【等比数列の定義1】
隣り合う2項の比が一定の定数である数列を等比数列といいます
2項の比は,後ろの項を前の項で割ったものとします(0となる項が含まれる場合は,この話はできません)
比が等しいから「等比」数列と考えるとよい 等比数列の隣り合う2項の比を公比といいます
【例1】
(解説)数列1, 2, 4, 8,…… は等比数列です. 隣り合う2項の比は ……
【例2】
(解説)数列81, −27, 9, −3,…… は等比数列です. 隣り合う2項の比は ……
## ビックリ答案 ##
隣り合う2項の比が一定の規則で成り立っているだけでは,等比数列とは言えません. 等比数列と言えるためには,比が一定の「定数」,すなわち「項の番号に依存しない定数」として「どの2項間にも共通の定数」でなければなりません. 割とよく見かける答案ですが, 右のような数列を「公比」 の等比数列だ!などと考えてはいけません. 2項間の比が「項の番号nに依存して変化する」ような数列は等比数列とは言いません. |
等比数列は,初項(第1項)に公比となる定数を次々に掛けていくと得られます.そこで,多くの教科書では,等比数列を次のように定義しています.
【等比数列の定義2】
初項aに定数rを次々に掛けて得られる数列を等比数列といい,その定数rを公比という.
【例1’ 】(再掲)
(解説)数列1, 2, 4, 8,…… は等比数列です. 初項1に公差2を次々に加えて得られる数列となっています.
1×2=2
2×2=4 4×2=8 ……
【例2’ 】(再掲)
(解説)数列81, −27, 9, −3,…… は等比数列です. 初項81に公比 を次々に掛けて得られる数列となっています.
81×( )=−27
(補足)−27×( )=9 9×( )=−3 …… 1, 1, 1, 1,…… は,初項1,公差0の等差数列でもあり,初項1,公比1の等比数列でもあります. このように,等差数列であるか等比数列であるかは,排反関係ではなく両方に該当することがあります. |
【等比数列の一般項の公式】
(解説)
初項a,公比rの等比数列の一般項anは an=arn−1 a2=a×r1 a3=a×r2 a4=a×r3 このように,初項に公比rを項の番号nよりも1つ少ないn−1回掛けると第n項anが得られます. an=arn−1
【例1” 】(再掲)
(解説)等比数列1, 2, 4, 8,…… の一般項anをnの式で表してください. 初項a=1,公比r=2だから an=1×2n−1=2n−1…(答)
【例2” 】(再掲)
(解説)等比数列81, −27, 9, −3,…… の一般項anをnの式で表してください. 初項a=81,公比 だから …(答)
## ビックリ答案 ##
初項2,公比3の等比数列の一般項を と答える答案をよく見かけます. これは,中学高校で何度も練習している指数法則 が理解不十分な人の答案です.
掛け算を先にやっていはいけない
なら,2もn−1回掛けますが なら,2は1回だけ掛けます. |
【問題1】 選択肢の中から正しいものを1つクリック
(1)
初項3,公比2の等比数列の一般項anをnの式で表してください. |
(2)
等比数列anの第3項が36,第5項が16であるとき,この数列の初項aと公比rを求めてください.
初項a,公比rとすると
a3=ar2=36…@ a5=ar4=16…A a, rを未知数として,この連立方程式を解く. Aから@を辺々割ると これを@に代入すると a=81 ゆえに, …(答) (参考) 公比が正の値のとき 81 → 54 → 36 → 24 → 16 … 公比が負の値のとき 81 →−54 → 36 →−24 → 16 … いずれも可能です. |
(3)
とおける等比数列をなす3つの数があって,それらの和が ,積が であるとき,この3数を求めてください. (なお,高校の数列の問題では,特に断りがなければ各項は実数とします) |
(4)
a, b, cをこの順に並べて等比数列をなしている場合,bはaとcの等比中項であるという. 2と18の等比中項を求めてください.
