収束する.
【例3.5】
 無限級数の収束・発散を調べてください.
(解答)
とおくと,
ダランベールの判定法(2)により,この無限級数は収束する.
【例3.6】
 無限級数の収束・発散を調べてください.
(解答)
とおくと,

ダランベールの判定法(2)により,この無限級数は収束する.

【コーシーの判定法】
 無限正項級数について,
(1) ある番号より先のnについて
となるが存在するならば,
は収束する.
となるならば,
は発散する.
(ただし,はnに無関係な定数とする)
(2) [次の形で使ってもよい]
となるが存在し,
ならば,は収束する.
ならば,は発散する.
(解説)
この判定法も,ダランベールの判定法と同様に,無限等比級数との比較を利用する
(1)←
初めの有限個を取り除いて,ある番号よりも先の数列を考え,数列の番号を付けなおして,とする.
すなわちとなるが存在するならば,

ここで,無限等比級数
のときに収束するから,は上に有界になる.
 正項級数であるから単調増加.
以上により,単調かつ有界だから収束する.(証明終わり)
すなわちとなるが存在するならば,

ここで,無限等比級数
のとき無限大に発散するから,も追い出しの原理により発散する.

【例4.1】
 無限級数の収束・発散を調べてください.
(解答)
とおくと

コーシーの判定法(2)により収束する.
【例4.2】
 無限級数の収束・発散を調べてください.
(解答)
とおくと

コーシーの判定法(2)により収束する.

ダランベールの判定法,コーシーの判定法でr=1の場合には,次の判定法が利用できる.
【ラーベの判定法】
 無限正項級数について,
(1) ある番号より先のnについて
となる定数が存在すれば,
は収束する.
となる定数が存在すれば,
は発散する.
(ただし,はnに無関係な定数とする)
(2) [次の形で使ってもよい]
となる定数が存在し,
ならば,は収束する.
ならば,は発散する.

整級数と収束半径
 を整級数という.
 整級数
となるすべてのに対して収束し
となるすべてのに対して発散する
とき,をこの整級数の収束半径という.
ただし,とは,不等号に関わらずで収束し,それ以外では収束しないことを表す.とはすべての実数について収束することを表す.
収束半径の求め方
 整級数の収束半径
ダランベールの判定法→
コーシーの判定法→
に等しい.
この収束半径の意味を考えると
ダランベールの判定法:
コーシーの判定法:
で得られる値の逆数

になっているが,
のときは
のときは
となることに注意(も極限だから,のときは,のときは,になる.)

【例5.1】
 無限級数の収束半径を求めてください.
(解答)
だから,ダランベールの判定法(コーシーの判定法でも結果は同じ)により

だから
この級数は,初項,公比の無限等比級数で,
第n部分和は
ア) のとき収束し,
イ) のとき発散する.
ウ) のときの収束・発散については,上記の判定法からは何も言えない.(この級数では発散)
【例5.2】
 無限級数の収束半径を求めてください.
(解答)
だから,ダランベールの判定法により

だから
この級数は,指数関数のマクローリン級数展開に対応しており

は全実数で収束する
【例5.3】
 無限級数の収束半径を求めてください.
(解答)

ダランベールの判定法により

だから
この級数は,のマクローリン級数展開に対応しており

で収束する
【例5.4】
 無限級数の収束半径を求めてください.
(解答)

ダランベールの判定法により

だから
【例5.5】
 無限級数の収束半径を求めてください.
(解答)

ダランベールの判定法により


だから
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