【マクローリン展開】
 関数f(x)x=0の近傍で無限回微分可能で,次の右辺の級数が収束するとき
f(x)=f(0)+x+x2+···+xn−1+···
が成り立つ.
 この定理をマクローリンの定理といい,右辺の展開式をマクローリン展開という.(これは,テイラーの定理,テイラー展開をx=0の近傍に適用したものとなっている.)
 例えば,多項式,分数関数,三角関数,指数関数,対数関数など高校で習う重要な関数は,分母が0となる不連続点を除いて,すべて無限回微分可能である.
n次式



 指数,対数,三角関数については,下に示した【重要な関数のマクローリン展開】の右辺を見ると,何回でも微分できるというイメージをつかみやすい.
※具体的に与えられた関数について,マクローリン展開を求めるには,順次微分してf’(x), f”(x), ..., f(n)(x)を求め,x=0を代入して係数を求めていけばよいのであるが,
技術士第一次試験問題に出題される問題では,次の重要な関数のマクローリン展開を覚えておいて,その結果から出発した方が簡単であることが多い.

【重要な関数のマクローリン展開】 ←(次の4個を覚える!)
ex=1+x+x2+···+xn−1+···
log(1+x)=x−+−···+(−1)n+1+···
sinx=x−+−···
cosx=1−+−···

〜マクローリン展開は何の役に立つのか?〜
[例1] xとして十分小さな値,例えばx=0.1を考えると,次数の高い項はx2=0.01 , x3=0.001 ,x4=0.0001 ,...のように急速に0に近づくことが分かる.
 そこで,誤差の範囲が1000分の1ミリ(0.000001m)以下を要求されるような精密作業でも,マクローリン展開の第6項まで使えば十分求められることになる.sinx , cosxのように足したり引いたりするものもあるので,実際には慎重に扱わなければならないが,大雑把にいえばmm単位まで合わせばよいのなら,マクローリン展開の第3項まで使えば十分よい近似になる.
 こうして,複雑な関数でもマクローリン展開を使うと十分実用に耐えうる数値に直せる.

[例2] Aが正方行列であるときは,その定数倍,和差,累乗Anも定義できる.そこで
eA=1+A+A2+···+An−1+···と定義すること

により,行列の指数関数が定義できることになる.収束するという一定の制限は必要であるが,Aが無限次元の正方行列であってもこの関係を考えることができる.このように,和差,定数倍が定義できる量については,マクローリン級数を定義式として指数関数,対数関数,三角関数が自由に扱えるようになる.

※正しい番号をクリックしてください.
平成16年度技術士第一次試験問題[共通問題]
【数学】V-7

 関数y=xexをマクローリン展開するとき,その展開式の
xn (n≧1)の係数は次のどれか.ただし,eは自然対数の底とする.
1(n−1)! 2n! 3 4 51

○この頁に登場する【問題】は,公益社団法人日本技術士会のホームページに掲載されている「技術士第一次試験過去問題 共通科目A 数学」の引用です.(=公表された著作物の引用)

○【解説】は個人の試案ですが,Web教材化にあたって「問題の転記ミス」「考え方の間違い」「プログラムの作動ミス」などが含まれる場合があり得ます.
 問題や解説についての質問等は,原著作者を煩わせることなく,当Web教材の作成者(<浅尾>)に対して行ってください.
平成17年度技術士第一次試験問題[共通問題]
【数学】V-4

 関数y=log(x+1)2をマクローリン展開するとき,その展開式のx2の係数は次のどれか.ただし,対数は自然対数とする.
1−2 2−1 30 41 52

平成20年度技術士第一次試験問題[共通問題]
【数学】V-6

 関数y=のマクローリン展開は,次のどれか.ただし,
eは自然対数の底である.
1y=1++++···
2y=1+++···
3y=1++++···
4y=1++++···
5y=1+++···

平成21年度技術士第一次試験問題[共通問題]
【数学】V-5

 関数y=e−xのマクローリン展開は,次のどれか.ただし,eは自然対数の底とする.
1y=1+x+++++···
2y=1−x+++···
3y=1+x+++++···
4y=1−x+++···
5y=−1+x−++−···

平成24年度技術士第一次試験問題[共通問題]
【数学】V-5

 関数y=log(1+x)をマクローリン展開したとき,その展開式のx4の係数は次のどれか.ただし,対数は自然対数とする.
1y=− 2y=− 3y=1
4y= 5y=

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■[個別の頁からの質問に対する回答][マクローリン展開について/18.9.18]
さきほどこの項で質問したものです。前回の質問の回答で疑問に思ったことを下にかきたいと思います。 質問1 前回の質問の回答で、多項式のような関数は何回でも微分可能で、角のあるグラフなどは連続であっても微分可能ではないとのことですが、多項式のような関数、角のあるグラフとはたとえばどのようなものなんでしょうか? 質問2 この項のマクローリン展開の説明で、x=0の近傍でn回微分可能であれば、という文言がありますが、ようするに、関数f(x)をn回微分して出てきた第n次導関数全てに、x=0が代入できるとき、ということでしょうか?
=>[作者]:連絡ありがとう.多項式が分からなければ話ができない.角のある関数はそこに書いた例[1]
質問2:その通り
■[個別の頁からの質問に対する回答][マクローリン展開について/18.9.18]
マクローリン展開の説明のところで、関数f(x)が、x=0の近傍でn回微分可能であれば〜という文言がありますが、x=0の近傍でn回微分可能である、というのはどういう事なのでしょうか?関数f(x)にx=0を代入したものが、n回微分可能ということなんでしょうか?
=>[作者]:連絡ありがとう.「関数f(x)にx=0を代入したものが、n回微分可能ということ」ではない.代入したものは定数なので,何階微分してもすべて0になります.
 その文章は平凡に読めばわかるはずで,そもそもその式が意味を持つのは,f(x)の第n次導関数f(n)(x)が定義されている場合だということ.そうでなければf(n)(0)が存在しないことになり,意味を持たない.
 n回微分可能という関数のイメージがつかめないということでしたら,次の例を考えるとよい.多項式のような関数は,何回でも微分可能であるが,角のあるグラフなどは,連続であっても微分可能でない.
例えば,[1] f(x)=x (x≧0), f(x)=0 (x<0)はx=0で微分可能ではない.
[2] f(x)=x2 (x≧0), f(x)=0 (x<0)はx=0で1回微分可であるが,2回微分可能ではない.
[3] f(x)=x3 (x≧0), f(x)=0 (x<0)はx=0で2回微分可であるが,3回微分可能ではない.
[n] f(x)=xn+1 (x≧0), f(x)=0 (x<0)はx=0でn回微分可であるが,n+1回微分可能ではない.
■[個別の頁からの質問に対する回答][マクローリン展開について/17.4.7]
2問目の解説の、log(1+x)のマクローリン展開のn!の部分は誤植ではないでしょうか?
=>[作者]:連絡ありがとう.入力ミスですので訂正しました.
■[個別の頁からの質問に対する回答][マクローリン展開について/16.12.7]
ためになりました
=>[作者]:連絡ありがとう.
■[個別の頁からの質問に対する回答][マクローリン展開について/17.4.7]
2問目の解説の、log(1+x)のマクローリン展開のn!の部分は誤植ではないでしょうか?
=>[作者]:連絡ありがとう.入力ミスですので訂正しました.