== 数学的帰納法のいろいろな問題 ==(問題と答案)
 このページは数学的帰納法による証明問題として,よく登場するものを一覧表的に整理したものです.
 自分で解く場合は,問題の全部を解く必要はなく,「これは?」と気になる項目を解けばよいでしょう.
 各々の式をクリックすれば,答案にジャンプできます.(ファイルが大きいので,数式を展開するのに数分かかる[リンク先がしばらく出ない]場合があります)
数列の和:等式の証明
〇 nが自然数であるとき,次の等式が成り立つことを証明せよ.
(A1)
(A2)
(A3)
(A4)
(A5)
(A6)
(A7)
一般に,このような階段状の積の和は,1次高い階段状の積で表されます.




(A8)

(A9)

(A10)

(A11)
一般に,このような階段状の積の逆数(分数)の和は,次のようになる.




(A12)
(A13)
一般に,x≠1のとき

が成り立つ.
上記は,この式において,を代入した場合となっている.
他の例として,x=3の場合は

となる.

(A14)

不等式の証明
〇 nが自然数であるとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.
(B1)
(B2)
(B3)
(B4)
(B5) a>0, b>0のとき,
〇 nが2以上の自然数であるとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.
(B6)
(B7)
(B8)
以下の問題も,ほぼ同様に証明できる.
〇 nが3以上の自然数であるとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.


〇 nが4以上の自然数であるとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.

〇 nが5以上の自然数であるとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.
(B9)
〇 nが10以上の自然数であるとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.
(B10)
〇 nが2以上の自然数であるとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.
(B11)(ただし,h>とする)
(B12)(ただし,h>とする)

漸化式と数学的帰納法
(C1)
数列で定める.
(1)を求めよ.また,それにより一般項を推定せよ.
(2) 数学的帰納法により(1)の一般項の推定が正しいことを証明せよ.(以下略)
(2014年度岐阜大入試問題)
(C2)
数列を満たしている.次の問いに答えよ.
(1)を求めよ.
(2) 一般項を推定し,それが正しいことを数学的帰納法により証明せよ.(以下略)
(2011年度岡山県立大入試問題)
図形問題の証明
(D1)
nが4以上の自然数であるとき,凸n角形の対角線の総数は,に等しいことを数学的帰納法で証明せよ.

(D2)
平面上にn本の直線があり,どの2本も平行でなく,どの3本も同一の点を通らないとする.このとき,これらn本の直線によって,平面は個の領域に分けられることを数学的帰納法で証明せよ.

降順の証明
(E1) ak>0 (1≦k≦7)のとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.

(E2) m, nが自然数で,のとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.

pならばqの証明
(F1) nが自然数,a, bが整数でであるならば,となることを証明せよ.
(F2) nが自然数,a, bが整数でであるならば,となることを証明せよ.
整数問題の証明
の形で証明するもの≫
nが自然数であるとき,次の式の値が整数になることを証明せよ.
(G1)
(G2)
(G3)で定義される数列(フィボナッチ数列)の一般項は

となることを証明せよ.

≪倍数の証明≫
(G4) すべての自然数nについて,は4の倍数である.このことを,数学的帰納法を用いて示せ.
(2016年度愛知教育大入試問題)
(G5) すべての自然数nについて,は11の倍数である.このことを,数学的帰納法を用いて示せ.
(2016年度愛知教育大入試問題)
(G6) nを自然数とするときは28で割り切れることを示せ.
(2005年度東京女子大入試問題)

(A1)
[証明]
(T) n=1のとき,(左辺)=1,(右辺)だから(A1)は成立する.
(U) n=kのとき(A1)が成り立つと仮定すると,
…(*)
(*)の両辺にk+1を加えると

…(**)
(**)はn=k+1のときも(A1)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(A1)が成り立つ.
(A2)
[証明]
(T) n=1のとき,(左辺)=1,(右辺)=12=1だから(A2)は成立する.
(U) n=kのとき(A2)が成り立つと仮定すると,
…(*)
(*)の両辺に2k+1を加えると

…(**)
(**)はn=2k+1のときも(A2)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(A2)が成り立つ.
(A3)
[証明]
(T) n=1のとき,(左辺)=12=1
(右辺)だから(A3)は成立する.
(U) n=kのとき(A3)が成り立つと仮定すると,
…(*)
(*)の両辺にを加えると






…(**)
(**)はn=k+1のときも(A3)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(A3)が成り立つ.

