== 自然数の累乗の逆数の和 ==
(リーマンのゼータ関数,バーゼル問題,フーリエ級数)
 このページでは,次のような級数の和を扱う.
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 これらを求めるために,次のフーリエ級数展開を利用する.
…[1]
鋸歯状波(三角波)
…[2]
方形波をf(x)とすると
…[3]
…[4]
…[5]
…[6]

(参考1)
これらは,リーマンのゼータ関数

において,sが正の整数であるときの値となっている.



(参考2)
 s=1のとき,級数の和(調和級数と呼ばれるもの)が無限大に発散することは,積分を用いて示すことができる.
 図のように,のグラフと柱状グラフを重ねて描くと,曲線の下にできる図形の面積よりも柱状図形の面積の方が大きくなります.




辺々加えたとき,左辺は1からn+1までの定積分でつながるから



ここでの極限をとると

だから
→@

 s>1のとき,のグラフの下に柱状グラフを描くと(0<x<1の部分の1だけは別に加える),有限の積分値よりも級数の和が小さく,級数は単調増加かつ上に有界となって,収束することが言える.







例えばs=2のとき

s=3のとき

 s>1のとき,このように収束することが示せるが,具体的にどのような値になるかということは,なかなか難しい.17世紀から18世紀に最初に研究された平方数の逆数の和

を求める問題は,これを研究したベルヌーイやオイラーが住んでいたスイスの都市バーゼルの名をとって「バーゼル問題」と呼ばれることがある.
(分数を足しているだけなのに,なぜが出てくるのか,とても不思議な結果になっており興味を持ってもらえるかもしれない)

1.三角関数の定積分(復習)
まず,三角関数の定積分について,次の式を確認しておきます.(m, nは正の整数)
…(1.1)
…(1.2)
…(1.3)
m≠nのとき
…(2.1)

←(1.2)から言える
m=nのとき
…(2.2)

←(1.2)から言える
m≠nのとき
…(2.3)

←(1.3)から言える
m=nのとき
…(2.4)

m≠nのとき
…(2.5)

←(1.3)から言える
m=nのとき
…(2.6)

【まとめ】
…(3.1)
m≠nのとき
…(3.2)
…(3.3)
m=nのとき
…(3.4)
…(3.5)
※覚え方は簡単:同じ関数の組合せ(次の図の対角成分)だけ残る.他は全部0

cos xcos 2xcos 3xsin xsin 2xsin 3x
cos xπ0000000
cos 2x0π000000
cos 3x00π00000
0000000
sin x0000π000
sin 2x00000π00
sin 3x000000π0
0000000

2.フーリエ係数の公式


のとき
…(4.1)
…(4.2)
…(4.3)

(証明)
(4.1)←

の両辺をの区間で積分すると
(左辺)=
(右辺)=

(1.1)により

(1.2)により

(1.3)により

だから,(右辺)=
これらが等しくなるためには,

※ただし,初めの定義で定数項をとおいていることに注意

(4.2)←

の両辺にを掛けての区間で積分すると
(左辺)=
(右辺)=

ここで,(1.3)により

(3.2)(3.4)により,m≠nのときは消えるから

(3.1)により

以上から,(右辺)=
(左辺)と(右辺)が等しくなるためには


(4.3)←

の両辺にを掛けての区間で積分すると
(左辺)=
(右辺)=

ここで,(1.2)により

(3.3)(3.5)により,m≠nのときは消えるから

(3.1)により

以上から,(右辺)=
(左辺)と(右辺)が等しくなるためには


※上記のようにして求めた(4.1)(4.2)(4.3)は

となるために係数が満たすべき必要条件となっています.一定の条件を満たす関数については,このようにして求めた係数により,実際に

が成り立つこと(十分条件も満たされること)は,「ディりクレーの定理」によって示されるが,この教材ではそこまで踏み込まないことにする

3.奇関数・偶関数の積分
後の計算を行うときに,奇関数・偶関数の積分に関する次の性質を使うと,計算の見通しがよく,計算が簡単になります.
L>0とする
(奇関数)…(5.1)
(偶関数)(偶関数)…(5.2)
(5.1の例)
xは奇関数

sin xは奇関数

(5.1の図解)
奇関数のグラフは原点対称なので,−L〜0までの積分と0〜Lまでの積分は符号が逆になり,全部足せば0になる.
(5.1の証明)
が奇関数であるとき,が成り立つ.
そこで
とおく置換積分を行うと




だから



(5.2の例)
x2は偶関数

cos xは偶関数

(5.2の図解)
偶関数のグラフはy軸対称(左右対称)なので,−L〜0までの積分と0〜Lまでの積分は同じになり,全体は右半分の2倍になる.
(5.2の証明)
が偶関数であるとき,が成り立つ.
そこで
とおく置換積分を行うと




