【このページのテーマ】
このページでは,次のような問題を,平面幾何の定理やベクトル(複素数)を使って解く方法を考えます.
△ABCにおいて,ABをk:lに内分する点をP,CAをm:nに内分する点をRとし,CPとBRの交点をXとする.さらに,AXの延長がBCと交わる点をQとする.
このとき,BQ:QC, AX:XQ, BX:XR, CX:XPは幾らになるか?
【要点1:メネラウスの定理】
(メネラウスはギリシャの数学者,1世紀
直線lが△ABCの3辺AB, BC, CAまたはその延長と,それぞれ,P, Q, Rで交わるとき,次の式が成り立つ.
(公式の見方)右図のように,頂点Aからスタートして,交点Pまでの長さを分子(上)とし,次に,交点Pから頂点Bまでの長さを分母(下)とする.以下同様に分数を掛けて行って,頂点Aまで戻ったら,それらの分数の積が1になるという意味 右の図では,交点Qだけ変な位置にあるように見えるが,1つの直線と3辺AB, BC, CAの交点を考えるとき,少なくとも1つの交点は辺の延長上に来る. B:BC→C:CQと見るのではなく,上の定理のようにB:BQ→C:QCと正しく読むには,機械的に
【要するに】
通常,「メネラウスの定理」という場合は分子からスタートする流れになっている. ※証明はこのページ |
【要点2:チェバの定理】
(チェバはイタリアの数学者,17世紀
△ABCの辺上にない1点Oをとり,Oと頂点A, B, Cを結ぶ直線がそれぞれ辺AB, BC, CAまたはその延長と交わる点をP, Q, Rとするとき,次の式が成り立つ.
※チェバの定理の式自体は,メネラウスの定理と全く同じ形になりますが,P, Q, Rの場所が違います.
(公式の見方)メネラウスの定理では3点P, Q, Rは1直線上に並びますが,チェバの定理では,それぞれ辺AB, BC, CAにあります. 右図のように,頂点Aからスタートして,交点Pまでの長さを分子(上)とし,次に,交点Pから頂点Bまでの長さを分母(下)とする.以下同様に分数を掛けて行って,頂点Aまで戻ったら,それらの分数の積が1になるという意味 機械的に
【要するに】
※チェバの定理は,点Oが△ABCの外部にある場合にも証明できる.通常,「チェバの定理」という場合は分子からスタートする流れになっている. ※証明はこのページ |
【要点3:直線の交点をベクトルや複素数で求める方法】
右図のような△OABにおいて,辺OAを3:2に内分する点をC,辺OBを4:5に内分する点をDとするとき,直線ADと直線BCの交点Pの位置ベクトル を求める方法
Pは直線BC上にあるから(sは1よりも小さな実数,つまりCBを何倍に縮小したらCPになる) …(1) また,Pは直線AD上にあるから (tは1よりも小さな実数,つまりDAを何倍に縮小したらDPになる) …(2) ADとBCの交点Pは(1)(2)の両方を満たす.逆に(1)(2)の両方を満たす点はADとBCの交点になる.そこで(1)(2)が成立するような実数s, tを求めるとよい. …(3)
【ベクトルの1次独立】
(3)より,次の連立方程式を解けばよいことになります.■1 一般に,平行でなく零ベクトルでもない2つのベクトル が を満たすなら が成り立ちます.
(証明)
■2 上記の定理から,次の定理が導かれる.ならば, と変形できて, となる.これは平行でないという仮定に反する.よって, 次に, なら, になるが, は零ベクトルでないから 以上により, 平行でなく零ベクトルでもない2つのベクトル が を満たすなら が成り立つ.