(A4)
[証明]
(T) n=1のとき,(左辺)=12=1
(右辺)だから(A4)は成立する.
(U) n=kのとき(A4)が成り立つと仮定すると,
…(*)
(*)の両辺にを加えると






…(**)
(**)はn=k+1のときも(A4)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(A4)が成り立つ.
(A5)
[証明]
(T) n=1のとき,(左辺)
  (右辺)だから(A5)は成立する.
(U) n=kのとき(A5)が成り立つと仮定すると,
…(*)
(*)の両辺にを加えると




…(**)
(**)はn=k+1のときも(A5)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(A5)が成り立つ.
 (参考)
(A3)
の結果が使える場合は,(A5)は次のようにして導ける.
…(*1)

…(*2)
(*1)−2×(*2) (←偶数番目を2回引く)






(A6)
[証明]
(T) n=1のとき,(左辺)
  (右辺)だから(A6)は成立する.
(U) n=kのとき(A6)が成り立つと仮定すると,
…(*)
(*)の両辺にを加えると





…(**)
(**)はn=k+1のときも(A6)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(A6)が成り立つ.
(A7)
[証明]
(T) n=1のとき,(左辺)=1·2=2
 (右辺)だから(A7)は成立する.
(U) n=kのとき(A7)が成り立つと仮定すると,
 …(*)
(*)の両辺に(k+1)(k+2)を加えると




…(**)
(**)はn=k+1のときも(A7)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(A7)が成り立つ.

(A8)
[証明]
(T) n=1のとき,(左辺)=1·2=2
(右辺)だから(A8)は成立する.
(U) n=kのとき(A8)が成り立つと仮定すると,
…(*)
(*)の両辺にを加えると






…(**)
(**)はn=k+1のときも(A8)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(A8)が成り立つ.
(A9)
[証明]
(T) n=1のとき,(左辺)
  (右辺)だから(A9)は成立する.
(U) n=kのとき(A9)が成り立つと仮定すると,

…(*)
(*)の両辺に(2k+1)(2k+2)をかけて,(k+1)で割ると


…(**)
(**)はn=k+1のときも(A9)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(A9)が成り立つ.

(A10)
[証明]
(T) n=1のとき,(左辺)
(右辺)だから(A10)は成立する.
(U) n=kのとき(A10)が成り立つと仮定すると,

…(*)
(*)の両辺にを加えると



…(**)
(**)はn=k+1のときも(A10)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(A10)が成り立つ.
(A11)
[証明]
(T) n=1のとき,(左辺)
  (右辺)だから(A11)は成立する.
(U) n=kのとき(A11)が成り立つと仮定すると,
…(*)
(*)の両辺にを加えると


…(**)
(**)はn=k+1のときも(A11)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(A11)が成り立つ.

(A12)

[証明]
(T) n=1のとき,(左辺)
 (右辺)だから(A12)は成立する.
(U) n=kのとき(A12)が成り立つと仮定すると,
…(*)
(*)の両辺にを加えると



…(**)
(**)はn=k+1のときも(A12)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(A12)が成り立つ.
(A13)
[証明]
(T) n=1のとき,(左辺)
 (右辺)だから(A13)は成立する.
(U) n=kのとき(A13)が成り立つと仮定すると,
 …(*)
(*)の両辺にを加えると

…(**)
(**)はn=k+1のときも(A13)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(A13)が成り立つ.

(A14)

[証明]
(T) n=1のとき,(左辺)
 (右辺)だから(A14)は成立する.
(U) n=kのとき(A14)が成り立つと仮定すると,
 …(*)
(*)の両辺にを加えると



…(**)
(**)はn=k+1のときも(A14)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(A14)が成り立つ.
(B1)
〇 nが自然数であるとき,

[証明]
(T) n=1のとき,(左辺)=1
 (右辺)だから(B1)は成立する.
(U) n=kのとき(B1)が成り立つと仮定すると,
 …(*)
(*)の両辺にを加えると
 

(*?)は次のように証明できる.