だから



4.偶関数と奇関数の組合せ(まとめ)
(奇関数)×(奇関数)=(偶関数)…(6.1)
(奇関数)×(偶関数)=(奇関数)…(6.2)
(偶関数)×(偶関数)=(偶関数)…(6.3)
なお,奇関数を定数倍したものは奇関数,偶関数を定数倍したものは偶関数になる…(6.4)
(奇関数)±(奇関数)=(奇関数)…(6.5)
(奇関数)±(偶関数)→奇関数でも偶関数でもない…(6.6)
(偶関数)±(偶関数)=(偶関数)…(6.7)
なお,0以外の定数項は偶関数…(6.8)
※奇数,偶数の話(奇数×奇数=奇数,奇数×偶数=偶数,偶数×偶数=偶数)と混同しないように!
(6.1の例)
は偶関数
は偶関数
(6.1の証明)
を奇関数とすると
が成り立つ
このとき,これらの積によって定義される関数について


が成り立つから,は偶関数

(6.2の例)
は奇関数
は奇関数
(6.2の証明)
は奇関数,は偶関数とすると
が成り立つ
このとき,これらの積によって定義される関数について


が成り立つから,は奇関数
(6.3の例)
は偶関数
は偶関数
(6.3の証明)
は偶関数とすると
が成り立つ
このとき,これらの積によって定義される関数について

が成り立つから,は偶関数
(6.4の例)
は奇関数

は奇関数

(6.4の証明)
を奇関数とするとが成り立つ.は定数とする.
とおくと
となるから,は奇関数
を偶関数とするとが成り立つ.は定数とする.
とおくと
となるから,は偶関数
(6.5の例)
は奇関数
は奇関数
(6.5の証明)
を奇関数とするとが成り立つ.
とおくと


となるから,は奇関数 についても同様に示される

(6.6の例)
は奇関数でも偶関数でもない
が,つねにまたはに等しい訳ではない
は奇関数でも偶関数でもない
が,つねにまたはに等しい訳ではない
(6.7の例)
は偶関数
は偶関数
(6.7の証明)
を偶関数とするとが成り立つ.
とおくと


となるから,は偶関数 についても同様に示される
(6.8の例)
は偶関数
は偶関数
(6.8の証明)
とすると,が成り立つからは偶関数

5.とおくと
(4.1)→

(4.2)→

とおいて部分積分を行う




は偶関数



…(5.3)
(4.3)→

とおいて部分積分を行う






これらを使うと
→[1]
と書けることになる.
 このフーリエ級数展開が,元の関数 y=x をどのぐらい再現しているかを調べるために,−3.1415≦x≦3.1415まで0.1刻みに点を取り,n=1〜100までのフーリエ多項式でグラフをExcelで作成し,近似式を表示すると,次のようになる.
 太い方の青で示した曲線がフーリエ多項式

に対応し,黒で示した細い方の直線が近似直線.
 これによれば,y=1.0026xと近似されるのだから,ほぼy=1xが再現できていると考えられる.
この結果において,の場合を考えると
があるから,x=0ちしてしまうと右辺が全部消えてしまい何も残らないので,比較的簡単に計算できる数字としてを選んだ.



ゆえに
→A
※(6.5)〜(6.8)を用いると,上記の答案は格段に短縮できる.
すなわち,求める関数は奇関数であるから,偶関数の係数はすべて0でなければならない.したがって,の計算だけを行えばよいことが分かる.

6.とおくと
求める関数は偶関数であるから,はすべて0でなければならない.また,偶関数であるから

を利用できる.
(4.1)→


(4.2)→

被積分関数は偶関数だから,右半分の2倍で計算できる

とおいて部分積分を行う



結局,のフーリエ級数展開は,次の式になる.
→[2]
 このフーリエ級数展開が,元の関数 y=|x| をどのぐらい再現しているかを調べるために,−3.1415≦x≦3.1415まで0.1刻みに点を取り,n=1〜100までのフーリエ多項式でグラフをExcelで作成すると,次のようになる.
 これによれば,ほぼy=|x|が再現できていると考えられる.
この式において,x=0とおくと,次の和が得られる.


→D

7.とおくと
求める関数は偶関数であるから,はすべて0でなければならない.また,偶関数であるから

を利用できる.
(4.1)→


(4.2)→

被積分関数は偶関数だから,右半分の2倍で計算できる

とおいて部分積分を行う


とおいて部分積分を行う



結局,のフーリエ級数展開は,次の式になる.
→[4]
 このフーリエ級数展開が,元の関数 y=x2 をどのぐらい再現しているかを調べるために,−3.1415≦x≦3.1415まで0.1刻みに点を取り,n=1〜100までのフーリエ多項式でグラフをExcelで作成し,近似式を表示すると,次のようになる.
 太い方の青で示した曲線がフーリエ多項式

に対応し,黒で示した細い方の直線が近似直線.
 これによれば,ほぼy=x2が再現できていると考えられる.
この式において,x=0とおくと,次の和が得られる.


