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== 漸化式と一般項(等比形) ==

基本
の形の漸化式】

 定数係数の2項間漸化式が

の形で与えられているとき,
を満たす定数を見つけると,数列は,
初項
公比
の等比数列になるので,一般項を求めることができます.
(解説)
 もし問題が

…(1)
の形であるならば,この数列は,初項1公比3の等比数列だから,直ちに一般項が求まります.
 これに対して,問題が

…(2)
のような形になっているとき,このままの形では数列{an}は,等比数列にはなりませんが,
…(2’)
と変形すると,数列{an+1}は等比数列になるので


のように一般項が求められます.

≪変形のポイント≫
(2)式を(2’)式に変形するためのポイントは
となる定数αを係数比較によって求めることです.


を(2)式と係数比較すると
−2α=2
α=−1
となって
…(2’)
と変形できます.
 一般に,2項間漸化式が
の形で与えられているとき
となる定数α



と係数比較することにより

…(2”)
で求めることができます.(p≠1が前提です)

初歩的注意
※初歩的な注意として,次の点を押さえておきましょう.

〇 この形の漸化式ではp≠1が前提です.p=1のときは,(2”)式においてαが求められないことから気付きます.
 p=1のときは,≪階差形の漸化式≫という別の解き方を使います.

〇 この形の漸化式について
α=pα+q
を特性方程式と呼び,その解αを求めるという覚え方があります.
 これは,一般によく使われる解き方ですが,「特性方程式」や「その解」が何を表しているのかということを消化不良のまま使ってしまうと,危険な落とし穴にはまってしまう高校生が多いのです.

…(2)
のような場合,1, 5, 17, 53, ···となって,どこまで行ってもは等しくならない.
では,この方程式は何を解いているのか.
その解は何を表しているのか.
よく分からないままに,とりあえず真似をしてを両方ともαに置き換えたら特性方程式になるのだなと結果だけを覚えてしまうと
…(A) → α=α+1
としてしまう.
…(B) → α=2α+n
としてしまう.
…(C) → α=nα
としてしまう.
など,間違い答案がゾロゾロと登場します.(A)(B)(C)はいずれも特性方程式が使える場面でないところで使っています.

 (A)はp=1の場合なので,階差形の解き方を考えるべきです.
 (B)は特性方程式においてqが定数である場合にだけ使えるのに,その箇所にnによって変化する項があるのに使っています.
 (C)はpが定数である場合にだけ特性方程式が使えるのに,その箇所にnによって変化する係数があるのに使っています.
2項間漸化式が,p≠1p, qとも定数の場合にしか使えない特性方程式を,適用できない場面で使ってしまうと無意味な答案になります.

 ここでは,(2)式を
と変形できたらよいのにな〜(等比数列になるから)と考えて



と係数比較する
と考える方が誤解が少ないようです.

〇 この考え方で行けば,(A)(B)(C)のような問題でも,工夫すれば解けます.
…(A) →
は公比1の等比数列


…(B)

は公比2の等比数列


…(C)

は公比1の等比数列





例と答1
 ≪この形の問題と解答≫
 次の漸化式で与えられる数列の一般項を求めてください.
(1)


(解答)


(途中経過)
初項が1で公比が2の等比数列だから,一般項は …(答)
(初歩的な注意)

(次の項)=2×(前の項)
ということを表しており
のように順に2を掛けていくと数列ができることを示しています.
○初項が公比がである等比数列の一般項は,
.
で求められます.
(もっと初歩的な話ですが・・・)
階差数列から元の数列を求めるときは,途中経過をn≧2の場合とn=1の場合に分けて記述しなければなりませんが,等比数列の第n項を求めるときは,分ける必要はありません.
.
の公式はn=1の場合でも成り立つからです.

(2)


(解答)


(途中経過)
初項が2で公比が3の等比数列だから,一般項は …(答)
(初歩的な注意)
にはなりません.

(3)


(解答)


(途中経過)
原式:

となる定数αを求める.
と原式を係数比較すると
−α=3α=−3
となるから
は公比2の等比数列

…(答)
(いまさら聞けない話)
なんでとおくのかな?
の方が解きやすいじゃないか

答を出すだけならどちらでもできますが, の解α=−3には不動点という重要な意味がありますが,の解α'=3には何も意味がないので,数学の答案としてはの方が歓迎されます.
 たとえば,|r|>1のとき,あるnの値でanになると,an+1−α=r(an−α)=0となって,それ以後のan+1 , an+2 , an+3 , ...はすべてαになって抜け出せなくなります(蟻地獄).
 この値は凹レンズの焦点のように,そこから光が出てくる場所になっています.
 |r|<1のときは,n→∞のときにだんだん近づいていく目標地点という意味があります.凸レンズの焦点のようなものです.この場合もあるnの値でanになると,an+1−α=r(an−α)=0となって,それ以後のan+1 , an+2 , an+3 , ...はすべてαになって抜け出せなくなります.

(4)


(解答)


(途中経過)
原式:

となる定数αを求める.
と原式を係数比較すると
2α=2α=1
となるから
{an−1}は公比−1の等比数列

…(答)
(いまさら聞けない話)
なら,0 → 2 → 0 → と入れ替わりに登場するだけだから
nが奇数なら0nが偶数なら2と答えてもよいのではないか.