したがって
…(**)
(**)はn=k+1のときも(B1)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(B1)が成り立つ.
不等式は「左辺を変形しても右辺にはならない」から,(*?)のように「言いたいこと」を設定して,「引き算が正になる」ことを別途示すというスタイルにするとよい.

(B2)
〇 nが自然数であるとき,

[証明1]
次の証明は,数学的帰納法による証明ではないが,,(B1)の結果を利用すれば,次のように示せる.
 
の両辺にを掛けると



のような,教科書に出ている公式は,それ自体の証明が問題である場合を除けば,黙って使える.
[証明2]
次の証明も,数学的帰納法による証明ではないが,スマートに決まる.
(相加平均)≧(相乗平均)の関係から


両辺とも正であるから,辺々掛けると

したがって

n個の場合の相加,相乗の関係は,教科書に書いてないから,黙って使うと少し減点されることがある.
[証明3]
「数学的帰納法を用いて証明せよ」と解き方が指定されている場合は,それに従う他ない.
(T) n=1のとき,(左辺)=1×1=1
(右辺)だから(B2)は成立する.
(U) n=kのとき(B2)が成り立つと仮定すると,
…(*)
n=k+1の場合を考えると







とおく
ここで,(相加平均)≧(相乗平均)の関係より




だから
…(**)
(**)はn=k+1のときも(B2)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(B2)が成り立つ.

(B3)
〇 nが自然数であるとき,

(T) n=1のとき,(左辺)
(右辺)=1だから(B3)は成立する.
(U) n=k (k≧1)のとき(B3)が成り立つと仮定すると,
 …(*)
(*)の両辺に2をかけると

(*?)は次のように示せる.

したがって,
…(**)
(**)はn=k+1のときも(B3)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(B3)が成り立つ.
(B4)
〇 nが自然数であるとき,

(T) n=1のとき,(左辺)=1
 (右辺)だから(B4)は成立する.
(U) n=k (k≧1)のとき(B4)が成り立つと仮定すると,
…(*)
(*)の両辺にを加えると


(*?)は次のように示せる.


したがって,

…(**)
(**)はn=k+1のときも(B4)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(B4)が成り立つ.

(B5)
〇 nが自然数であるとき,
a>0, b>0のとき,
(T) n=1のとき,(左辺)(右辺)だから(B5)は成立する.
(U) n=k (k≧1)のとき(B5)が成り立つと仮定すると,
 …(*)
(*)の両辺にをかけると

ここで
 
を証明する.(*?)の部分は





とおく
a≧bのとき,だからA≧0
a<bのとき,だからA>0
したがって,つねにA≧0…(**)
(**)はn=k+1のときも(B5)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(B5)が成り立つ.
左辺からそろえる証明がほとんどであるが,この問題では右辺からそろえる.考えたらわかる.
(B6)
〇 nが2以上の自然数であるとき,
(T) n=2のとき,(左辺)
 (右辺)だから(B6)は成立する.
(U) n=k (k≧2)のとき(B6)が成り立つと仮定すると,
…(*)
(*)の両辺にを加えると

ここで

を証明する.





(*?)が成立するから
…(**)が成立する.
(**)はn=k+1のときも(B6)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,2以上のすべての自然数nについて(B6)が成り立つ.

(B7)
〇 nが2以上の自然数であるとき,
(T) n=2のとき,(左辺)
 (右辺)だから(B7)は成立する.
(U) n=k (k≧2)のとき(B7)が成り立つと仮定すると,
 …(*)
(*)の両辺に2をかけると
…(**)が成立する.
(**)はn=k+1のときも(B7)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,2以上のすべての自然数nについて(B7)が成り立つ.
(B8)
〇 nが2以上の自然数であるとき,
(T) n=2のとき
 (左辺)

 (右辺)だから(B8)は成立する.
(U) n=k (k≧2)のとき(B8)が成り立つと仮定すると,
 …(*)
(*)の両辺に3をかけると

ここで

を証明する.


