【等差数列の定義1】
隣り合う2項の差が一定の定数である数列を等差数列といいます
2項の差は,後ろの項から前の項を引いたものとします
差が等しいから「等差」数列と考えるとよい 等差数列の隣り合う2項の差を公差といいます
【例1】
(解説)数列1, 3, 5, 7,…… は等差数列です. 隣り合う2項の差は
3−1=2
とすべて同じ定数2になっています.公差は2です.5−3=2 7−5=2 ……
【例2】
(解説)数列20, 17, 14, 11,…… は等差数列です. 隣り合う2項の差は
17−20=−3
とすべて同じ定数−3になっています.公差は−3です.
14−17=−3 11−14=−3 ……
## ビックリ答案 ##
隣り合う2項の差が一定の規則で成り立っているだけでは,等差数列とは言えません. 等差数列と言えるためには,差が一定の「定数」,すなわち「項の番号に依存しない定数」として「どの2項間にも共通の定数」でなければなりません. めったにないことですが, 右のような数列を「公差」nの等差数列だ!などと考えてはいけません. 2項間の差が「項の番号nに依存して変化する」ような数列は等差数列とは言いません. |
等差数列は,初項(第1項)に公差となる定数を次々に加えていくと得られます.そこで,多くの教科書では,等差数列を次のように定義しています.
【等差数列の定義2】
初項aに定数dを次々に加えて得られる数列を等差数列といい,その定数dを公差という.
【例1’ 】(再掲)
(解説)数列1, 3, 5, 7,…… は等差数列です. 初項1に公差2を次々に加えて得られる数列となっています.
1+2=3
3+2=5 5+2=7 ……
【例2’ 】(再掲)
(解説)数列20, 17, 14, 11,…… は等差数列です. 初項20に公差−3を次々に加えて得られる数列となっています.
20+(−3)=17
17+(−3)=14 14+(−3)=11 …… |
【等差数列の一般項の公式】
(解説)
初項a,公差dの等差数列の一般項anは an=a+(n−1)d a2=a+1d a3=a+2d a4=a+3d このように,初項に公差dを項の番号nよりも1つ少ないn−1回加えると第n項anが得られます. an=a+(n−1)d |
【例1” 】(再掲)
(解説)等差数列1, 3, 5, 7,…… の一般項anをnの式で表してください. 初項a=1,公差d=2だから an=1+2(n−1)=2n−1…(答)
【例2” 】(再掲)
(解説)等差数列20, 17, 14, 11,…… の一般項anをnの式で表してください. 初項a=20,公差d=−3だから an=20+(−3)(n−1)=23−3n…(答) |
【問題1】 選択肢の中から正しいものを1つクリック
(1)
初項3,公差4の等差数列の一般項anをnの式で表してください. |
(2)
等差数列anの第3項が12,第7項が24であるとき,この数列の初項aと公差dを求めてください.
初項aと公差dとすると
a3=a+2d=12…@ a7=a+6d=24…A a, dを未知数として,この連立方程式を解く. Aから@を辺々引くと 4d=12 d=3 これを@に代入すると a+6=12 a=6 ゆえに,a=6, d=3 …(答) |
(3)
等差数列101, 94, 87,…… で初めて負の数になるのは第何項か.
初項a=101,公差d=−7の等差数列の一般項は
an=101+(n−1)×(−7)=108−7n このとき an<0 となる正の整数nの値の範囲を求めると 108−7n<0 より nは整数だから,n≧16 第16項…(答) |
(4)
a, b, cをこの順に並べて等差数列をなしている場合,bはaとcの等差中項であるという. 3と15の等差中項を求めてください.
求める等差中項をx,公差をdとおくと
x−3=15−x(=d) が成り立つ 2x=18 x=9…(答)
(参考)
上記の答案は,d=6の場合を想定した答案ですが,3, 9, 15の順(d=6)に並べても,15, 9, 3の順(d=−6)に並べても等差数列になります. |
(5)
数列の各項の逆数が等差数列をなすとき,元の数列は調和数列をなすといいます. 例えば,数列 …(A) の逆数から成る数列は …(B) となり,(B)は公差1の等差数列です.したがって,(A)は調和数列です. 次の数列が調和数列をなすとき,xの値を求めてください. 6, x, 12 |
(6)
等差数列anの第3項が18,第9項が48であるとき,この数列の一般項anを求めてください.
初項aと公差dとすると
a3=a+2d=18…@ a9=a+8d=48…A a, dを未知数として,この連立方程式を解く. Aから@を辺々引くと 6d=30 d=5 これを@に代入すると a=8 ゆえに,an=8+(n−1)×5=5n+3 …(答) |
【等差数列の和の公式】
(解説)
(A) 初項a,末項l,項数nの等差数列の初項から末項までの和Snは (B) 初項a,公差d,項数nの等差数列の初項から第n項までの和Snは ※どちらも アン(a, n)は必須 デル(d, l)は1つ選びます.
