《解説》 ○ 素数 1より大きい整数のうち,1と自分自身以外の整数では割り切れないような整数を素数といいます. ○ エラトステネスのふるい 素数を求める方法として,古来有名なものに「エラトステネスのふるい」があります.(エラトステネスはギリシア時代の人の名) もし1を素数に含めてしまうと,素因数分解が何通りでもできてしまい,素因数分解の理論がグチャグチャになってしまいます.
例えば,1を素因数分解に含めない普通の立場では6の素因数分解は2×3のただ1通りに決まりますが,1を素因数に含めてしまうと1×2×3, 12×2×3, 13×2×3, 14×2×3, ...と素因数分解の仕方が何通りでもあることになり混乱が起こります. その方法は, 1は素数とはしないので除外する.(意外と忘れやすいので注意.中学生では,約束だと思えばよい.) 2を残して2で割り切れるものを除外する.3を残して3で割り切れるものを除外する. (4は除外されている.) 5を残して5で割り切れるものを除外する. (6は除外されている.) 7を残して7で割り切れるものを除外する.... のように進めていき,残った数が素数と考えます. |
○どんな正の整数Nでも,1と自分自身Nで必ず割り切れますが,1と自分自身N「以外の」整数では割り切れないとき,その整数Nは「素数」といいます.
【素数でないものの例】
▼ 4は,(1, 4以外で)2で割り切れるから「素数ではない」. ▼ 6は,(1, 6以外で)2, 3で割り切れるから「素数ではない」. ▼ 9は,(1, 9以外で)3で割り切れるから「素数ではない」. 【素数であるものの例】 ◎ 2は,1, 2以外の整数では割り切れないから「素数です」. ◎ 3は,1, 3以外の整数では割り切れないから「素数です」. ◎ 5は,1, 5以外の整数では割り切れないから「素数です」. 【間違いやすいもの】 ▼ 1は,上で解説したように「素数に入れません」. ▼ 0は,正の整数でないから「素数に入れません」.
《できれば覚えた方がよい:100までの素数》
1は素数ではない.(これは約束) 2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, 41, 43, 47, 53, 59, 61, 67, 71, 73, 79, 83, 89, 97 は素数です. |
○ 素数の見分け方 与えられた数が素数か素数でないかを見分けるには,2からN−1までの整数で割り切れるかどうか,「試しに割ってみる」とよい.例えば39が素数かどうか調べるには2から38までの整数で割り切れるかどうか調べてみて,1つでも割り切れるものがあれば素数でないといえます.
※中学校の基本では,「素数であるかどうかは小さい方の数字から順に割って見ればわかる」という立場を取ります.
次の(A)と(B)の違いは,約数がなかなか見つからないときに「大きい方はどこまで調べたらよいのか」という判断の仕方を示したものです.
《素数の調べ方:確実な方法1》
正の整数Nが素数かどうかを調べるには2からN−1までの整数で割ってみればよい. ⇒1つでも割り切れるものがあればNは素数ではない.どの整数でも割り切れなければNは素数
【例】
▼ 21は3で割り切れるから,それ以上大きな数で調べなくても「素数ではない」といえます. ▼ 35は5で割り切れるから,それ以上大きな数で調べなくても「素数ではない」といえます. ◎ 13は,2,3,5,7,11で割り切れないから「素数です」. (2を調べたら4,6,8,10,...は調べなくてもよい) (3を調べたら3,6,9,12,...は調べなくてもよい) (5を調べたら5,10,15,...は調べなくてもよい) |
実際には, 39=3×13 などで,2から38まで調べなくても,2から =6.○△□までの整数(6まで)を調べればよい. までには小さい方の約数3が登場するからです.運悪く,小さな素数がなかなか登場せず,121=11×11のように同じ数の積になっているときでも,=11まで調べれば分かります.
《素数の調べ方:最短の方法2》
正の整数 N が素数かどうかを調べるにはまでの整数で割ればよい. ⇒ 小さな素数が順に言えるようにし,までの素数で割ればよい.(2,3,5,7,...で割ればよい.)
【例】
○以上の解説で述べたこと
◎ 31が素数であるかどうか調べるには, だから5までの整数で割り切れるかどうか調べたらよい.やってみると,31は,2,3,5で割り切れないから「素数」といえます. ◎ 53が素数であるかどうか調べるには, だから7までの整数で割り切れるかどうか調べたらよい.やってみると,53は,2,3,5,7で割り切れないから「素数」といえます.
たとえば,100以下の整数が素因数分解できる場合,すなわちだから,10以下の素因数(2, 3, 5, 7)で割り切れるいうことです.
○以上の解説で述べていないこと
10以下の素因数が1つもない(10よりも大きな素数の積になっている)ような整数は必ず以上になるので,100以下の整数が10よりも大きな素因数ばかりの積になることはありません.
たとえば,34=2×17,65=5×13のように,100以下の整数を素因数分解したときに10以上の素因数が登場することはあります.
ただし,10以下の素因数が1つ見つかれば,その数で割れば素因数分解はできます. 34÷2=17 65÷5=13 |
≪用語≫
正の整数a, bについて,aがbで割り切れるとき,
bはaの約数といいます.
【例】aはbの倍数といいます. 6は2で割り切れるから,2は6の約数で,6は2の倍数です. 【問題1】 選択肢の中から正しいものを1つクリック
(1)
37の約数について,次のうちで正しいものを選んでください.