だから(*?)が成り立つ.したがって
…(**)が成立する.
(**)はn=k+1のときも(B8)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,2以上のすべての自然数nについて(B8)が成り立つ.

(B9)
〇 nが5以上の自然数であるとき,
(T) n=5のとき
 (左辺)

 (右辺)だから(B9)は成立する.
(U) n=k (k≧5)のとき(B9)が成り立つと仮定すると,
 …(*)
(*)の両辺に2を掛けると

ここで,…を証明する.

 (∵k≧5)
(*?)により,…(**)が成立する.
(**)はn=k+1のときも(B9)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,5以上のすべての自然数nについて(B9)が成り立つ.
(B10)
〇 nが10以上の自然数であるとき,
(T) n=10のとき
 (左辺)
 (右辺)だから(B10)は成立する.
(U) n=k (k≧10)のとき(B10)が成り立つと仮定すると,
 …(*)
(*)の両辺に2をかけると

ここで,を証明する.

とおくと

 (∵k≧10)
 したがって,f(x)k≧10において単調増加
また,
したがって,k≧10においてf(x)>0…(*?)が成り立つ
※以上は,微分を使った証明であるが,微分をまだ習っていない場合は,次のように示すことができる.
正の数の大小は比によって調べることができる.すなわち,a, b>0のとき,ならばa>bであると言える.
2つの正の数について

において,k≧10のとき,

であるから

(*?)により,…(**)が成立する.
(**)はn=k+1のときも(B10)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,10以上のすべての自然数nについて(B10)が成り立つ.

(B11)
○ nが2以上の自然数であるとき,(ただし,h>0とする)
(T) n=2のとき
 (左辺)
 (右辺)だから(B11)は成立する.
(U) n=k (k≧2)のとき(B11)が成り立つと仮定すると,
…(*)
(*)の両辺にをかけると

…(**)が成立する.
(**)はn=k+1のときも(B11)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,2以上のすべての自然数nについて(B11)が成り立つ.
(B12)
○ nが2以上の自然数であるとき,(ただし,h>0とする)
(T) n=2のとき
 (左辺)
 (右辺)だから(B12)は成立する.
(U) n=k (k≧2)のとき(B12)が成り立つと仮定すると,
…(*)
(*)の両辺にをかけると

…(**)が成立する.
(**)はn=k+1のときも(B12)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,2以上のすべての自然数nについて(B12)が成り立つ.
(C1)
 数列 {an}
で定める.
(1)を求めよ.また,それより一般項anを推定せよ.
(2) 数学的帰納法により(1)の一般項の推定が正しいことを証明せよ.(以下略)
(2014年度岐阜大入試問題)
(1)
n123456
an
左の表から
…(*1)
と推定する.
(2)
(T) n=1のとき,
だから(*1)は成立する.
(U) n=kのとき(*1)が成り立つと仮定すると,
…(*)

…(**)が成立する.
(**)はn=k+1のときも(*1)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(*1)が成り立つ.

(C2)
数列 {an}を満たしている.次の問いに答えよ.
(1)を求めよ.
(2) 一般項anを推定し,それが正しいことを数学的帰納法により証明せよ.(以下略)
(2011年度岡山県立大入試問題)
(1)


(2)

n123
an
左の表から
…(*1)
と推定する.
(T) n=1のとき,だから(*1)は成立する.
(U) n=kのとき(*1)が成り立つと仮定すると,
…(*)
…(**)
が成立する.
(**)はn=k+1のときも(*1)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(*1)が成り立つ.
(D1)
 nが4以上の自然数であるとき,凸n角形の対角線の総数は,に等しいことを数学的帰納法で証明せよ.
(T) n=4のとき,4角形の対角線は2本であるから,に等しい.
(U) n=kのとき対角線の総数が
…(*)
に等しいと仮定する.
1 2 ... k k+1
 この図形にk+1番目の頂点を追加して,k+1角形にすると
ア)右図の赤実線で示したように,k+1番目の頂点からこれに隣り合わないk−2個の頂点に引いた線分が対角線として増える.
イ)右図の赤破線で示したように,k角形のときに辺に数えていたもの1本がk+1角形では対角線に入る.
以上のア)イ)から,k+1角形の対角線の総数は


…(**)
に等しい.
(**)はn=k+1のときも(*)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,4以上の自然数nについて(*)が成り立つ.
組合せを使って求める場合は,n個の頂点を結ぶ線分の総数のうちで辺となるものn本を引くと

となることが分かる.

