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空間座標,空間ベクトル--公式と例題

 このページは,空間座標や空間ベクトルの基本公式を広く浅く取り上げ,次に簡単な例題を示したものです.
 この部分は,教科書や授業では,平面座標・平面ベクトルと内容的に重なることが多く,空間座標・空間ベクトルの部分を全部教えることはまれなので,必要となったときに使いやすい形で一覧的なものを作った.
【2点間の距離】
 2点間の距離は

 特に,原点O(0, 0, 0)と点P(x, y, z)の間の距離は

【例題1】 次の2点間の距離を求めてください.
(1)
 A(2, −1, 4), B(1,−3, 2)
(2)
 O(0, 0, 0), P(2,−2, 4)
(解答)
(1)

(2)


【例題2】
(1)
 x軸上にあって,2点A(1, −2, 3), B(0, 1, −1)から等距離にある点の座標を求めてください.
(2)
 xy平面上にあって,3点A(1, −2, 3), B(0, 1, −1), C(1, 1, 0)から等距離にある点の座標を求めてください.
(解答)
(1)
x軸上の点はP(x, 0, 0)などとおける.y座標とz座標が0になるところがポイント
求める点をP(x, 0, 0)とおくと

2乗の形にすると,根号なしで計算できる





…(答)
(2)
xy平面上の点はQ(x, y, 0)などとおける.z座標が0になるところがポイント
求める点をQ(x, y, 0)とおくと

これにさらにを追加しても意味がない(この式は上記の式から導かれるから)
2乗の形にすると,根号なしで計算できる
…@)
…A)
…@)
…A)
@)から
…@’)
A)から

…A’)
@’),A’)から

…(答)
この問題では,「2点から等距離にある」という条件だけでは解けない.「3点から等距離にある」という条件によって,未知数2個の連立方程式になって解ける.
「4点から等距離にある」という条件になっても,一般には解けない…未知数2個で方程式が3個になるから

【三角形の形状問題】
 2点間の距離の公式に関連して,三角形の形状問題が出されることがある.これは,三角形ABCの頂点の座標が与えられたときに,その三角形がどのような形の三角形であるかを答えるもので,三辺AB, BC, CAの長さをあらかじめ計算しておき,次のどの型に当てはまるかを答える.
(1) AB=BCなどとなったとき
→ 「AB=BCの二等辺三角形」などと答える
単に「二等辺三角形」と答えた場合には,どの2組の辺が等しいかが書かれていないので,減点にするのが普通です
(2) AB=BC=CA=3などとなったとき
→ 「一辺の長さが3の正三角形」などと答える
単に「正三角形」と答えても様々な大きさがあるので,1辺の長さが分かる場合には,それを書くべきだと採点官は考えます
(3) AB2+BC2=CA2などとなったとき
→ 「B=90°の直角三角形」などと答える
 辺の長さだけを手掛かりに三角形の形状を求めるときに,直角という角度の性質を述べることができるのは,三平方の定理の逆から直角三角形が言える場合です.
 これに当てはまるかどうかは,2乗の和を試しに求めてみないと分かりません.
 単に「直角三角形」と答えるのではなく,どの角が直角かも述べなければなりません.(最長の辺=斜辺に登場しない頂点が直角です.もしくは,2乗の和に2回登場する頂点が直角です)
(4) AB2+BC2=CA2,AB=BCなどとなったとき
→ 「B=90°の直角二等辺三角形」などと答える
 直角三角形と二等辺三角形の両方が言える場合です.
 答え方としては,直角の角か二等辺の辺の組かいずれかも示すようにします
(※)三辺の長さのみを手掛かりにして三角形の形状を求める問題では,「A=120°の三角形」のような形の答えは出ないのが普通です.
 辺の長さだけを手掛かりにした場合に,初歩的に角度の性質が答えられるのは,三平方の定理の逆を使う直角三角形(90°)と三辺の長さが等しい場合の正三角形(60°)ぐらいのもので,それ以外は超応用問題になります.

【例題3】 次の3点を頂点とする三角形はどのような形の三角形か答えてください.
(1)
 A(1, −3, 3), B(3, 3, 0), C(1, 0, 6)
(2)
 A(−1, 1, 0), B(1, 4, 4), C(2, 3, −3)
• とりあえず3辺の長さを計算してみなければ,手がかりがつかめません.
• 二等辺三角形や正三角形は、辺の長さを「見ただけで」分かりますが,直角三角形は「2乗を足してみないと」分かりません.試しにやってみるという姿勢が重要です
(解答)
(1)






ゆえに,AB=BCの二等辺三角形…(答)
(2)






