■不等式の証明2 高校で登場する絶対不等式の多くは,次の性質を利用したものです.
【実数の平方の性質】
実数aについて
(解説)a2≧0が成り立つ. …(1) (等号=が成り立つのはa=0のとき) 正の数であっても,負の数であっても2乗(平方)すると正の数になります.(正×正=正,負×負=正だから) このことを利用すると,不等式を証明することができます.ただし,0の2乗は0になり,逆に2乗が0になるのは元の数が0である場合に限ります. 基本は上記の1つですが,応用形はいろいろあります.考えれば当然のことで,特に証明なしに使うことができます.
a2+b2≧0 …(2)
(等号が成立するのはa=0かつb=0のときに限る)
a2+(正の数)>0 …(3)(等号がない.=0となることはなく,正の値のみとることに注意)
(正の数)×a2≧0 …(4)(等号が成立するのはa=0のときに限る)
(正の数)×a2+(正の数)×b2≧0 …(5)(等号が成立するのはa=b=0のときに限る)
(負の数)×a2≦0 …(6)(等号が成立するのはa=0のときに限る)
(負の数)×a2+(負の数)×b2≦0 …(7)
(等号が成立するのはa=0かつb=0のときに限る)
(負の数)×a2+(負の数)<0 …(8)(等号がない.=0となることはなく,負の値のみとることに注意)
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この頁では「絶対不等式」を多く扱います.
他の頁で扱った不等式は条件付き不等式と呼ばれ,何らかの条件(仮定)のもとに成り立つもので,条件(仮定)を変形して(使って)不等式を証明します. これに対して,絶対不等式は何も条件がなくても成立する不等式で,利用すべき条件(仮定)がありません.・・・実際には,登場する文字がすべて実数の場合ということが条件になりますが「この単元を習うときには,通常,複素数を習っていないため文字が実数という条件はないのと同じ」「一般に,とくに断りがなければ,不等式で用いられる文字は実数だと考えてよい」ので,文字がどんな実数であっても成り立つ不等式ということになります. ![]() |
実数の平方の性質を使って不等式を証明するには
平方完成の変形 ⇒ ( )2の形を作ること
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【例1】 ←上記(1)の例
(解答)また,等号が成り立つ場合を調べてください.
【例2】 ←上記(2)の例
(解答)また,等号が成り立つ場合を調べてください.
x2+y2−2(x+y−1)
=x2+y2−2x−2y+2 =x2−2x+1+y2−2y+1 =(x−1)2+(y−1)2≧0 (等号が成り立つのは,x−1=0かつy−1=0すなわちx=y=1のとき)
【例3】 ←上記(3)の例
(解答)=x2−2x+5 =(x−1)2−12+5 ←2の半分の1を持ってくる
【例4】 ←上記(5)の例
(解答)また,等号が成り立つ場合を調べてください.
【例5】 ←上記(8)の例
(解答)−2x2+3x−2<0となることを証明してください.
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【問1】
(解答)…空欄に入るものを右の欄から選んでください.不等式a2−2a+9≧8a−16が成り立つことを証明してください.また,等号が成り立つ場合を調べてください.
【問2】
(解答)…空欄に入るものを右の欄から選んでください.不等式x2+y2≧4(2y−x−5)が成り立つことを証明してください.また,等号が成り立つ場合を調べてください.
【問3】
(解答)…空欄に入るものを右の欄から選んでください.不等式x2+5>4xが成り立つことを証明してください.
【問4】
(解答)…空欄に入るものを右の欄から選んでください.不等式x2+4xy+7y2−6y+3≧0が成り立つことを証明してください.また,等号が成り立つ場合を調べてください.
【問5】
(解答)…空欄に入るものを右の欄から選んでください.不等式−3x2+6x−5<0が成り立つことを証明してください.
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※ (補足説明)2文字x, yについての平方完成の仕方![]()
○2つの文字の積xyの項がないとき
【例6】⇒ xの項,yの項に分けて,それぞれ平方完成するとよい.定数項は最後にxの項,yの項から出てくる定数項と合わせて差し引き計算する.
x2+y2−4x+6y+13
【例7】=(x2−4x)+(y2+6y)+13 ={(x−2)2−4}+{(y+3)2−9}+13 =(x−2)2−4+(y+3)2−9+13 =(x−2)2+(y+3)2≧0 等号が成立するのはx−2=0かつy+3=0 すなわちx=2かつy=−3のとき
2x2+3y2+4x−6y+6
=(2x2+4x)+(3y2−6y)+6 =2(x2+2x)+3(y2−2y)+6 =2{(x+1)2−1}+3{(y−1)2−1}+6 =2(x+1)2−2+3(y−1)2−3+6 =2(x+1)2+3(y−1)2+1>0
○2つの文字の積xyの項があるとき
【例8】⇒ (1) はじめに全体をxについて整理し,平方完成する. (xについて整理するとはyは定数・係数と見なすということ) ⇒ (2) 次に,残りの部分についてyについて平方完成する.
x2−4xy+5y2
【例9】=x2−4yx+5y2
(1) xについて整理するときはyと定数は両方とも係数とみなす⇒−4yがxの係数
=(x−2y)2−(2y)2+5y2
xの係数−4yの半分は−2y
=(x−2y)2+y2≧0
( )2+[ ]2=0となるのは( )=0かつ[ ]=0のとき
等号が成立するのはx−2y=0かつy=0すなわちx=0かつy=0のとき
x2+2y2+2xy+2x+8y+10
=x2+2(y+1)x+2y2+8y+10
(1) この変形が重要.yと定数は両方とも係数とみなすので,2y+2=2(y+1)を「団体さんお着き!」という形でxの係数にしなければならない.分けてしまうとできなくなる.
={x+(y+1)}2−(y+1)2+2y2+8y+10
y+1は「団体さんお着き!」
={x+y+1}2+y2+6y+9
(2) xについて平方完成ができたら,今度は残りの部分についてyについて平方完成する.この計算は1文字について今までに慣れている計算になる.
={x+y+1}2+(y+3)2≧0
( )2+[ ]2=0となるのは( )=0かつ[ ]=0のとき
等号が成立するのはx+y+1=0かつy+3=0すなわちx=2かつy=−3のとき |
【問6】
(解答)…空欄に入るものを右の欄から選んでください.不等式x2+y2+20≧4(2x−y)が成り立つことを証明してください.また,等号が成り立つ場合を調べてください.
【問7】
(解答)…空欄に入るものを右の欄から選んでください.不等式x2+y2≧xyが成り立つことを証明してください.また,等号が成り立つ場合を調べてください.
【問8】
(解答)…空欄に入るものを右の欄から選んでください.不等式x2+4xy+6y2+2x+3≧0が成り立つことを証明してください.また,等号が成り立つ場合を調べてください.
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