(D2)
 平面上にn本の直線があり,どの2本も平行でなく,どの3本も同一の点を通らないとする.このとき,これらn本の直線によって,平面は個の領域に分けられることを数学的帰納法で証明せよ.
(T) n=1のとき,平面は2つの領域に分けられる.

に等しい.
(U) n=kのとき
…(*)
個の領域に分かれると仮定する.
1 ... k k+1
 この図形にk+1本目の直線を追加すると,どの2本も平行でなく,どの3本も同一の点を通らないことにより,初め描かれていたk本の直線と交わる.
 図の赤丸で示したk個の交点がk+1本目の直線上に並ぶから,植木算の考え方により,k+1本目の直線はk+1個の線分や半直線に分かれる.
 そのとき,各々向こう側とこちら側に領域が分かれるから,k+1本目の直線を引くことにより,領域の数はk+1個だけ増える.
 したがって,n=k+1のとき,領域の数は

…(**)
に等しい.
(**)はn=k+1のときも(*)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(*)が成り立つ.
(E1)
 のとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.
※数学的帰納法による証明では,ほとんどの場合,n=1のときなどから初めて,順次多い方に向かって攻めていく論証の形をとる.しかし,n=kのときの関係から1つ多いn=k+1のときの関係を導くのが難しいことがある.このような場合,多い方から降順に攻めてもすべての整数について成り立つことを示せる.
Aを変形して
Bを導くのは難しいが
Cを変形して
Bを導くのはやさしい.…(A)
また,AからC,CからGを導くのも容易である.
AからCは


CからGも同様に示せる.
 一般に個の正の数について(相加平均)≧(相乗平均)の関係を示すことができる.…(B)
 そこで,教科書に掲載されていて,黙って使えるAだけを前提として,大きな整数nの場合に(相加平均)≧(相乗平均)の関係を証明するには,適当に大きなから順に下がってもよい.
(B)については,上に示したので,C→Bの場合を例にとって(A)を示してみる.

において,変数は各々独立した自由な値をとれるから,たまたま,となる場合を考えてみると



両辺を4乗すると


両辺の3乗根をとると

 本題に戻って,G→Fの場合は
とおいてから,8乗して,7乗根をとると同様に証明できる.
 ※ここでは,話を簡単にするためにn=7の場合のみ取り上げたが,一般に与えられた自然数nよりもが大きくなるような数から降っていくとnに至るのは明らかであるから,どのような自然数nについても成り立つと言える.

(E2)
 m, nが自然数で,ak>0 (1≦k≦n)のとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.
初めにmについての数学的帰納法を用い,次にnについての数学的帰納法を用いると証明しやすい.nについての数学的帰納法は,降順に示すと簡単になる.
 初めに,すべての自然数mについて
…(*1)
が成り立つことを証明する.
(T)m=1のとき

だから,成立する.
(U)m=kのとき

が成り立つと仮定すれば

が成り立つ.ここで

を示す.





のとき
のとき
であるから,(*?)が成り立つ.
 したがって

 以上から,数学的帰納法によりすべての自然数mについて,(*1)が成り立つ.
 次に,すべての自然数nについて
…(*2)
が成り立つことを証明する.
(T)
n=1のとき
 (左辺),(右辺)であるから,成立する.
n=2のとき,(*1)により
 
が成り立つ.
(U)で成り立つことを示す.



 同様にすれば,で成り立つことが言える.
n=4の場合に
 
のときを考えると


右辺の第2項を左辺に移項すると


 このようにして,n=3のとき,成り立つことが示せる.
 同様にして,kよりも大きなのときから順次降順に示すことができる.
 以上により,すべての自然数nについて(*2)が成り立つ.