だから
A=90°の直角三角形…(答)
なぜわかるのか? 待っていても答えはやって来ない.試しに足してみると,29+22=51になる

【例題4】 3つの頂点の座標が(1, 2, 3), (1, −1, 0), (4, 2, 0)である正四面体のもう1つの頂点の座標はまたはである.
(2014年度工学院大入試問題)
考え方は簡単だが,計算は大変!1題だけで30分ほどかかりそうで,根気負けしそう!
(解答)
A(1, 2, 3), B(1, −1, 0), C(4, 2, 0)とおき,求める頂点をD(x, y, z)とすると

だから
…(1)
…(2)
…(3)
この連立方程式を解く
(1)−(2)

…(4)
(2)−(3)

…(5)
(4)(5)より,を(1)に代入





(4)(5)に戻すと
…(答)

【内分点,外分点の座標】
【内分点】
 2点を結ぶ線分ABm:n (m>0, n>0)に内分する点の座標は

【中点】
 2点を結ぶ線分ABの中点の座標は

【外分点】
 2点を結ぶ線分ABm:n (m>0, n>0)に外分する点の座標は

【三角形の重心】
 3点を頂点とする△ABCの重心の座標は


【内分点】の公式:≪証明≫




これを成分に分けると公式が得られる

【内分点】の公式:≪一口メモ≫
 内分点の公式で計算するときは,「x座標とx座標からx座標を求めます」「y座標とy座標からy座標を求めます」「z座標とz座標からz座標を求めます」→絶対に混ざってはいけません.
 次のように分けて計算してから,後で座標の組にする方が,「見やすく」「間違いにくい」と考える人はそれでいいのです.




 内分公式の分子では,座標には,図形の上で近い方の比率mではなく,遠い方の比率nを掛けます.同様にして,座標には,遠い方の比率mを掛けます.「意地悪公式」「へそ曲げ公式」になっていることに注意しましょう.
 y座標,z座標も同様です.
加重平均とのかかわり
例えば,理科系の学校で,数学の得点を重視して,数学と英語の入試得点を9:1の比率で加重平均する場合(実際にはない:分かり易くするための例)
数学×0.9+英語×0.1
=数学×+英語×
となる点数は,数直線上に数学の点数(例えば20点)と英語の点数(例えば80点)を図示した場合,真ん中よりもはるかに数学側に寄った,1:9の比率に内分する点になります.
 このように,統計でよく使われる加重平均の場合,内分点は重視されているものに近い場所になります.
【中点】の公式:≪一口メモ≫
 中点の座標を表す公式は,内分点の公式において,1:1に内分する点を求めたものです.



【外分点】の公式:≪一口メモ≫
 外分点を考えるときに,高校生によくある間違いは,右図の×印で示した図でm:nの比率を考えてしまうことです.
 正しくは,右図の○印で示したようにm:nを測るときに,「一方の足は必ずQを踏んでいなければならない」.
【外分点】の公式:≪証明≫
ア) m>nのとき,外分点は右図のようにBの外にあるから




イ) m<nのとき,外分点はAの左にあるから




※外分では,m=nという場合はないことに注意.すなわちm, n>0である限り,どのような比率の内分でもあるが,外分では1:1の外分だけはない.
m>nならBの外にあり,m<nならAの外にあるから,外分点でmとnの比が等しい点はない.
このことは,外分公式でm=nの場合に分母が0になって割り算が定義できないことからも分かる.
 外分点の公式は,内分点の公式において,「mかnのどちらか一方の符号だけを負にしたもの」です.
…(1)
の式の分母と分子の両方に −1 を掛けると
…(2)
(1)と(2)は,分数としては全く同じ値になるので,どちらを使ってもよい.だから,「mかnのどちらか一方の符号だけを負にしたもの」といえます.
 数学の教師によっては,「どちらか」というような不安定な表現では,数学の弱い生徒が迷ってしまうから,「これが答えだ」と決めた方がよいと考える人もいます.例えば,「mとnの大きい方をプラスにして,小さい方をマイナスにする」という教え方があります.このやり方では「分母が必ず正になるから」計算間違いが減るということです.
 なお,mとnの2つとも負にすると内分公式に戻ってしまうので,思い違いしないように.


※結局どれで覚えたらよいか:「mかnのどちらか一方の符号だけを負にしたもの」「mとnの大きい方をプラスにして,小さい方をマイナスにする」など自分の一番しっくりするのを覚えたらよいのですが,「単純に次の式をそのまま覚える」方法も案外スッキリします

※ぐるぐる回って,元の公式に戻っただけなら,初めから言うなと思ってはいけない…いろいろ経験したら,公式が立体的に見えるようになるのです.もう忘れることはないでしょう.