37÷2=18余り1 → 37は2で割り切れない
37÷3=11余り1 → 37は3で割り切れない (2で割り切れないから4でも割り切れない) 37÷5=7余り2 → 37は5で割り切れない 以上により,5以下の素数で割り切れない…(答) |
(2)
87の約数について,次のうちで正しいものを選んでください.
87÷2=43余り1 → 87は2で割り切れない
87÷3=29 → 87は3で割り切れる 87÷5=17余り2 → 87は5で割り切れない 87÷7=12余り3 → 87は7で割り切れない 以上により,3は約数である…(答) |
(3)
91の約数について,次のうちで正しいものを選んでください.
91÷2=45余り1 → 91は2で割り切れない
91÷3=30余り1 → 91は3で割り切れない 91÷5=18余り1 → 91は5で割り切れない 91÷7=13 → → 91は7で割り切れる 以上により,7で割り切れる(7は約数である)…(答) |
(4)
97の約数について,次のうちで正しいものを選んでください.
97÷2=48余り1 → 97は2で割り切れない
97÷3=32余り1 → 97は3で割り切れない 97÷5=19余り2 → 97は5で割り切れない 97÷7=13余り6 → 97は7で割り切れない (2で割り切れないから4,6,8でも割り切れない,3で割り切れないから9でも割り切れない) 以上により,9以下の素数で割り切れない…(答) |
【よく使う倍数の見分け方】
【問題2】 次の各組の数の中に素数が1つずつあります.各々の組の中で素数を選びなさい.(正しいものを1つクリック)[2の倍数]・・・1の位の数が0,2,4,6,8 [5の倍数]・・・1の位の数が0,5 [3の倍数]・・・各位の数の和が3の倍数(例:234→2+3+4=9だから234は3の倍数)
54は2で割り切れる
55は5で割り切れる 56は2で割り切れる だから,53の約数を調べるには7以下の約数がないかどうかを調べるとよい. 53は2, 3, 5, 7で割り切れないから,53は素数…(答) |
60は2, 3, 5で割り切れる
62は2で割り切れる 63は3で割り切れる だから,61の約数を調べるには7以下の約数がないかどうかを調べるとよい. 61は2, 3, 5, 7で割り切れないから,61は素数…(答) |
21は3で割り切れる
51は3で割り切れる 81は3で割り切れる 91は7で割り切れる だから,71の約数を調べるには8以下(素数では7以下)の約数がないかどうかを調べるとよい. 71は2, 3, 5, 7で割り切れないから,71は素数…(答) |
77は7で割り切れる
85は5で割り切れる 87は3で割り切れる 93は3で割り切れる だから,97の約数を調べるには9以下(素数では7以下)の約数がないかどうかを調べるとよい. 97は2, 3, 5, 7で割り切れないから,97は素数…(答) |
【問題3】 次の各組の数の中に素数でないものが1つずつあります.各々の組の中で素数でないものを選びなさい.(1つクリック) |
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※次の表は,啓林館の教科書に掲載されている表を100まで広げたものです.教科書自体にはこの表に解説は付いていませんが,何らかの規則性を示唆していることは読み取れます.発展学習の種が置いてあるのかもしれません.
【研究】次の表は100以下の整数を6列に並べたものです.背景色が水色のものは素数です. さて,このように6列に並べると,1列目と5列目に素数が集まっており,他の列にはほとんどありません.その理由を考えてください.
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解答を見る
◎1列目は,6で割って1余る数になっています.
2列目は,6で割って2余る数になっています.
このような数は6n+2=2(3n+1)と書くことができるので,2列目の数はすべて2の倍数になっています.だから,2で割り切れるので,先頭の2以外には素数はありません
3列目は,6で割って3余る数になっています.
このような数は6n+3=3(2n+1)と書くことができるので,3列目の数はすべて3の倍数になっています.だから,3で割り切れるので,先頭の3以外には素数はありません
4列目は,6で割って4余る数になっています.
このような数は6n+4=2(3n+2)と書くことができるので,4列目の数はすべて2の倍数になっています.だから素数はありません
◎5列目は,6で割って5余る数になっています.6列目は,6で割って割り切れる数になっています.
このような数は6nと書くことができるので,6列目の数はすべて6の倍数になっています.だから素数はありません
そこで,2と3以外の素数が登場する可能性があるのは1列目と5列目だけですが,1列目と5列目の全部が素数になるわけではなく,そのうちで5の倍数や7の倍数にならないものが素数になります.(100以下の整数で2, 3, 5 ,7で割り切れないものは素数になります.)このようにして,1列目と5列目に素数が多くあって,1列目と5列目でも時々は素数でないものが混じっていることになります. 2,3,4,6列目は2と3以外には素数はありません. (※この論述式答案をすらすらと書けるような中学生はめったにいないでしょう.どちらかと言えば,高校生が大学受験向けに剰余類の問題として解くレベルです.中学生としては「参考程度に見ておいた」という程度でOKです) |
■[個別の頁からの質問に対する回答][素数について/17.3.11]
HELPが書いてあったので、わからないところもヒントが見れて答えを導き出すことができました。
最初の説明の部分は、しっかりやり方をまとめ、もしこうなると...とあったので、これはやっちゃだめなんだよな、気をつけなきゃなと気づくことができました。また、素数のもの、素数ではないものの問題が二つに分かれており見やすかったです。ありがとうございました(^^♪
=>[作者]:連絡ありがとう. |