例1
6と10の最小公倍数を求めてください。
(解答)
単純に掛けても最小公倍数にはならない:6×10=60 ←×
小学校で習う方法では,次のように割り算の裏向きのような書き方で共通に割れる数(2)で割って商(3, 5)を下に書く。 公約数と各々の商を掛けたものが最小公倍数 2×3×5=30…(答)
例2
12と18の最小公倍数を求めてください。
(解答)
共通に割れる数(公約数)として思いつく数字で割る.1回で終わらないときは何回かに分けて割るとよい.
公約数と各々の商を掛けたものが最小公倍数 2×3×2×3=36…(答) |
公約数と各々の商を掛けたものが最小公倍数 3×5×6=90…(答) 公約数と各々の商を掛けたものが最小公倍数 2×2×3×2×5=120…(答) |
2.[割ったときの余り]…1.と構造的には同じで,文章の見かけだけが変わる場合
例3
12で割っても15で割っても割り切れる正の整数のうちで最も小さなものを求めてください.
(解答)
「12で割っても15で割っても割り切れる」数とは「12と15の最小公倍数」ということだから,最小公倍数を求めます.
3×4×5=60…(答) |
2×3×3×5=90…(答) |
3.[文章題]…1.2.と構造的には同じで,文章の見かけだけが変わる場合
例4
バザーで売るためにクッキーをたくさん焼いた.これらを袋に18個ずつ詰めても24個ずつ詰めても1個も残らずにちょうど入った.クッキーは全部で何個ありますか.ただし,100個以下ということは分かっているものとします.
(解答)
18と24の最小公倍数を求めます.
2 ) 18 24 3 ) 9 12 3 4 2×3×3×4=72…(答) 100個以下という条件は答とどういう関係があるか?・・・クッキーの数は公倍数になって72, 144, 216, ...となるが,そのうちで100個以下になるのは72個.この問題では,たまたま最小公倍数になるが,求めているのは公倍数.
例5
ある駅からA団地行きのバスは15分おきに,B団地行きのバスは25分おきに出ます.午前7時ちょうどにA団地行きのバスとB団地行きのバスが同時に出たとき,次にA団地行きのバスとB団地行きのバスが同時に出るのは何時何分ですか.
(解答)
15と25の最小公倍数を求めます.
5 ) 15 25 3 5 5×3×5=75 75分後に同時に出るから,午前7時+75分=午前7時+60分+15分=午前8時15分…(答) 「次に」という条件は答とどういう関係があるか?・・・「同時に出る」のは公倍数(の分)後で,75, 150, 225, ...分後.「次に」だから問題に合う最初の時間となって,最小公倍数の時間が答に関係します. |
12と20の最小公倍数を求めます.
4 ) 12 20 3 5 4×3×5=60個…(答)
18と30の最小公倍数を求めます. 6 ) 18 30 3 5 6×3×5=90分 90分後に同時に出るから,午前7時+90分=午前7時+60分+30分=午前8時30分…(答) |
4.[割ったときの余りが等しい場合]…2.と構造的に少しだけ変わる場合
例6
6で割っても10で割っても4余る2けたの正の整数のうちで最小のものを求めてください.
(解答)まず6で割っても10で割っても割り切れる数,すなわち6と10の最小公倍数を求めます.
2
)
6
10
最小公倍数は30だから,6で割っても10で割っても割り切れる数(公倍数)は30, 60, 90, ...3 5 これらに4を加えた数は割ったときに4余るから,34, 64, 94, ...(正確に言えば,ただの4も条件に合う) これらのうちで,2けたの正の整数で最小のものは34…(答) |
まず15と18の最小公倍数を求めます.
15でも18でも割り切れる数は(0), 90, 180,, ...3 ) 15 18 5 6 3×5×6=90 これらに1足した数(1), 91, 181, ...は15で割っても18で割っても1余る.2けたのものは91…(答) |
5.[等しい数を足せば割り切れる場合]…工夫すれば2.の構造になる場合
例7
6で割ると3余り,10で割ると7余るような正の整数のうちで最小のものを求めてください.