求める等比中項をb,公比をrとおくと
2r=b, br=18 が成り立つ rを消去すると b=±6…(答) (参考) r=±3になります. 公比r=3のとき 2 → 6 → 18 公比r=−3のとき 2 → −6 → 18 いずれも可能です. |
【等比数列の和の公式】
(解説)
初項a,公比r,項数nの等比数列の初項から末項までの和Snは
初項a,公比r,項数nの3要素に分けてから組み立てるのが「コツ」
(A) r≠1のとき(B) r=1のとき
※等差数列の和を求めたときの≪少年ガウスの方法≫で等比数列の和を求めることはできません.
等差数列の場合は,右図のように逆順の和を作ると,ちょうどかみ合って長方形ができますが,等比数列の場合は増え方が変わるので,逆順の和を作っても長方形の形にかみ合うということはありません. そこで,両端を残して「中間項を消す」方法を考えます.この「中間項を消す」方法は,これ以後の応用問題を解くときにも使えるもので,等比数列の和の公式だけでなく,「中間項を消す」方法も覚えるとワンランク上の力が付きます. |
(求め方)
中間項を消す工夫:S−rSを作る
←--------- 項数n --------→ S=a+ar+ar2+ar3+……+arn−1 − ) rS=ar+ar2+ar3+……+arn−1+arn S−rS=a−arn (1−r)S=a−arn
公式(A1)(A2)のどちらを使ってもよいが,数学Bでは有限数列が主なので,rの次数の高いものから順に並べる(A2)の方が好まれる=「見やすい」「間違いにくい」
(A) r≠1のとき数学Vでは,無限数列も扱い,|r|<1のとき のように使うので,式の対応から(A1)が好まれる. …(A1) 分母と分子に−1を掛けても式の値は等しいから …(A2) (B) r=1のとき 公比が1のときは,元の数列の和を実際に書いてみると ←--- 項数n ---→ S=a+a+a+……+a となって,同じ値がn個並んでいるだけだから S=na ※教材を前から順に学習していくときに,前に覚えたことが,後で学ぶことに勘違いを及ぼすことがあります. 等比数列の一般項は,植木算の関係でになりますが 等比数列の和(A2)は ではありません.上記の中間項を消す解説図をよく見ると,末項(第n項)arn−1は消えて,代わりにそれにrを掛けたarnが残ることが分かります. だから,正しいのは |
【例3】
(解説)次の等比数列の第n項までの和を求めてください. 3, 6, 12,……, 3×2n−1 初項a=3,公比r=2,項数nの3要素に分けて読み取ります. …(答)
【例4】
(解説)次の等比数列の和を求めてください. 1, 2, 4,……, 1024 初項a=1,公比r=2 1×210=1024だから項数はn=11 …(答) |
【問題2】 選択肢の中から正しいものを1つクリック
(1)
次の等比数列の和を求めてください. 3, 9, 27, ……, 729 |
(2)
次の等比数列の和を求めてください. |
【循環数列】
【例5】anを等差数列,bnを等比数列とするとき, an×bn,すなわち (等差数列)×(等比数列) の形になっている数列は循環数列と呼ばれます. この数列は教科書や参考書によく出ていますが,名前を覚えるは必要ないでしょう.
さらに,一般に各項が(多項式)×(等比数列) の形になっている数列も循環数列と呼ばれます.
(2n+1)3nは,各項が等差数列an=3+2(n−1)と等比数列bn=3×3n−1の積の形になっています.
【例6】
(n2+n+2)2n−1は,各項が2次式an=n2+n+2と等比数列bn=1×2n−1の積の形になっています.
