10 アホとカシコの神様
 京の冬の底冷えもゆるみ、春の微かな気配さえ感じる一日、今宮神社へと足を向けた。
 祭りの頃の賑わいとは趣を変え訪れる人もまばらな境内の片隅に小さなお社がある。大将軍社、地主社、織姫社など今宮のお社の一つ八社である。

 お社の神前に何の変哲もない石が座布団の上に鎮座している。「阿呆賢(アホケン)さん」と書かれてある。古くは「神占石」とも呼ばれ、心を込めて病気の平癒を祈りこの石を撫で 、悪いところをさすると回復を早めると信じられていた。
 また「重軽石(オモカルイシ)」ともいわれ、手のひらで軽く三度叩き持ち上げると大層重く、その後願いを込めて三度石を撫でて持ち上げ初めより軽くなって居れば、願いが叶うと伝えられている。

 あまり知られていないのが社務所の北側、境内の北東隅にあった「四面石仏」である。一つの石の四方に「薬師如来」「釈迦如来」「弥陀如来」「弥勒菩薩」が線で刻まれていた。
 「天治2年(1125年)7月13日」と記されており、年号を記載した石仏では我が国最古のもので、昭和16年に国の重要文化財に指定されている。神社に菩薩様や如来様とは、神仏分離以前の古い時代の名残で有ろうか。この石仏、現在は京都国立博物館に寄託されている。
 
 また宗像社の基壇の台石には50センチ余りの鯰の彫り物がある。お社は「弁天さん」とも呼ばれており、鯰はそのお使いとして彫られているそうである。こちらは今も見ることができる。


散策のおりに一度訪ねてみられる事をお勧めする。  TY
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