(解答)余りに3だけ足すと6でも10でも割り切れる(3+3=6, 7+3=10)から,元の数に3だけ足すと6でも10でも割り切れる.
元の数をNとおくと
そこで、初めに6でも10でも割り切れる数(6と10の公倍数:6と10の最小公倍数の倍数)を求めます.
N=6m+3→N+3=6m+6=6(m+1) N=10n+7→N+3=10n+10=10(n+1) したがって,N+3は6でも10でも割り切れる.
2
)
6
10
最小公倍数は30だから,6で割っても10で割っても割り切れる数(公倍数)は30, 60, 90, ...3 5 N+3=30, 60, 90, ...から,N=27, 57, 87, ... これらのうちで,最小のものは27…(答) |
まず6と8の最小公倍数を求めます.
6でも8でも割り切れる数はN+1=(0), 24, 48, ...2 ) 6 8 3 4 2×3×4=24 これらからN=(−1), 23, 47, .... 正の数で最小のものは23…(答) |
6.[式を用いた表し方1]
例8
30で割ると23余る正の整数を6で割ったときの余りを求めてください.
(解答)30で割ると23余る正の整数Nは N=30n+23(n=0, 1, 2, ...は整数)と書ける. (たとえば,23, 53, 83, ...) 30nの部分は6で割り切れるから,余りは23の部分を割ったときに出てくる. N=30n+23=6×5n+6×3+5 余りは5…(答)
例9
6で割ると1余り,8で割ると5余る正の整数を24で割ったときの余りを求めてください.
(解答)24で割ったときの余りをrとおくとrは0以上23以下の整数になる. N=24n+r(rは0以上23以下の整数)と書ける. 24nの部分は6で割り切れるから,6で割った余りはrの部分を割ったときに出てくる. 6で割った余りが1になるのは r=1, 7, 13, 19 …(1) 同様にして8で割った余りが5になるのは r=5, 13, 21 …(2) (1)(2)から両方の条件を満たしているのはr=13…(答) |
N=60n+32(n=0, 1, 2, ...は整数)と書ける. (たとえば,32, 92, 152, ... ) 60nの部分は12で割り切れるから,余りは32の部分を割ったときに出てくる. N=60n+32=12×5n+12×2+8 余りは8…(答) N=60n+r(rは0以上59以下の整数)と書ける. 60nの部分は15で割り切れるから,15で割った余りはrの部分を割ったときに出てくる. 15で割った余りが11になるのは r=11, 26, 41, 56 …(1) 同様にして12で割った余りが5になるのは r=5, 17, 29, 41, 53 …(2) (1)(2)から両方の条件を満たしているのはr=41…(答) |
7.[式を用いた表し方2]
例10
10で割ると9余り,12で割ると3余る正の整数のうちで最小のものを求めてください.
