【第2次導関数を用いた凹凸の判定】
(解説)(1) f ”(x)>0となる区間では, y=f(x)のグラフは下に凸である. (2) f ”(x)<0となる区間では, y=f(x)のグラフは上に凸である. 導関数を用いて関数の増減を調べるときの議論を思い出すと,ある関数f(x)の導関数f ’(x)が,f ’(x)>0となる区間において,関数f(x)は増加します. (1) 同様にして,ある導関数f ’(x)の導関数f ”(x)が,f ”(x)>0となる区間において,導関数f ’(x)は増加します. このとき,右図のように下に凸(とつ:ふくらんでいること)のグラフになります. (2) 逆に,ある導関数f ’(x)の導関数f ”(x)が,f ”(x)<0となる区間において,導関数f ’(x)は減少します. このとき,右図のように上に凸のグラフになります. |
##間違いやすい##
この公式は,ウッカリしていると,プラスが山だろうと早合点して逆に覚えてしまう可能性が大です. どこかの参考書に書いてあった次の覚え方がよいと思いますので,図と結び付けて覚えるとよいでしょう.(両手を上げているか下げているかを見ます)
上に凸という代わりに下に凹,下に凸という代わりに上に凹と言ってはいけないのか?
⇒ 理屈上は同じことを表していますが,ほとんどの教科書,授業では「どちら向きに凸か」で表現しているので,それに合わせる方がよい. |
【例1.1】
(解答)次の関数の凹凸を調べてください. だから,全区間 で下に凸…(答) |
【例1.2】
(解答)次の関数の凹凸を調べてください. だから,x>0において上に凸…(答) |
【変曲点】 (解説) y=f(x)上の1点(a, f(a))を境として曲線の凹凸が変化するとき,この点を変曲点といいます. 上に凸すなわち,f ”(x)>0の状態から,下に凸すなわち,f ”(x)<0の状態に変わるとき,その点でf ”(x)が定義されていれば,f ”(x)=0になります. また,下に凸すなわち,f ”(x)<0の状態から,上に凸すなわち,f ”(x)>0の状態に変わるときも,その点でf ”(x)が定義されていれば,f ”(x)=0になります.
f ”(x)=0,かつ,その点でf ”(x)の符号が変化する点は変曲点
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(参考) のグラフでは,x<0の区間とx>0の区間とで凹凸が異なるが,曲線が繋がっていない(x=0で定義されていない).このような場合は,変曲点とは言いません. |
【例2.1】
(解答)次の関数の凹凸を調べてください.
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次のように表で答える略式答案も多い
凹凸を言葉で表現する答案も多い.
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実際には,増減と凹凸を問う問題がほとんどなので,次のような表う使うことが多い.この場合,yの欄には増減と凹凸を組み合わせた次のような記号を用いる.
※変曲点が問われているときは,次のように座標で答えなければなりません.変曲点は , |
【要約】
1. 変曲点は の形の座標で答える. 2. 凹凸は次のいずれかの形で答える.
(1) 「0<x<1のとき上に凸」のように,区間を示して文章で表す.
(2) 表の中で∪,∩を用いて表す. (3) 表の中で増減と凹凸を組み合わせた記号 で表す. |
【例2.2】
(解答)次の関数の凹凸,変曲点を調べてください.
凹凸は上の表の通り.変曲点は …(答) |
【問題1】 次の関数の凹凸,変曲点を調べてください.
(1)
解説を読む |
(2)
解説を読む
−1<x<1で上に凸, 変曲点は …(答)…概形は右図(青丸は極大,赤丸は変曲点) |
(3)
解説を読む
で下に凸, 変曲点は …(答) …概形は右図(青丸は極値,赤丸は変曲点) |
(4)
解説を読む
−1<x<1で下に凸, 変曲点は …(答) …概形は右図(青丸は極小,赤丸は変曲点) |
【第2次導関数を用いた極値の判定】
(解説)(1) f ’(a)=0かつf ”(a)>0のとき,f(a)は極小値である. (2) f ’(a)=0かつf ”(a)<0のとき,f(a)は極大値である. [イラストによる解説] このページの初めの方に登場した,右の図(第2次導関数がプラスだったら下に凸,第2次導関数がマイナスだったら上に凸)を思い出すと,谷底と山頂に対応しているから,極小値と極大値になる. [言葉と論理による解説] (1)のf ’(a)=0かつf ”(a)>0のとき,f(a)は極小値であることの証明:
与えられた条件から,x=aの前後でf ”(a)>0だから,右の表の(D)(E)(F)で示したy ”の符号+が埋まっている. 次に,与えられた条件から(B)のy ’の符号0が埋まっている. さて,(D)によりy ”が+だから,y ’は増えてきて,(B)の0になる.したがって,それまでマイナスだったことになる→(A)がマイナスであることが示された. また,(B)の0から右に進むと,(F)によりy ”が+だから,y ’は増える.0から増えるのだから,それからはプラスになる.→(C)がプラスであることが示された. 以上により,(A)(C)の符号が決まったので,増減をみるとf(a)が極小値であることが分かる.