(証明)
ならば, となり,上記の結果から がいえる. この連立方程式を解くと, となるから(途中経過は各自確認してください) これを(1)または(2)に代入すると …(答) ※この問題を,複素数平面上において直線の交点を求めることにした場合,点A, B, Pを表す複素数を各々α, β, zとおけば,上記とほとんど同じ形で求められます. |
【要点4:内分点の公式を2段階に使う方法】
右図1のように,2点A, Bの位置ベクトルを とすると,線分ABをm:nに内分する点Xの位置ベクトルは
図1とその公式は教科書に載っている基本なので,ここでは証明は省略する.になります. 右図2のように,3点A, B, Cの位置ベクトルを とすると, で表される点は
ABをq:pに内分する点をDとするとき,DCをr:(q+p)に内分する点になります. …(1)
BCをr:qに内分する点をEとするとき,EAをp:(r+q)に内分する点になります. …(2)
CAをp:rに内分する点をFとするとき,FBをq:(r+p)に内分する点になります. …(3)
図2の式は,次のように変形すると分かります. は とをr:(q+p)に内分する. →(1) は とをp:(q+r)に内分する. →(2) は とをq:(p+r)に内分する. →(3) |
【例題1】
(チェバの定理,メネラウスの定理で解く場合)右図の△ABCにおいて,ABを2:3に内分する点をP,ACを5:4に内分する点をRとし,BRとCPの交点をXとする.さらに,AXの延長がBCと交わる点をQとする. このとき,BQ:QC, AX:XQ, BX:XR, CX:XPをそれぞれ最も簡単な整数比で表してください. ■チェバの定理により だから BQ:QC=15:8
次に,メネラウスの定理を使って,△ABCの内部の線分の長さの比を求める.
■メネラウスの定理を右図のように使うとメネラウスの定理では,三角形と交わる直線の長さの比は出てこずに,直線によって分けられる三角形の辺の比が出てくることに注意 右図のように△ABQに直線PXCが交わるとみると,QX:XAの比が分かる だから QX:XA=12:23 ■メネラウスの定理を右図のように使うと だから BX:XR=27:8 ■メネラウスの定理を右図のように使うと だから PX:XC=3:4 CX:XP=4:3 |
例題1続き(直線の交点をベクトルや複素数で求める場合) 右図のように点Aを原点に選んで, とおき,2直線CP, BRの交点Xの位置ベクトルを で表すことを考える. XはBR上にあるから …(1) XはCP上にあるから …(2) (1)(2)の両方が成り立つから と は平行でなく,零ベクトルでもないから この連立方程式を解くと したがって また, を代入すると だから
この変形を覚えておく方がよい
※複素数平面で2直線の交点を求める場合も,ほぼ同様の答案でよい・・・B, C位置ベクトル\( \overrightarrow{\rm{AB}}=\vec{b},\overrightarrow{\rm{AC}}=\vec{c} \) の代わりに,Aを原点としたときのB, Cが表す複素数をβ, γを用いると,上記の途中計算の\(\vec{b},\vec{c}\)をβ, γに置き換えた式が複素数での計算式になる.
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例題1続き(内分点の公式を2段階に使う場合)
[再掲]
適当な場所に原点をとり,3点A, B, Cの位置ベクトルを とすると,PはABを2:3に内分するから3点A, B, Cの位置ベクトルを とすると, で表される点は ABをq:pに内分する点をPとするとき,PCをr:(q+p)に内分する点になる. XはCPをk:lに内分する点とすると これにより,k, lの比が何であっても, の係数と の係数の比は3:2になる. p:q=3:2…(1) RはACを5:4に内分するから XはBRをm:nに内分する点とすると これにより,m, nの比が何であっても, の係数と の係数の比は4:5になる. p:r=4:5…(2) (1)(2)より,p:q:rを連比にするために,pの値をそろえると(通分する | 最小公倍数にする | 同じスケールで表す) p:q=3:2=12:8…(1) p:r=4:5=12:15…(2) p:q:r=12:8:15 …(*) (*)により は,CPを20:15=4:3に内分する. は,AQを23:12に内分する. また,BCを15:8に内分する. は,BRを27:8に内分する.
(全部できなければならない訳ではない.