その通りです.
1つの式で書くと美的に見えるので,上のように書いただけです.

(5)


(解答)


(途中経過)
原式:

となる定数αを求める.
と原式を係数比較すると


となるから
は公比の等比数列

…(答)
(いまさら聞けない話)
凸レンズになっていて,1に近づくという話はどうなった?

2.000 →1.333 →1.111 →1.037 →1.012 →1.004 →1.001 → ... となって,あっという間に1に近づくのです.


(6)


(解答)


(途中経過)
原式:

となる定数αを求める.
と原式を係数比較すると

α=−1
となるから
は公比の等比数列

…(答)
(いまさら聞けない話)
|r|>1のときは凹レンズになっているという話はどうなった?

a0 ,a-1 ,a-2 と延長していくと,→(a-2=)-0.407 →(a-1=)-0.111 →(a0=)0.333 →(a1=)1.000 →(a2=)2.000 →(a3=)3.500 → ... となって,−1を焦点として広がってくるということが分かる.
a0とかa-1なんて話を子供に聞かせてもよいのか?

教科書には出てきませんが,入試問題ではa0から始まる数列は,時々出てきます.
ここでは,仮想的に延長していったらということです.

例と答2[難]
(7)


(解答)


(途中経過)
原式:

だからとおくと

は公比1の等比数列になる.


…(答)
(いまさら聞けない話)
 は公比の等比数列じゃないのですか?


 等比数列というのは,項の番号nに依存しない定数rを使ってと書けるもののこと.
のように毎回比率が変わるようでは「公比」(皆に共通の比率)とは言えないから,これは等比数列ではない.

実際に数列を書きならべてみると,



などという数列は等比数列とは言わない.
(これは有名な等差数列)


 そう言われたら分かる.

(8)


(解答)


(途中経過)
原式:

だからとおくと
このは階差数列ではなく,単に式に付けた名前です.

は公比1の等比数列になる.


…(答)
(いまさら聞けない話)
 (n+1)!で割るような変形は思いつかない〜


きれにまとめる方法を急に思いつくのは難しいですが,次のような答案でもよい.






(9)


(解答)


(途中経過)
原式:

だから
とおくと
このは階差数列ではなく,単に式に付けた名前です.

は公比2の等比数列になる.

ここでだから


…(答)

(参考)次の(A)または(B)が普通の答案です.ただ,このように書くととても長い答案になり,テストなどで時間内に書けるかどうかあやしくなります.
(A)
an+1 , anのままでは,定数係数にならずnの項が残るので,階差数列を作って定数係数に直す・・・階差数列では元の漸化式よりも次数が下がることを利用します.
階差数列の第n項はbn=an+1−anで定義されるので
階差数列の第n+1項はbn+1=an+2−an+1です.

−)


になるから
は公比2の等比数列になる.

ここで,だから


これを用いて元の数列を求めると
(ア) n≧2のとき



(イ) n=1のときも結果は一致する.
ゆえに, …(答)

(B) 両辺を2n+1で割ります

とおくと
このは階差数列ではなく,単に式に付けた名前です.

の階差数列をとおくと

(ア) n≧2のとき


等差k×等比の式で作られるのような数列は循環数列とも呼ばれますが,高校の授業ではその結果を覚えなさいとは言いません.次のように「S−rS」を作れば等比数列の和になるので,「求め方を覚えておきなさい」と教えます.
とおくと

−)


{ }内は初項,公比,項数n−1の等比数列の和だから






(イ) n=1のときも結果は一致する.
ゆえに, …(答)

(10)


(解答)


(途中経過)
原式:


とおくと
〇 この問題では,参考書などに載っている標準的な解き方は長くなり過ぎるので紹介しません.
〇 ここで紹介する解き方は,


となるF(n)を見つける方法です.
〇 このような関数F(n)
(ア) r≠1のときは,元の関数f(n)と同次の式で見つけることができ
(イ) r=1のとき(階差形の問題の場合)は,元の関数f(n)よりも1次だけ次数の高い式で見つけることができます.

〇 この問題ではr=2 (≠1)だからとなる定数α, β, γを求めればよいことになります.

〇 1つ前の問題ではr=2 (≠1)f(n)=nだからF(n)=αn+βとなる定数α, βを求めればよいことになります.

〇 のような指数関数になるときは,次数は∞?などと難しいことは言わなくてもとおけば定数αが求められます.

原式と係数を比較すると



は公比2の等比数列になるから


…(答)

(11)


(解答)


(途中経過)
原式:

とおくと


原式と係数を比較するとα=1

は公比2の等比数列になるから

…(答)

(12)


(解答)


(途中経過)
原式:

とおくと


原式と係数を比較するとα=−1

は公比3の等比数列になるから

…(答)

テスト
【問題】 …(この頁で解説した問題と全く同じものの再現問題です)
 次の漸化式で定義される数列の一般項を求めてください.
 下の選択肢の中から正しいものをクリック

(1)







(2)






(3)







(4)







(5)





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