(F1) nが自然数,a, bが整数でであるならば,となることを証明せよ.
「Aのとき,PならばQ」ということをもう少しシンプルな表現にすると「AかつPならばQ」と考えればよい.
同様にして,「Aのとき,P(k)ならばQ(k)が成り立つとき,P(k+1)ならばQ(k+1)が成り立つことを証明せよ」とは「AかつP(k)かつQ(k)かつP(k+1)ならばQ(k+1)が成り立つことを証明せよ」と考えればよい.
要するに,Q(k+1)以外はすべて仮定してQ(k+1)を証明したらよい.
(T) n=1のとき
 だから,a=2, b=1
 このとき,だから,a=2, b=1だから(F1)は成立する.
(U) n=kのとき(F1)が成り立つと仮定すると,
 であるならば,
 …(*)
このとき,



…(**)が成立する.
(**)はn=k+1のときも(F1)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(F1)が成り立つ.
(F2) nが自然数,a, bが整数でであるならば,となることを証明せよ.
(T)
 n=1のとき,だから
a=3, b=2
 このとき,だから,a=3, b=2
だから(F2)は成立する.
(U)
 n=kのとき(F2)が成り立つと仮定すると,
であるならば,
…(*)
このとき,



…(**)が成立する.
(**)はn=k+1のときも(F2)が成り立つことを示している.
(T),(U)により,すべての自然数nについて(F2)が成り立つ.

(G1) nが自然数であるとき,次の式の値が整数になることを証明せよ.

(T) n=1のとき
 は整数である.
また,n=2のとき,
 
=34は整数である.
(U) n=k−1, k (k≧2)のとき
以下,簡単のために,とおく.このとき,A+B=6, AB=1である.
が整数であると仮定すると


ここで,は仮定により整数で,A+B, ABも整数であるから,も整数になる
(T),(U)により,すべての自然数nについて,
が整数になることが示された.
(G2) nが自然数であるとき,次の式の値が整数になることを証明せよ.
(T) n=1のとき,

は整数である.
また,n=2のとき,

は整数である.
(U) n=k−1, k (k≧2)のとき
以下,簡単のために,とおく.このとき,A+B=10, AB=1である.
が整数であると仮定すると


ここで,は仮定により整数で,A+B, ABも整数であるから,も整数になる
(T),(U)により,すべての自然数nについて,
が整数になることが示された.

(G3) で定義される数列(フィボナッチ数列)の一般項は

となることを証明せよ.

が漸化式を満たすことを証明する.
(T)
n=1のとき,

n=2のとき,

が成り立つ.
(U) n=k, k+1 (k≧1)のとき
以下,簡単のために,とおく.このとき,A+B=1, AB=−1である.

が成り立つと仮定する.


だから


ここで,A+B=1, AB=−1だから


したがって

が成り立つ.
(T),(U)により,すべての自然数nについて,

が漸化式を満たすことが示された.
(G4) すべての自然数nについて,は4の倍数である.このことを,数学的帰納法を用いて示せ.
(2016年度愛知教育大入試問題)
(T) n=1のとき,

は4の倍数である.
(U) n=kのとき
Nは整数)と仮定する.
このとき,差が4の倍数になることを示せばよい.


ここで,は奇数だから,は偶数
したがって,は4の倍数.
(T),(U)により,すべての自然数nについて,は4の倍数であることが示された.

(G5) すべての自然数nについて,は11の倍数である.このことを,数学的帰納法を用いて示せ.
(2016年度愛知教育大入試問題)
(T) n=1のとき,

は11の倍数である.
(U) n=kのとき
(Nは整数)と仮定する.
このとき,差が11の倍数になることを示せばよい.





は11の倍数である.
(T),(U)により,すべての自然数nについて,は11の倍数であることが示された.
(G6) nを自然数とするときは28で割り切れることを示せ.
(2005年度東京女子大入試問題)
(T) n=1のとき,

は28で割り切れる.
(U) n=kのとき
Nは整数)と仮定する.
このとき,差

が28の倍数になることを示せばよい.





は28の倍数である.
(T),(U)により,すべての自然数nについて,は28の倍数であることが示された.
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