※このページの内容は,高校数学Aの平面幾何(選択)の教科書に載っています.中学生には少し難しいですが,読めば分かります.中学生が定理の結果を覚える必要はないでしょう.ただし,中学校で習う相似図形の性質で解けるものなので,類似の問題は出題されるかもしれません.
【メネラウスの定理】(メネラウスはギリシャの数学者1世紀
 直線l△ABCの3辺AB, BC, CAまたはその延長と,それぞれ,P, Q, Rで交わるとき,次の式が成り立つ.

(公式の見方)
 右図のように,頂点Aからスタートして,交点Pまでの長さを分子(上)とし,次に,交点Pから頂点Bまでの長さを分母(下)とする.以下同様に分数を掛けて行って,頂点Aまで戻ったら,それらの分数の積が1になるという意味
 右の図では,交点Qだけ変な位置にあるように見えるが,1つの直線と3辺AB, BC, CAの交点を考えるとき,少なくとも1つの交点は辺の延長上に来る.
 B:BC→C:CQと見るのではなく,上の定理のようにB:BQ→C:QCと正しく読むには,機械的に
頂点A→交点→頂点B→交点→頂点C→交点→(頂点A)
のように,頂点と交点を交互に読めばよい.
(証明の進め方)
 図形についての,比例式や分数の関係を証明するには「相似図形」を利用するとよい.
(証明)
 どの辺の延長上に交点が来るかによって,図は変わるが,右の図の場合は
 Cからlに平行な直線をひき,ABとの交点をDとし,AP=x, PD=y, DB=zとおくと

CD//lだから


※他の形になる場合も,直線lに平行な直線をひけば同様にして示せる.

【例題1】
 直線l△ABCの3辺またはその延長と右図のように,P, Q, Rで交わるとき,BC:CQを最も簡単な整数の比で表してください.
(解答)(メネラウスの定理を覚えている場合)
メネラウスの定理により

が成り立つから


BQ:QC=15:8だから
BC:CQ=7:8…(答)
(別解)(中学生ならメネラウスの定理を覚えている必要はない.定理を証明しながら問題を解けばよい)
右図のように,点Cから直線lに平行な線をひき,辺ABとの交点をDとすると
△APR∽△ADCだから
AP:PD=5:4=10:8
AP:PB=10:15
PD:PB=8:15
△BCD∽△BQPだから
BC:CQ=BD:DP=7:8…(答)
【問題1】
(選択肢の中から正しいものを1つクリック.解答すれば採点結果と解説が表示されます.)
(1)
直線l△ABCの3辺またはその延長と右図のように,P, Q, Rで交わり,AP:PB=3:2, CR:RA=1:4であるとき,BC:CQを最も簡単な整数の比で表してください.

(2)
直線l△ABCの3辺またはその延長と右図のように,P, Q, Rで交わり,AP:PB=5:2, AC:CR=8:7であるとき,BQ:QCを最も簡単な整数の比で表してください.
(3)
直線l△ABCの3辺の延長と右図のように,P, Q, Rで交わり,QB:BC=3:2, CA:AR=5:1であるとき,PA:ABを最も簡単な整数の比で表してください.

【チェバの定理】(チェバはイタリアの数学者17世紀)
 △ABCの辺上にない1点Oをとり,Oと頂点A, B, Cを結ぶ直線がそれぞれ辺AB, BC, CAまたはその延長と交わる点をP, Q, Rとするとき,次の式が成り立つ.

※チェバの定理の式自体は,メネラウスの定理と全く同じ形になりますが,P, Q, Rの場所が違います.
メネラウスの定理では3点P, Q, Rは1直線上に並びますが,チェバの定理では,それぞれ辺AB, BC, CAにあります.
(公式の見方)
 右図のように,頂点Aからスタートして,交点Pまでの長さを分子(上)とし,次に,交点Pから頂点Bまでの長さを分母(下)とする.以下同様に分数を掛けて行って,頂点Aまで戻ったら,それらの分数の積が1になるという意味
 機械的に
頂点A→交点→頂点B→交点→頂点C→交点→(頂点A)
のように,頂点と交点を交互に読めばよいのもメネラウスの定理と同じ.
(証明の進め方)
 「相似図形」を利用して前提なしに証明する方法やメネラウスの定理を使って証明する方法が考えられる.
(相似図形を利用する証明)
 点O△ABCの内部にある場合
 AからBCに平行な直線をひき,CP, BRの延長との交点をS, Tとし,AP=x, PB=y, BQ=z, QC=w, CR=u, RA=v, SA=a, AT=bとおくと
△PAS∽△PBCだから

△RTA∽△RBCだから

したがって


△OAS∽△OQCだから

△OAT∽△OQBだから


ゆえに


(メネラウスの定理を利用する証明)
右図1の△ABQと直線POCにメネラウスの定理を適用すると
…(1)
右図2の△AQCと直線BORにメネラウスの定理を適用すると
…(2)
これら2つの式(1)(2)を辺々掛けると,約分によってAO, OQ, BCが消えて

※チェバの定理は,点O△ABCの外部にある場合にも証明できます.

【例題2】
 △ABCの内部に点Oをとり,Oと頂点A, B, Cを結ぶ直線がそれぞれ辺AB, BC, CAと交わる点をP, Q, Rとする.AP:PB=2:3, AR:RC=4:5であるとき,BQ:QCを最も簡単な整数の比で表してください.
(解答)(チェバの定理を覚えている場合)
チェバの定理により

が成り立つから


BQ:QC=6:5…(答)
(別解)(中学生ならチェバの定理を覚えている必要はない.相似比を使って解けばよい)
AからBCに平行な直線をひき,CP, BRの延長との交点をS, Tとし,BQ=m, QC=n, SA=a, AT=bとおく
a:(m+n)=2:3=10:15
b:(m+n)=4:5=12:15
a:b=10:12=5:6
m:n=b:a=6:5…(答)
【問題2】
(選択肢の中から正しいものを1つクリック)
(1)
 △ABCの内部に点Oをとり,Oと頂点A, B, Cを結ぶ直線がそれぞれ辺AB, BC, CAと交わる点をP, Q, Rとする.AP:PB=1:2, AR:RC=1:1であるとき,BQ:QCを最も簡単な整数の比で表してください.

(2)
 △ABCの内部に点Oをとり,Oと頂点A, B, Cを結ぶ直線がそれぞれ辺AB, BC, CAと交わる点をP, Q, Rとする.AP:PB=3:4, BQ:QC=5:6であるとき,CR:RAを最も簡単な整数の比で表してください.
**チェバの定理は右図のように点O△ABCの外部にある場合にも成り立ちます**
 △ABCの辺上にない1点Oをとり,Oと頂点A, B, Cを結ぶ直線がそれぞれ辺AB, BC, CAまたはその延長と交わる点をP, Q, Rとするとき,次の式が成り立つ.

※証明略

(3)
 右図のように△ABCの外部に点Oをとり,Oと頂点A, B, Cを結ぶ直線がそれぞれ辺AB, BC, CAまたはその延長と交わる点をP, Q, Rとする.PA:AB=2:3, BC:CQ=2:1であるとき,CR:RAを最も簡単な整数の比で表してください.
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