増えてきて0になるなら,それまではマイナス
0から増えるのなら,それからはプラス |
(2)のf ’(a)=0かつf ”(a)<0のとき,f(a)は極大値であることの証明:
与えられた条件から,x=aの前後でf ”(a)<0だから,右の表の(D)(E)(F)で示したy ”の符号−が埋まっている. 次に,与えられた条件から(B)のy ’の符号0が埋まっている. さて,(D)によりy ”が−だから,y ’は減ってきて,(B)の0になる.したがって,それまでプラスだったことになる→(A)がプラスであることが示された. また,(B)の0から右に進むと,(F)によりy ”が−だから,y ’は減る.0から減るのだから,それからはマイナスになる.→(C)がマイナスであることが示された. 以上により,(A)(C)の符号が決まったので,増減をみるとf(a)が極大値であることが分かる.
減ってきて0になるなら,それまではプラス
0から減るのなら,それからはマイナス |
(参考1) 第2次導関数を用いた極値の判定の公式は「この公式を使って極値を判定することができる」ということを述べているだけで「この公式を使わなければ極値かどうかを判定することはできない」と述べているわけではない.実施のところ,x=aの前後でy’の符号の変化が分かれば,極値かどうかは分かる. 一般に,y’を求める計算の方がy”を求める計算よりも簡単で間違いが少ないから,y’だけで増減が分かれば,y”を使わなくてもよい.高校生が出会う問題でy”を使わなければ極値の判定ができないような問題は,めったにない.(下に登場する問題で確かめておくとよい) |
(参考2) y"の図 「微分可能な関数は連続である」のでf”(x)が定義されている場合は,f”(x)は連続です.平たく言えば,つながっています.(右図の×印のようなことは起こりません) したがって,f”(a)>0のとき,x=aの近傍でもf”(x)>0になります.…遠くの方で符号が変わることがありますが,上記の証明にはx=aの近傍だけでよく,f”(x)>0である範囲の値を考えればよい. |
【例3.1】
(解答)次の関数の極値を調べてください. のとき, だから極小. 極小値は−1 x=0のとき,y'=0, y''=−4<0だから極大. 極大値は0 (参考) 数学Uで習ったように,第1次導関数までだけを使って求めることもできます.
x=0のとき,極大.極大値は0 |
【問題2】 次の関数の極値を調べてください.
(1)
解説を読む |
(2)
解説を読む |
授業で凹凸と変曲点の解説をするときは別として,凹凸だけを問う問題はあまり出ません.多いのは,「増減,極値,凹凸,変曲点,漸近線を調べてグラフを描け」という形の問題です.(漸近線の方程式の求め方については,≪1.このページ≫,≪2.このページ≫を見てください.)
【問題3】
(1) 次の関数の増減,極値,凹凸,変曲点,漸近線を調べてグラフを描いてください.
解説を読む |
(2) 次の関数の増減,極値,凹凸,変曲点,漸近線を調べてグラフを描いてください.
解説を読む
のとき,極小値 極大値なし x>0において下に凸,変曲点なし 漸近線なし グラフの概形は右図…(答) ※このグラフで となること(x=0のときyは定義されないが,x→+0のときy→0となること:原点に〇が付いている)を示すのは,少し難しいが,ロピタルの定理を使って示せる. |
(3) 次の関数の増減,極値,凹凸,変曲点,漸近線を調べてグラフを描いてください.