【三角形の重心】の公式:≪一口メモ≫
 平面上の三角形の重心については,このページに書いていますが,以下に空間の三角形でも同じなので,要点を再掲します.
 そもそも三角形の重心という用語が使われていますが,この公式が表しているのは,重さが等しい点が3頂点にあるときの3つの重しの重心です.
 三角形の場合だけ,3点の重心と三角形の重心が「たまたま一致」しますが,四角形では4頂点に等しい重さの重りを置いたときの質点系の重心と四角形の重心とは,一般には一致しません.5角形以上もそうです.
 したがって
3の場合だけ

は,「3点の重心」と「三角形の重心」を表しますが



は四角形や五角形の重心の座標を表しているのではなく,4点の重心,5点の重心を表していることに注意してください.(上の図の右側に対応)

【三角形の重心】の公式:≪証明≫
 三角形の「重心」という名前が付いていて,三角形だけは右のように重さが集まる点と一致しますが,公式の証明には面積素辺の重さの集計はしません.
 そもそも,三角形の重心とは,「三角形の3つの中線が交わる点」として図形的に定義されて,この定義を使います.
 正確に言うと,「3つの中線の交点を求める」計算は,少しだけ手間がかかるので,もっと簡単に「3中線の交点の性質」を使います.
 右図のように3中線の交点をGとおくとき,中学校で習う平行線の性質により,AG:GP=2:1になります.
 三角形の辺BCの中点をPとおくと,中点の公式から

 次に,AP2:1に内分する点の座標は



【例題5】
(1) A(1, 5, 2), B(−1, 3, 4)のとき線分ABの中点の座標を求めてください.
(2) 2点A(1, 5, 2), B(4, −3, 1)を結ぶ線分AB2:1に内分する点の座標を求めてください.
(3) 2点A(1, 2, −3), B(2, −1, 0)を結ぶ線分AB1:2に外分する点の座標を求めてください.
(4) 3点A(−5, 4, −1), B(9, 2, 2), C(2, 3, −4)を頂点とする△ABCの重心の座標を求めてください.
(解答)
(1) …(答)
(2)


(3)


(4)


【ベクトルの図形への応用】
【3点が1直線上にあるための条件】(共線条件)  を引き延ばして(拡大または縮小して)になれば,3点P, Q, Rは1直線上にあると言える.
3点P, Q, Rが1直線上
tは実数)
【例題6】
 3点A(1, −1, 2), B(−2, 0, 1), C(4, y, z)が1直線上にあるようにy, zの値を求めてください.
(解答)
とおく

3=−3t
y+1=t
z−2=−t
この連立方程式を解くと
(t=−1), y=−2, z=3…(答)
【例題7】
(1) 平行6面体ABCD-EFGHにおいて△BDEの重心を△CHFの重心をとするとき,4点は同一直線上にあることを証明してください.
(2) ABの中点をMとするとき,3点は同一直線上にあることを証明してください.
(3) FGの中点をNとするとき,3点は同一直線上にあることを証明してください.
なお,名前が紛らわしいですが,Gは重心を表しているわけではありません.
(解答)
とおく
(1)

だから

したがって,3点は同一直線上にある.
また


だから

したがって,3点は同一直線上にある.
以上から,4点は同一直線上にある(証明終 ∎)
(2)
だから


よって

したがって,3点は同一直線上にある.(証明終 ∎)
(3)
だから




よって

したがって,3点は同一直線上にある.(証明終 ∎)

【ベクトルの図形への応用】
【4点が同一平面上にあるための条件】…(*1)
 点P△ABCと同一平面にあるための条件は

s, tは実数)

【例題8】
 4点A(5, 2, 1), B(6, 1, 0), C(3, −2, −1), P(x, 3, 2)が同一平面上にあるように定数xの値を定めてください.
(解答)


などでもよいが,以下の答案はを使う

となればよいから

次の連立方程式を解く
x−3=2s+3t
5=4s+3t
3=2s+t
(s=2, t=−1), x=4…(答)

【ベクトルの図形への応用】
【4点が同一平面上にあるための条件】…(*2)
 1直線上にない3点と点について
(1) △ABCと同一平面上にある

s, t, uは実数で,s+t+u=1が成り立つ)
(2) が△ABCの内部にある

s, t, uは実数で,s+t+u=1, s>0, t>0, u>0が成り立つ)
前述(*1)の【4点が同一平面上にあるための条件】を使えば,(1)は次のように示される.
より


ここで1−s−t=uすなわちs+t+u=1とおけば

(2)は次のように示せる
s+t+u=1, s>0, t>0, u>0のとき,t:sに内分する点をとおくと,


と書けるから,PDCu:(s+t)に内分する点となり,△ABCの内部にある.


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