→C
6.の結果から


とおくと,7.の結果から

したがって
→E
→B

8.方形波(矩形波)のフーリエ級数展開
 右図のような

で定義される関数は方形波(矩形波)と呼ばれる.この方形波(矩形波)のフーリエ級数展開を考えてみる.
 この関数は,奇関数だから,はすべて0になる.
(4.3)→


とおいて第1項を置換積分で変形する



これにより,第1項と第2項は等しいことが分かるから

結局,方形波のフーリエ級数展開は,次の式になる.
→[3]
 このフーリエ級数展開が,元の方形波(矩形波)をどのぐらい再現しているかを調べるために,−3.1415≦x≦3.1415まで0.1刻みに点を取り,n=1〜100までのフーリエ多項式でグラフをExcelで作成すると,次のようになる.
 これによれば,階段の角の所にギップス現象と呼ばれる「ツノ」ができるのが特徴であるが,全体的にはよく再現できていると考えられる.
この式において,とおくと,左辺は定義により1となるから


したがって

となって,5.の結果と一致する

9.とおくと
求める関数は奇関数であるから,はすべて0でなければならない.
(4.3)→

ここで

は置換積分により,右半分と等しいことが示せる.
 すなわち,とおいて第1項を置換積分で変形すると


したがって,次の形に書ける.

部分積分を3回繰り返して,の次数を下げる.
とおいて部分積分を行う


とおいて部分積分を行う



とおいて部分積分を行う




したがって,のフーリエ級数展開は次の式になる.
→[5]
 このフーリエ級数展開が,元の関数 y=x3 をどのぐらい再現しているかを調べるために,−3.1415≦x≦3.1415まで0.1刻みに点を取り,n=1〜100までのフーリエ多項式でグラフをExcelで作成し,近似式を表示すると,次のようになる.
 太い方の青で示した曲線がフーリエ多項式

に対応し,黒で示した細い方の直線が近似直線.
 これを見ると,がほぼ再現されていると考えられる.
のときの式の値を求めると


5.の結果から

だから


→G
一般に,sが正の奇数のとき

は簡単な分数では書けない.

10.とおくと
求める関数は偶関数であるから,はすべて0でなければならない.
(4.1)→

(4.2)→

部分積分を4回繰り返して,の次数を下げる.
とおいて部分積分を行う



とおいて部分積分を行う


とおいて部分積分を行う



とおいて部分積分を行う







したがって,のフーリエ級数展開は次の式になる.
→[6]
 このフーリエ級数展開が,元の関数 y=x4 をどのぐらい再現しているかを調べるために,−3.1415≦x≦3.1415まで0.1刻みに点を取り,n=1〜100までのフーリエ多項式でグラフをExcelで作成し,近似式を表示すると,次のようになる.
 太い方の青で示した曲線がフーリエ多項式

に対応し,黒で示した細い方の直線が近似直線.
 これを見ると,がほぼ再現されていると考えられる.
のとき




ここで7.の結果から
だから,


→I
ここで,
とおくと
だから


→H
→(*1)
この級数の和は,テイラー級数(マクローリン級数)で考える方が簡単になる.すなわち,

においてx=1を代入すると

が得られる.

11.パーセバルの等式
が大きな整数になると,次の(4.2)(4.3)によってフーリエ係数を求めようとすると,部分積分をn回繰り返さなければならず,計算が大変になる.
…(4.2)
…(4.3)
 このとき,フーリエ級数に関するパーセバルの等式を利用するとのフーリエ係数をもっと楽に計算できる.
 まず,[無限次元空間におけるベクトル]について成り立つ関係を思い出すと
を互いに垂直で大きさ1の基本ベクトルとするとき

だから

となるベクトルについて


…(11.1)
が成り立つ.(ピタゴラスの定理,パーセバルの等式と呼ばれる)
 また,ベクトルの内積から,


のとき
…(11.2)
が成り立つ.
 フーリエ級数

については,同一物との積の積分が1,異なる物との積の積分が0ということから,上と類似の次の関係が成り立つ.
…(11.3)
(11.1)はフーリエ係数に関するパーセバルの等式と呼ばれる.
(証明)


まず

のうちで,初めの項は


次に
…(1.2)
…(1.3)
だから,他の項は0になって消える.


次の関係が成り立つから,の項だけ残り,他は0になって消える.
…(3.1)
m≠nのとき
…(3.2)
…(3.3)
m=nのとき
…(3.4)
…(3.5)




も同様にして,の項だけ残り,他は0になって消える.


以上の項を加えると
 2つのベクトルの内積の関係に対応して


のとき
…(11.4)
も成り立つはずであるが,教科書に書かれていないのは,使える場面が少ないせいかもしれない.

【パーセバルの等式を利用した計算】
→[1]
に対してパーセバルの等式を適用すると




この結果はBと一致する.
→[4]
に対してパーセバルの等式を適用すると




この結果はHと一致する.

→[1]
→[5]
として(11.4)を適用すると




ここで

の結果を使い,

とおくと



したがって

→[5]
に対してパーセバルの等式を適用すると







の結果を使い,

とおくと



したがって


→[4]
→[6]
として(11.4)を適用すると







の結果を使い,

とおくと





したがって

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