解説を読む
x<−1, −1<x<1, 1<xにおいて単調増加 極値なし x<−1, 0<x<1において上に凸,−1<x<0, 1<xにおいて下に凸 (0, 0)は変曲点 漸近線の方程式は x=−1, x=1, y=0 グラフの概形は右図 …(答) |
(4)
解説を読むおよび となる角
極値なし において上に凸, において下に凸 変曲点は 漸近線なし グラフの概形は右図 ※この問題は,高校生にとっては難しい.その1つの理由は,角 が既知の数値で表せなくて, となる角という具合に間接的に表現せざるを得ない点にある.このような問題でも,何問か練習するとできるようになる. のとき, などとして, の値を求める. もう1つ, の符号を決める計算も難しいが,次のように地道に積み上げていくとできる. ⇒ で正, で0, で負 ⇒ で負, で0, で正, で負
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凹凸,変曲点の大学入試問題
【問題4.1】
関数
の値の増減,グラフの凹凸,漸近線の有無について調べ,そのグラフの概形を描け.解説を読む(2005年 愛知教育大)
x=2において極小.極小値は ,極大値はなし x<0, 0<x<3において下に凸,3<xにおいて上に凸 は変曲点 だから,直線x=0は漸近線 だから,直線y=1は漸近線 グラフの概形は次の図 |
【問題4.2】
関数
がある.解説を読む(1) f(x)の導関数f’(x)を求めよ. (2) f(x)の第2次導関数f”(x)を求めよ. (3) 曲線y=f(x)(ただし, )の増減表を書け.増減表には,増減のほか,凹凸についても明示すること. (4) 曲線y=f(x)(ただし, )のグラフを描け. (2011年山形大)
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(参考) f ’(a)=0かつf ”(a)が正(負)のとき,f(a)は極小値(極大値)と言えますが,f ”(a)も0なら極値かどうか判定できません. その場合は,さらに第3次導関数を使って求めることができます. 一般に,第1次導関数から第n次導関数まですべて0で,第n+1次導関数が正負のいずれかであるとき,極値か否かを判定することができます. (1) f ’(a)=0, f ”(a)=0かつf (3)(a)>0のとき
f (n)(x)は第n次導関数を表す記号です
(H)が+で微分可能だから,(G)が+になり,(E)が0だから,(D)のところは「増えて0になるのだから」それまでは−であったことになります. 次に,(D)が−で(B)が0だから,(A)のところは「減って0になるのだから」それまでは+であったことになります. 右半分は,(I)が+で(E)が0だから,(F)のところは「0から増えるのだから」そこからは+になります. さらに,(F)が+で(B)が0だから,(C)のところは「0から増えるのだから」そこからは+になります. 結局,(A)が+,(C)も+となって,f(a)は極値ではないことが分かります.
例えばf(x)=x3のとき,f’(x)=3x2, f”(x)=6x,
(2) f ’(a)=0, f ”(a)=0, f (3)(a)=0かつf (4)(a)>0のときf (3)(x)=6だから,f’(0)=0, f”(0)=0, f (3)(0)>0となりますが,f(0)=0は極値ではありません.
次に,(G)が−で(E)が0だから,(D)のところは「減って0になるのだから」それまでは+であったことになります. さらに,(D)が+で(B)が0だから,(A)のところは「増えて0になるのだから」それまでは−であったことになります. 右半分は,(L)が+で(H)が0だから,(I)のところは「0から増えるのだから」そこからは+になります. さらに,(I)が+で(E)が0だから,(F)のところは「0から増えるのだから」そこからは+になります. さらに,(F)が+で(B)が0だから,(C)のところは「0から増えるのだから」そこからは+になります. 結局,(A)が−,(C)は+となって,f(a)は極小値であることが分かります.
例えばf(x)=x4のとき,f’(x)=4x3, f”(x)=12x2,
(*) 以上の議論を振り返ってみると,右半分の符号はf (3)(x)=24x, f (4)(x)=24だから,f’(0)=0, f”(0)=0, f (3)(0)=0, f (4)(0)>0となり,f(0)=0は極小値になります. f (n)(0)の符号に一致していることが分かります.0から増える(逆の場合は減る)だけだから. 左半分は,「増えて0になる」「減って0になる」が交代するので,+と−が交互に登場することが分かります. 以上の結果をまとめると,f’(a)=0, f”(a)=0, f (3)(a)=0, … , f (2n−1)(a)=0, f (2n)(a)>0のとき,f(a)は極小値 f’(a)=0, f”(a)=0, f (3)(a)=0, … , f (2n)(a)=0, f (2n+1)(a)>0のとき,f(a)は極値ではないと言えます. (**) f’(a)=0, f”(a)=0, f (3)(a)=0, … , f (2n−1)(a)=0, f (2n)(a)<0のとき等の場合については,以上の議論と符号が逆になります. |