14 夏越の大祓


 梅雨の晴れ間の陽も西に傾く頃、三々五々境内に向かう人の流れ。

「水無月の夏越の祓えする人は、千歳の命延ぶといふなり」
と唱しながら大きな茅の輪をくぐっていく。

 6月30日、上賀茂神社の境内には直径3メートルは有ろうか云う茅の輪(ちのわ)が設けられ、左右左と8の字を書くように三度くぐると半年間の穢れをはらうと伝えられている。
 日中から行われている神事も日が落ちてからがクライマックスで、この頃に合わせて人出も増えてくるようだ。
 本殿に向かう橋殿(はしどの)には雅楽のしつらえがされており、楢の小川には篝火の火床が置かれている。
 やがてとっぷりと日が暮れると、松明に先導された神官が茅の輪をくぐって橋殿に登場してくる。「人型流し」である。
 人型に身の穢れと罪を託し流し清めるのだが、雅楽に乗せて次々と人型を流していく神官の手つきは、正に熟練の技である。
 篝火に照らされて楢の小川に流れ行く様は幽玄の世界を思わせる。

 藤原家隆が 
  風そよぐならの小川の夕暮れはみそぎぞ夏のしるしなりけり
と詠んだのはこの神事のことである。

 事ごとにお祓いを大切にする神事のなかでも、夏越しの祓は大晦日から元旦にかけての年越しの祓と共に重んじられ、大祓(おおはらえ)とも言われる。


 興味をお持ちの向きには一度訪ねてみられる事をお勧めする。   TY

←13. 御所のけもの道 戻 る 15. 楢の小川
Copyright(C) 2005 tamaruya All Right Reserved.