■空間における平面の方程式

○ 三次元空間において1点P0(x0 , y0 , z0 )を通り,法線ベクトル=(a, b, c)に垂直な平面の方程式は
a(x−x0)+b(y−y0)+c(z−z0)=0 …(1)
○ 三次元空間において,1点P0(x0 , y0 , z0 )と平面ax+by+cz+d=0との最短距離は
…(2)
すなわち,1点P0(x0 , y0 , z0 )から平面ax+by+cz+d=0に下ろした垂線の足をHとすると
P0H=
【例1】
P0(1, −2, 3)を通り,法線ベクトル=(4, 5, −6)に垂直な平面の方程式は
4(x−1)+5(y+2)−6(z−3)=0
すなわち
4x+5y−6z+24=0
【例2】
P0(5, 4, 3)から平面x−2y+2z+6=0に下ろした垂線の長さは
==3

≪解説≫
○(1)←
 点P(x, y, z)とおくと
 ベクトルP0Pに垂直
P(x, y, z)P0(x0 , y0 , z0 )を通り,法線ベクトル=(a, b, c)に垂直な平面上にある
P(x, y, z)P0(x0 , y0 , z0 )を通り,法線ベクトル=(a, b, c)に垂直な平面上にある
⇒ ベクトルP0Pに垂直
だから,求める平面の方程式は
·P0P=0
になります.
 これをx, y, zで表すと
a(x−x0)+b(y−y0)+c(z−z0)=0
になります.
 3次元空間(自由度3)において,1つの制限(1次方程式)を入れると平面(自由度2)になります.
 これに対して,直線(自由度1)は,2平面の交線(2つの平面の共通部分)として,2つの制限(連立1次方程式)を入れたものとして表されます.
右に続く→
○(2)←
平面の表側と裏側は,次のように区別されます.
 (1)において,右辺がちょうど0となるときは,この平面上にあり,右辺が正の値になるときは平面から見て法線ベクトル=(a, b, c)と同じ側にある.右辺が負の値になるときは平面から見て法線ベクトルと逆の側にある.
 右辺の値は,平面a(x−x0)+b(y−y0)+c(z−z0)=0からの距離に関係しており,で割ったものが「符号付きで」距離を表します.
 ·P0P=||·|P0P|cosθ=||·lだから,内積を·P0P=||で割ると距離(表側は符号が正,裏は負)lになります.
 このl=は上記のように符号の付いた
数字で,負の値になることもありますので,絶対値を付けると「距離」を表すことになります.
 したがってP0H=
 以下,正しい番号を選択してください.
[問題1]
(2, −3, 0)を通り,法線ベクトル=(3, 0, 1)に垂直な平面の方程式を求めてください.

13x+z+6=0 23x+z−6=0

33x+y+z+3=0 43x+y+z−3=0




[問題3]
(3, 2, 5)から平面2x+2y−z+4=0に下ろした垂線の長さを求めてください.

11 22 33 44



[問題2]
(3, 2, −1)を通り,平面x+y+2z+3=0に平行な平面の方程式を求めてください.

1x+y+2z−6=0 2x+y+2z+6=0

3x+y+2z−3=0 4x+y+2z=0




[問題4]
原点O(0, 0, 0)から平面2x−3y+6z+7=0に下ろした垂線の長さを求めてください.

11 22 33 44


【例3】
 平行な2平面
4x−2y+z−5=0…(1)
4x−2y+z+10=0…(2)
間の距離を求めてください.
(解答)
 平面(1)上にある1点と(2)の間の距離を求めればよい.
平面(1)上のどの点からでも同じ距離になるので,どの点から求めてもよい.
 たとえば,(1)においてx=0, y=0とすると,z−5=0よりz=となるから,点(0, 0, )は(1)上にある.
 そこで,点(0, 0, )と(2)の距離を求めるとよい.
==3
※(注意)
 原点から(1)までの距離
==1
と,原点から(2)までの距離
==2
から,差をとって1と答えてはいけない.
 実際には,これら2つの平面は右図のように原点から見て反対側にあり(分子の符号が逆になっている),1+2=3となる.
[問題5]
 平行な2平面
2x−y+3z+8=0…(1)
2x−y+3z−12=0…(2)
間の距離を求めてください

13 25 37 49




○ 3次元空間において,2つの平面は「平行である」か「交わる」かのいずれかになります.
 2つの平面が交わるとき,右図1のように両方の平面に垂直な断面の中で2平面のなす角を測ります.
○ このとき,
「2平面のなす角」は,各々の「法線ベクトルのなす角」で調べることができます
(理由)
θ1+α=
θ2+α=
だから,θ12
 2平面のなす角は,θπ−θの2つ考えることができますが,通常は鋭角0≦θ≦となる角で答えます.
 これは,右図2ののように,2つの法線ベクトルのなす角を単純に計算すれば鈍角θ’>になるときは,
小さい方の角を考えて
θ=π−θ’ (≦)
で答えるということです.
図1
図2
【例4】
 2平面2x+y−3z+1=0, −y+z−2=0のなす角を求めてください.
(解答)
 法線ベクトルは各々
=(2, , −3)
=(0, −1, )
だから
||==4
||==2
·=−4
cosθ’=−=−
θ’=πだからθ=

[問題6]
2平面x+3y−2z−1=0, 4x−2y−z+2=0のなす角を求めてください.

