≪解説≫ ○ 通分と最小公倍数 幾つかの分数を分母の等しい分数に変形することを「通分」といいます。分母の異なる分数の足し算や引き算を行うためには、先に通分しておく必要があります。 分数を正しく変形するには、分母と分子に同じ数を掛けなければなりません。それそれの分数は次の原理によって変形します。
= … (分母と分子に同じ数Cを掛ける。)
例
= =
= =
上の例では、分母の異なる2つの分数とが、分母の等しい2つの分数とに変形されている(通分できている)ことが分かります。
○1 単純な通分の方法
, → ,
のように、(1)「分母だけを見比べて」足りない数字を掛ける。
を考えるときは、分母に5が足りないと考える。
を考えるときは、分母に3が足りないと考える。
※この通分の方法は、「分母を掛けたものを共通分母にする」というのと同じことです。(2)掛けるときは「分子」にも同じ数を掛ける。
の分母に5を掛けるときは、分子にも5を掛ける。
の分母に3を掛けるときは、分子にも3を掛ける。
※○1の方法で「通分はできます」が、この方法は「無駄が多い」ので小中学校ではあまり薦めていません。 たとえば、次の例1のように2つの分母に共通な約数がないときは、この仕方で無駄なくできますが、例2のように2つの分母に共通の約数があるときは、「単純に分母を掛けたものを共通分母にする」方法では無駄があり、もっと小さな数字で共通分母を作ることができます。 例1
, → , → ,
例2
, → , → ,
( , の方がよい。)
(⇒右上に続く)
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(⇒続き) ○ 分母が6と10(2·3と2·5)になっている2つの分数があるときを考えると、これらの分母には「共通のもの」2と「独自のもの」3 , 5があります。このような2つの数について ※単純に、6·10=2·3·2·5=60を作ると、共通のものを重複して掛けることになり大きくなり過ぎるのです。
【最小公倍数の求め方】
例2つの正の整数A , Bの最大公約数(=共通の約数で最も大きいもの)をG、最小公倍数をLで表すと A=G·A’,B=G·B’ (A’ , B’には公約数はない) と書けます。 このとき、最小公倍数は (単純に2つ掛けたもの:A·B=G·G·A’·B’では、共通のもの(最大公約数)Gを重複して掛けるので無駄があるのです。これに対して、最小公倍数を求めるときは、最大公約数を1回だけ掛けます。) (1) 2つの正の整数15 , 21の「共通に割れるもの」は3なので、15=3·5,21=3·7と書けます。(5 , 7にはもう共通に割り切れるものが1以外にないので、3が最大公約数になります。) そこで最小公倍数は (2) このとき、
,
のように15 , 21が分母となっている分数を通分するには、105を共通分母にすればよいことになります。
, → , → ,
→ ,
○2 最小公倍数を共通分母にする方法
左で述べた○1の場合も含めて、次のようにまとめることができます。 (0)初めに、分母に共通に割り切れるもの(=最大公約数)を見つける。「最大公約数」「独自のもの1」「独自のもの2」を掛けたものが最小公倍数で、これを分母にする。 (1)「元の分母から新しい分母にするために」それぞれ足りない数字を掛ける。 (2)掛けるときは「分子」にも同じ数を掛ける。 例1
,を通分するには
(1) 分母の12 , 10は2で割り切れるので、12=2·6,10=2·5に分けられます。(6 , 5には、公約数がないことを確かめておきます。詳しい内容は、中3で素因数分解という項目で習います。)(2) 共通分母を2·6·5=60にする。このとき、分母にそれぞれ5,6を掛けることになります。 (3) 分子ににもそれぞれ5,6を掛けて
, → , …(できあがり)
例2
,を通分するには
(1) 分母の18 , 30は2で割り切れますが、18=2·9,30=2·15とすると、まだ9 , 15に公約数3がありますので、3でも割って、18=6·3,30=6·5にします。(3 , 5には、公約数がないことを確かめておきます。)(2) 共通分母を6·3·5=90にします。このとき、分母にそれぞれ5,3を掛けることになります。 (3) 分子ににもそれぞれ5,3を掛けて
, → , …(できあがり)
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≪問題≫ 次の分数を(なるべく小さな正の整数を分母にして)通分してください。答は問題に対応するように並べてください。
(Internet Explorer以外のブラウザをお使いの場合は,漢字変換モードを外して半角数字で入力してください.)
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5 , 7には1以外に共通に割り切れるものがないので、5·7=35が最小公倍数。
→ , → ,
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6 , 14は2で割り切れる(2は公約数)ので、6=2·3 , 14=2·7と書ける。 このとき、3 , 7には共通の約数が(1以外に)ないので、2が最大公約数。 最小公倍数はL=2·3·7=42
→ , → ,
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7 , 14は7で割り切れて、7が最大公約数。 7=1·7 , 14=2·7により、最小公倍数はL=7·1·2=14 (この問題のように一方が他方で割り切れるときは、小さい方が最大公約数、大きい方が最小公倍数になる。)
, → ,
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42 , 105は3 , 7で割り切れて、21が最大公約数。 42=21·2 , 105=21·5により、最小公倍数はL=21·2·5=210
→ , → ,
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12 , 20は4で割り切れて、4が最大公約数。(2だけではありません) 12=4·3 , 20=4·5により、最小公倍数はL=4·3·5=60
→ , → ,
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