どの方法を「自分の得意技」にするか:筆者の印象) ■「三辺の内分比」は,チェバの定理を覚えていればできる.「三角形の内部の線分の比」をメネラウスの定理で解くためには,三角形と交わる直線の選び方に頭を使わなければならない. ■ベクトル(または複素数)を使って2直線の交点を求める方法は,考え方は簡単であるが,計算は大変 ■内分点を2段階に使う方法は,p:q:rを求めると,全部の比が分かるが,三角形の内部の点は で表せるということが分かっていなければならないので,その考え方に慣れるまでが大変かもしれない. このページにも関連事項があります |
【例題2】
(解答)右図の△ABCにおいて,ABを1:3に内分する点をP,BCを1:2に内分する点をQとし,BRとCPの交点をXとする.さらに,BXの延長がACと交わる点をRとする. このとき,CR:RA, AX:XQ, BX:XR, CX:XPをそれぞれ最も簡単な整数比で表してください.
CR:RA=6:1 AX:XQ=1:2 BX:XR=7:2 CX:XP=8:1 |
■例題2の詳しい解答■ 中学数学の平行線の性質(相似図形)で解く方法
(1) AX:XQを求めよQからCPに平行な直線を引き,BPとの交点をSとおくと BS:SP=BQ:QC=1:2 AX:XQ=AP:PS=1:2…(答) (2) CX:XPを求めよ PからXQに平行な直線を引き,BQとの交点をTとおくと BT:TQ=BP:PA=3:1 BQの縮尺を1→4に4倍しているから,QCも4倍すると TQ:QC=1:8 CX:XP=CQ:QT=8:1…(答) |
(3) CR:RAを求めよ QからBRに平行な直線を引き,CRとの交点をUとおくと AR:RU=AX:XQ=1:2 RU:UC=BQ:QC=1:2 RUを2にそろえると AR:RU:UC=1:2:4 CR:RA=6:1…(答) (4) BX:XRを求めよ RからXPに平行な直線を引き,APとの交点をVとおくと AV:VP=AR:RC=1:6 APの縮尺を1→7に7倍しているから,PBも7倍すると AV:VP:PB=1:6:21 BX:XR=BP:PV=21:6=7:2…(答) |
■例題2の詳しい解答■ 数学Aのチェバの定理,メネラウスの定理で解く方法
(1) CR:RAを求めよチェバの定理から, が成り立つから ゆえに,CR:RA=6:1…(答) (2) BX:XRを求めよ △ABRに直線PXCが交わる図形に対してメネラウスの定理を適用すると が成り立つから ゆえに,BX:XR=7:2…(答) |
(3) AX:XQを求めよ △ABQに直線PXCが交わる図形に対してメネラウスの定理を適用すると が成り立つから ゆえに,AX:XQ=1:2…(答) (4) CX:XPを求めよ △APCに直線BXRが交わる図形に対してメネラウスの定理を適用すると が成り立つから ゆえに,CX:XP=8:1…(答) |
■例題2の詳しい解答■ 数学Bのベクトルで内分比を2段階に分けて使う方法
の頂点の位置ベクトルを各々 とするとき,…(1) となる点 は の内部の1点を表す.(逆も言える) と変形すると,問題よりp:q=3:1 また と変形すると,問題よりq:r=2:1 qを2にそろえると,p:q:r=6:2:1 …(*) |
CR:RA, AX:XQ, BX:XR, CX:XPをそれぞれ最も簡単な整数比で表してください. と変形できるから,Xは「ACを1:6に内分する点R」と「B」を2:7に内分する. したがって,CR:RA=6:1, BX:XR=7:2…(答) と変形できるから,Xは「BCを1:2に内分する点Q」と「A」を6:3に内分する. したがって,AX:XQ=1:2…(答) と変形できるから,Xは「ABを1:3に内分する点P」と「C」を1:8に内分する. したがって,CX:XP=8:1…(答) |
■例題2の詳しい解答■ 数学Bのベクトルで2直線の交点を求める方法
右図において原点をBにとった位置ベクトルを用いて,CPとAQの交点Xを求める.BからPを通ってXに行くには …(1) BからQを通ってXに行くには …(2) 2直線の交点Xは(1)(2)の両方を満たすから …(3) (3)において, は三角形の2辺に対応しているから,平行でなく零ベクトルでもないから この連立方程式を解くと これらを(1)または(2)に戻すと |
CR:RA, AX:XQ, BX:XR, CX:XPをそれぞれ最も簡単な整数比で表してください. sはPX/PCの比を表すから,CX:XP=8:1…(答) tはQX/QAの比を表すから,AX:XQ=1:2…(答) と変形できるから Xは「CAを6:1に内分する点R」と「B」を2:7に内分する点 CR:RA=6:1…(答) BX:XR=7:2…(答) |
【例題3】
(解答)△ABCにおいて,BCを3:4に内分する点をQ,CAを2:5に内分する点をRとし,AQとBRの交点をXとする.さらに,CXの延長がABと交わる点をPとする. このとき,AP:PB, AX:XQ, BX:XR, CX:XPをそれぞれ最も簡単な整数比で表してください.