≪逸話:少年ガウスの方法≫
ガウス(ドイツの大数学者1776〜1855)が少年の頃,小学校の先生が 1+2+3+4+5+…100 を計算しなさいと言って,しばらく誰もできないだろうと考えていたら,少年ガウスは直ちに正解を出した. 彼は,右図のように逆順に足したものと組み合わせると,縦の和がいずれも101になることから S=(101×100)÷2=5050 と直ちに答えたと言われている. |
(A)の公式は,少年ガウスの方法そのものです. 求めたい和Sと,逆順に加えた和Sの2つ用意します. ←----------- 項数はn項 ----------→ S=a+(a+d)+(a+2d)+……+(l−d)+l + ) S=l+(l−d)+……+(a+2d)+(a+d)+a 2S=(a+l)× n 2で割ると (B)の公式は,末項lが書かれていなくて,初項a,公差d,項数nが分かっているときに使います. 初項a,公差dの等差数列の第n項(ここでは末項l)は an=l=a+(n−1)d だから,このlを上記の(A)に代入すると |
【例3】
(解説)次の等差数列の和を求めてください. 100, 101, 102,……, 199, 200 初項a=100,末項l=200
項数nは,幅(ロープ)が200−100=100のときの植木の本数だから,101項になることに注意しましょう.
項数n=101だから…(答)
【例4】
(解説)初項50,公差−3,項数10の等差数列の和を求めてください. a=50,d=−3,n=10を に代入します. …(答) |
【例5】
(解説)初項17,公差−3の等差数列において,初項から第何項までの和が最大になるか. 第n項までの和を で表すと これは上に凸(山形)の2次関数になるから,頂点に最も近い整数値nで最大となるはずである. 平方完成の変形をして,頂点を求めると y座標の詳しい分数計算をしなくても,37/6=6.16...の前後にある整数nで最大値をとることが分かる. n=6のとき, n=7のとき, ゆえに,第6項までの和が最大になる…(答) 初項は17であるが,公差が−3なので,項の値はだんだん減ってくる. 総和は,正の数を足す限り増えるが,負の数を足せば減るから, 項が正となる範囲だけ足せばよい. を解くと nは整数だからn≦6 ゆえに,第6項までの和が最大になる…(答) |
【例6】
(解説)1以上100以下の正の整数のうちで (1) 2で割り切れる数の和を求めてください. (2) 3で割り切れる数の和を求めてください. (3) 2でも3でも割り切れない数の和を求めてください. (1) 2で割り切れる数は,2,4,6,8,...,100で,公差2の等差数列をなす. an=2+2(n−1)=2nとおくと 1≦2n≦100により 1≦n≦50 項数50であるから,その和は …(答) (2) 3で割り切れる数は,3,6,9,...,99で,公差3の等差数列をなす. bn=3+3(n−1)=3nとおくと 1≦3n≦100により 1≦n≦33 項数33であるから,その和は …(答) |
(3) 2でも3でも割り切れない数は,1,5,7,9,11,...となっているから等差数列ではない. しかし,右図において,2でも3でも割り切れる数(6で割り切れる数)は,6,12,18,24,...,96となり,公差6の等差数列をなす. そこで,A:2で割り切れる数,B:3で割り切れる数,C=A∩B:6で割り切れる数としたときに,求めるものは, 全体の和S(U)からS(A∪B)=S(A)+S(B)−S(A∩B)を引けば求められる. 6で割り切れる数は,6,12,18,...,96で,公差6の等差数列をなす. cn=6+6(n−1)=6nとおくと 1≦6n≦100により 1≦n≦16 項数16であるから,その和は したがって,2または3で割り切れる数の和は 1以上100以下の正の整数の和は 求めるものは …(答) |
【問題2】 選択肢の中から正しいものを1つクリック
(1)
次の等差数列の和を求めてください. 7, 15, 23, ……, 79, 87
(2)
初項10,公差12,項数14の等差数列の和を求めてください.
(3)
初項−50,公差7の等差数列において,初項から第何項までの和が最小になるか.
初項は−50であるが,公差が7なので,項の値はだんだん増えてくる.
総和は,負の数を足す限り減るが,正の数を足せば増えるから,項の値が負の数となる範囲だけ足せばよい. を解くと nは整数だからn≦8 ゆえに,第8項までの和が最小になる…(答) |
(4)
1以上100以下の正の整数のうちで,5でも7でも割り切れない数の和を求めてください.
5でも7でも割り切れない数は,1,2,3,4,6,8,9,...となっているから等差数列ではない.
しかし,5でも7でも割り切れる数(35で割り切れる数)は,35,70,...となり,公差35の等差数列をなす. そこで,A:5で割り切れる数,B:7で割り切れる数,C=A∩B:35で割り切れる数としたときに,求めるものは, 全体の和S(U)からS(A∪B)=S(A)+S(B)−S(A∩B)を引けば求められる. 35で割り切れる数は,35,70 その和は 5で割り切れる数は,5,10,15,...,100で,公差5の等差数列をなす. an=5nとおくと 1≦5n≦100により 1≦n≦20 項数20であるから,その和は …(答) 7で割り切れる数は,7,14,21,...で,公差7の等差数列をなす. bn=7nとおくと 1≦7n≦100により 1≦n≦14 項数14であるから,その和は …(答) S(A∪B)=S(A)+S(B)−S(A∩B)は 1+2+3+...+100=5050だから,求めるものは …(答) |