(解答)求める数を10と12の最小公倍数60で割ったときの余りをrとおくとrは0以上59以下の整数になる. N=60n+r(rは0以上59以下の整数)と書ける. 60nの部分は10で割り切れるから,10で割った余りはrの部分を割ったときに出てくる. 10で割った余りが9になるのは r=9, 19, 29, 39, 49, 59 …(1) 同様にして12で割った余りが3になるのは r=3, 15, 27, 39, 51 …(2) (1)(2)から両方の条件を満たしているのはr=39 N=60n+39の形で書ける正の整数は39, 99, ...で,そのうち最小のものはN=39…(答)
≪なぜ60で割った余りで分類するのか?≫
上の例9,問9まで解いてくると最小公倍数で割った余りで分類できることが分かりますが,この考え方は中国の流れを受け継いだ東アジアの国では日常生活で普通に使われています.すなわち,10で割った余りは十干と呼ばれ甲乙丙丁戊己庚辛壬癸で表され,12で割った余りは十二支と呼ばれ子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥で表されます.10と12の最小公倍数は60だから,10で割った余りと12で割った余りの組み合わせ干支(えと)は60種類でそれ以外にはありません.干支を年に適用すれば60年で1周して還暦と呼ばれます. 陰陽×五行=十干・・・甲(きのえ=木の兄),乙(きのと=木の弟),丙(ひのえ=火の兄),丁(ひのと=火の弟),戊(つちのえ=土の兄),己(つちのと=土の弟),庚(以下略)辛壬癸・・・これに十二支を組み合わせて自然現象,社会現象を『説明し尽くす』という徹底ぶりに中国の考え方の理知的な特徴がうかがえます. 西暦を使う西洋文化と中国の文化とでは,年号の始まりを別々に決めているので西暦年を10で割って割り切れる年は庚,1余る年は辛,(以下は)壬,癸,甲,乙,丙,丁,戊,己の順に回り,西暦年を12で割って割り切れる年は申,1余る年は酉,(以下は)戌,亥,子,丑,寅,卯,辰,巳,午,未の順に回ります. 西暦2012年は西暦年を10で割ると2余り,12で割ると8余るので壬辰の年になります.江戸幕府と明治新政府の戦い(1868年:鳥羽伏見の戦い〜東北戦争・函館戦争)は1868を10で割っても12で割っても8余るので戊辰の年にあたり,戊辰戦争と呼ばれます. |
6
)
24
18
72で割ったときの余りをrとおくとrは0以上71以下の整数になる.4 3 6×4×3=72 N=72n+r(rは0以上71以下の整数)と書ける. 72nの部分は24で割り切れるから,24で割った余りはrの部分を割ったときに出てくる. 24で割った余りが3になるのは r=3, 27, 51 …(1) 同様にして18で割った余りが15になるのは r=15, 33, 51, 69 …(2) (1)(2)から両方の条件を満たしているのはr=51 72n+51と書ける数51, 123, ...のうちで最小のものは 51…(答)
*** これは問題ではありません.自由研究です. ****
ここでは,信じるとか信じないとかに関係なく,東アジアで広く行われている文化を理解するという観点から見てください.
あなたの生まれた年(西暦)が干支で何の年に当たるかを調べます
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【類似問題】
3
)
12
15
したがって
4 5 3×4×5=60
N−7=(0), 60, 120,, ...
N=(7), 67, 127, ... 2けたのものは67…(答) 5と6は共通な約数が(1外に)ないから,最小公倍数は単にそれらを掛けたもの30になります. N+2=(0), 30, 60, ... これらからN=(−2), 28, 58, .... 正の数で最小のものは28…(答) N=24n+19(n=0, 1, 2, ...は整数)と書ける. (たとえば,(19), 43, 67, ... ) 24nの部分は8で割り切れるから,余りは19の部分を割ったときに出てくる. N=24n+19=8×3n+8×2+3 余りは3…(答) |
N=90n+r(rは0以上89以下の整数)と書ける. 90nの部分は18で割り切れるから,18で割った余りはrの部分を割ったときに出てくる. 18で割った余りが15になるのは r=15, 33, 51, 69, 85 …(1) 同様にして10で割った余りが9になるのは r=9, 19, 29, 39, 49, 59, 69, 79, 89 …(2) (1)(2)から両方の条件を満たしているのはr=69…(答)
2
)
10
14
70で割ったときの余りをrとおくとrは0以上69以下の整数になる.5 7 2×5×7=70 N=70n+r(rは0以上69以下の整数)と書ける. 70nの部分は10で割り切れるから,10で割った余りはrの部分を割ったときに出てくる. 10で割った余りが7になるのは r=7, 17, 27, 37, 47, 57, 67 …(1) 同様にして14で割った余りが9になるのは r=9, 23, 37, 51, 65 …(2) (1)(2)から両方の条件を満たしているのはr=37 37…(答) |
≪参考:問題解きプログラム≫ 右欄を埋めてあなたが解きたいと思う問題を作ってください.
○ 空欄を埋めて求めるボタンを押してください.
上から2段目まで埋めて3段目以下を空欄にすれば,2つの条件で計算します.
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