1 2 3 4




【例5】
 3点(0, 0, 0), (3, 1, 2), (1, 5, 3)を通る平面の方程式を求めてください.
(解答)
 求める平面の方程式をax+by+cz+d=0とおくと
(0, 0, 0)を通るから
d=0 …(1)
(3, 1, 2)を通るから
3a+b+2c=0 …(2)
(1, 5, 3)を通るから
a+5b+3c=0 …(3)
 この連立方程式は,未知数がa,b,c,dの4個で方程式の個数が(1)(2)(3)の3個なので,解は確定しません.
 すなわち,1文字分が未定のままの不定解になります.
 もともと,空間における平面の方程式は,4x−2y+3z−1=0を例にとって考えてみると,
8x−4y+6z−2=0
12x−6y+9z−3=0, ...のいずれも同じ平面を表し,
4tx−2ty+3tz−t=0 (t≠0)の形の方程式はすべて同じ平面です.
 通常は,なるべく簡単な整数係数を「好んで」書いているだけです.
 これは,1文字dについては解かずに,他の文字をdで表したもの:4dx−2dy+3dz−d=0 (d≠0)と同じです.
 このようにして,上記の連立方程式を解くときは,1つの文字については解かずに,他の文字をその1つの文字で表すようにします.(ただし,この問題ではたまたま,d=0なので,cで表すことを考えます.)
d=0 …(1’)
3a+b=(−2c) …(2’)
a+5b=(−3c) …(3’)
cについては「解かない」ということを忘れないために,cを「かっこに入れてしまう」などの工夫をするとよいでしょう.
(2’)(3’)より,a=(−c), b=(−c)
以上により,不定解をcで表すと,a=(−c), b=(−c), c, d=0
となり,方程式は
cx−cy+cz=0
なるべく簡単な整数係数となるようにc=−2とすると
x+y−2z=0
【要点】
 本来,空間における平面の方程式ax+by+cz+d=0においては,a:b:c:dの比率だけが決まり,a,b,c,dの値は確定しない.
 したがって,1つの媒介変数(例えばt≠0)を用いて,
a’tx+b’ty+c’tz+t=0
のように書かれる.これは,dを媒介変数に使うときは
a’dx+b’dy+c’dz+d=0
の形になる.
 この場合に,なるべく簡単な整数の係数で方程式を表すと
a’x+b’y+c’z+1=0
となる.
 ただし,d=0のときは,他の1つの係数(例えばc≠0)を使って
a’cx+b’cy+cz=0
などと書かれる.
 この場合に,なるべく簡単な整数の係数で方程式を表すと
a’x+b’y+z=0
となる.
※ 1直線上にはない異なる3点を指定すると,平面はただ1つ定まります.
 このことと関連して,理科の精密測定機器のほとんどは三脚になっています.(3点で定まる平面が決まるから,その面に固定される)

 これに対して,プロでない一般人が机や椅子のような4本足の家具を自作すると,3点で決まる平面が2つできてしまい,ガタガタがなかなか解消できません.

【例6】
 3点(1, 4, 2), (2, 1, 3), (3, −2, 0)を通る平面の方程式を求めてください.
(解答)
 求める平面の方程式をax+by+cz+d=0とおくと
(1, 4, 2)を通るから
a+4b+2c+d=0 …(1)
(2, 1, 3)を通るから
2a+b+3c+d=0 …(2)
(3, −2, 0)を通るから
3a−2b+d=0 …(3)
(1)(2)(3)より
a+4b+2c=(−d) …(1’)
2a+b+3c=(−d) …(2’)
3a−2b=(−d) …(3’)
この連立方程式の解をd≠0を用いて表すと
a=(−d), b=(−d), c=0
となるから
(−d)x+(−d)y+d=0
なるべく簡単な整数係数を選ぶと(d=−7として)
3x+y−7=0
[問題7]
3点(1, 2, 3), (1, 3, 2), (0, 4, −3)を通る平面の方程式を求めてください.

14x−y−z+1=0 24x−y+z+1=0

34x−y−5z+1=0 44x−y+5z+1=0



[問題8]
4点(1, 1, −1), (0, 2, 5), (2, 4, 1), (1, −2, t)が同一平面上にあるように,実数tの値を定めてください.

11 2−3 35 4−7



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■[個別の頁からの質問に対する回答][空間における平面の方程式について/17.4.22]
非常にためになった。僕が持っている教科書や参考書クリアー数学には2問しか載っていない、しかもこのサイトにあるような定理、法則が詳しく載ったページはどこにもない。解答を見ても、数式が羅列しているだけです。どうしても具体的な解法が知りたかったのでこの解説文は非常に役立ちました。ある本を読むと京都大学の理系クラスで3変数の1次方程式が3次元空間の平面を表すことを知っていた学生が皆無だったそうです。正直に言ってかなり危ない事じゃないかと思いました。僕もこの本を読むまで全く素通りしていたのです。
=>[作者]:連絡ありがとう.