AP:PB=10:3
AX:XQ=35:6 BX:XR=21:20 CX:XP=26:15
【例題4】
(解答)△ABCにおいて,BCを2:3に内分する点をQ,AQを2:1に内分する点をXとし,BXの延長とCAの交点をR,CXの延長とABの交点をPとする. このとき,AP:PB, CR:RA, BX:XR, CX:XPをそれぞれ最も簡単な整数比で表してください.
AP:PB=6:5
CR:RA=5:4 BX:XR=3:2 CX:XP=11:4
【例題5】
(解答)△ABCにおいて,ACを4:3に内分する点をR,BRを5:2に内分する点をXとし,AXの延長とBCの交点をQ,CXの延長とABの交点をPとする. このとき,AP:PB, BQ:QC, AX:XQ, CX:XPをそれぞれ最も簡単な整数比で表してください.
AP:PB=14:15
BQ:QC=10:7 AX:XQ=34:15 CX:XP=29:20 |
【一般に(1)】
(解答)△ABCにおいて,ABをk:lに内分する点をP,CAをm:nに内分する点をRとし,AQとBRの交点をXとする.さらに,AXの延長がBCと交わる点をQとする. このとき,BQ:QC, AX:XQ, BX:XR, CX:XPをそれぞれ最も簡単な整数比で表してください. 次の整数比は「最も簡単な」整数比とは限らないので,共通因数があれば割って答えるものとする.
これは「覚えるような公式ではない!」
必要になってから「作る」のが秘訣
BQ:QC=ln:km
各自で確かめるとよいが,ここでは内分点の公式を2段階に使う方法で解説する.AX:XQ=km+ln:lm BX:XR=l(m+n):km CX:XP=(k+l)m:ln 求めるベクトルを とおくと p:q=l:k…(1) とおくと p:r=m:n…(2) (1)(2)から p:q:r=lm:km:ln…(*) したがって により,CX:XP=(k+l)m:ln により,BX:XR=lm+ln:km により,AX:XQ=km+ln:lm また,BQ:QC=ln:km |
【一般に(2)】
(解答)△ABCにおいて,BCをk:lに内分する点をQ,AQをm:nに内分する点をXとし,BXの延長とCAの交点をR,CXの延長とABの交点をPとする. このとき,AP:PB, CR:RA, BX:XR, CX:XPをそれぞれ最も簡単な整数比で表してください. 次の整数比は「最も簡単な」整数比とは限らないので,共通因数があれば割って答えるものとする.
これは「覚えるような公式ではない!」
必要になってから「作る」のが秘訣
AP:PB=lm:(k+l)n
各自で確かめるとよいが,ここではメネラウスの定理,チェバの定理を使って解説する.CR:RA=(k+l)n:km BX:XR=(k+l)n+km:lm CX:XP=(k+l)n+lm:km △ABQに直線PCが交わっている図において,メネラウスの定理を適用すると △ABCにチェバの定理を適用すると △ABRに直線PCが交わっている図において,メネラウスの定理を適用すると △APCに直線BRが交わっている図において,メネラウスの定理を適用すると |
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■[個別の頁からの質問に対する回答][2直線の交点(3通り)について/18.7.15]
【要点3:直線の交点をベクトルや複素数で求める方法】
において、OCベクトルを2/5aベクトルと書かれてますが、3/5aベクトルの間違いかと思われます。
ご確認おねがいします。
=>[作者]:連絡ありがとう.いかん,いかん,得意の計算間違いでしたので,訂正しました.(こんな調子で,ん十年勤まったとは,どんなゆるい職場?) |