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【循環数列の和】
(解説)循環数列の和の公式というものを示すことはできませんが,等比数列の和を求めるときに使った方法,すまわち
【例7】
「S−rSを作る」とr≠1のとき S=1+2r+3r2+4r3+……+nrn−1 の和を求めたいとき S=1+2r+3r2+4r3+……+nrn−1 − ) rS=r+2r2+3r3+……+(n−1)rn−1+nrn S−rS=1 +r +r2 +r3+ …… +rn−1−nrn となって,中間項が消えるわけではないが,等比数列になります. そこで,その部分を等比数列の和の公式で求めると,全体の和が求まることになります. S−rS=1 +r +r2 +r3+ …… +rn−1−nrn (1−r)S=n −nr …(答)
## ビックリ答案 ##
【例7】のような問題に対して,公比 として等比数列の和の公式を使うことはできません. そもそも,等比数列と言えるためには,比が一定の「定数」,すなわち「項の番号に依存しない定数」として「どの2項間にも共通の定数」でなければならないのに, というようにnに応じて変化していくような比率になっていると等比数列ではなく,その和の公式も使えません. しかし,実際には多くの生徒がこの間違いをやってしまいます. |
【例8】
「S−rSを作る」とr≠1のとき S=2+6r+12r2+……+n(n+1)rn−1 の和を求めたいとき S=2+6r+12r2+……+n(n+1)rn−1 − ) rS=2r+6r2+12r3+……+(n−1)nrn−1+n(n+1)rn S−rS=2+4r+6r2+ …… +2nrn−1−n(n+1)rn となって,中間項が消えるわけではないが,中間項が【例7】で求めた(等差)×(等比)の形になります. そこで,もう一度T=S−rSとおいて,T−rTを求めるとよいことになります. T=2+4r+6r2+……+2nrn−1−n(n+1)rn − ) rT=2r+4r2+6r3+……+2nrn−n(n+1)rn+1 T−rT=2+2r+2r2+ ……+2rn−1 −2nrn−n(n+1)rn+n(n+1)rn+1 (1−r)T=−n(n+3)rn+n(n+1)rn+1 …(答) ※一般に(1次式)×(等比形)の和は1回のS−rSで等比形になります.(2次式)×(等比形)の和は2回のS−rSで等比形になります. 3次以上の多項式が含まれる場合でも,理屈の上では上記の方法で求められますが,定期試験や入学試験に出題されることはないでしょう.なぜなら,そのような問題を出題すると,その問題だけで1時間近く消費してしまうことになり,他の問題を解く時間が無くなってしまうからです. |
【問題3】
(1)
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次の和を求めてください. 1+3r+5r2+······+(2n−1)rn−1
S=1+3r+5r2……+(2n−1)rn−1
とおく S=1+3r+5r2……+(2n−1)rn−1 −) rS=r+3r2+5r3……+(2n−1)rn S−rS=1+2r+2r2+2r3……+2rn−1−(2n−1)rn ここで,2r+2r2+2r3……+2rn−1は,初項2r,公比r,項数n−1の等比数列の和だから 1) r≠1のとき …(答) 2) r=1のとき S=1+3+5+······+(2n−1) は,初項1,公差2,項数nの等差数列の和だから …(答) |
(2)
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x≠0のとき,次の和を求めてください. ここで, は,初項1,公比 ,項数2nの等比数列の和だから 1) x≠−1のとき …(答)
この結果は【例7】の結果で,rに を,nに2nを代入しても得られます.
2) x=−1のときS=1+2+3+4+······+2n は,初項1,公差1,項数2nの等差数列の和だから …(答) |
== 数学Vで分数関数の微分を習っている場合の別解 == 次の関数(次々と子供を生み出せるすごい関数で,母関数または生成関数と呼ばれる)を考えます. …(1) (1)の両辺をrで微分すると …(2) (2)が【例7】の問題ですが,(1)は等比数列の和だから簡単に求めることができます.したがって,その和を微分すると(2)になるはずです. (1)→ 分数関数の微分法により この式を整理すると になります. しかし,分数関数の微分法でも,【例8】の問題になるととても煩雑になり,あまりうれしくありません. …(1) (1)の両辺をrで微分すると …(2) さらに(2)の両辺をrで微分すると …(3) (3)が求めるものだから(1)で和を求めて2回微分すればよい. (途中経過は長過ぎて書き切れませんが,結果は【例8】と一致します) |
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