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== 組立除法 ==
(はじめに)
〇組立除法とは,多項式の割り算のうちで「割る式がxの1次式」であるときに,係数の表を順に組み立てて行って,商と余りを求める方法のことです.
(*1) 多項式の割り算は,掛けて引くという普通の作業を繰り返せばできるので,「組立除法でなければ解けない問題」というものはないでしょう.(実際,筆者は〇十年の間,組立除法が必要だと感じたことはなく,組立除法が教科書にあってもつねに省略していました).
(*2) 入学試験や実力試験に組立除法が出題されることは,めったにないでしょう.今までにたった一回だけ必要だったのは,次の場面です.
 学校の宿題で「組立除法で解きなさい」と解き方が指定されていて,それでなければ解答できないという子供から質問を受けたときです.このように,組立除法が必要となるのは,宿題とか校内の定期試験で解き方が指定されている場合だと考えられますが,組立除法がスラスラとできると能率がよいことは確かです.
〇組立除法は「割る式がxの1次式であって,かつ,xの1次の係数が1の場合にだけ使えます」.
割る式がx−aとかx+aの形のときは,組立除法が使えます
割る式がax2+bx+cとかax+bの形のときは,組立除法は使えません.ax+bで割る場合まで拡張する方法は,このページの下端に書いてあります)

(組立除法とは)
図1
例えば
の割り算を行う場合を考えてみると
 組立除法では,図2や図3のような表を作ります.(図2が多い)

図2

図3

 組立除法の図にはのような文字の部分は書かずに「係数だけを降べきの順に並べたものを使います」.
 図1の割り算で上端に書かれる商は,組立除法では下端に係数だけ並べて書きます.
 この図では,上の行が割られる式の係数を並べたもの,窓枠にはx−aのときaと書きます.
 元の割る式の定数項−aと比べると,組立除法の窓枠に各数字は「見かけの符号を逆にする」ということが最初の注意事項です.
※この窓枠にはx−aのときaと書くというのは,何でもない些細なことのように思えますが,普通の割り算では中の計算が引き算になるのに対して,組立除法では足し算になる「からくり」がここにあります.

(1) を消すためには,商にを立てる.
→割られる式の初めの係数は,そのまま移動して書き込みます.
組立除法では,割る式のxの1次の係数が1の場合しか扱わないから,この数字は「割られる方の式の最高次の係数をそのまま書いたものになります」
(2) 次に図1では
3x2×(x−2)=3x36x2
というように,立てた商と掛けて引くという計算をしますが,
3x3−2x2−(3x36x2)
という引き算において,3次の係数3を消すためにこの計算をしているのだから,3次の項はなくなります.
 その次の2次の係数で,普通の割り算では「割る式と商を掛けて引く」:−2x2−(−2×3x2)ようになっているところを
−2x2+2×3x2
係数で言えば
−2+2×3
とします.
普通だったら「−2を掛けて引く」ところを「2を掛けて足します」.かっこを外せば当然そうなりますが,この部分の計算が「窓枠には符号を逆にした数字が書き込んであるから」つねに足し算でできることになります.
 次の計算で,左の図の中で「丸で囲んだb1の値はp1+ap0という足し算でできます」.

 このようにして,右のような組立除法の途中経過は,下に現れた商の値に窓枠の値aを掛けて足すという作業の繰り返しになります.
 下の欄の最後の数字は,余りになります.

【例1】
の割り算を組立除法で行うと,次のような計算になり,商がで余りはになります.
(注)
 のようにの項がないときは,そのまま係数を詰めて書くと別の問題になってしまいますので,ない項の係数はとして場所をとっておかなければなりません.
【例2】
の割り算を組立除法で行うと,次のような計算になり,商がで余りはになります.
【例3】
の割り算を組立除法で行うと,次のような計算になり,商がで余りはになります.

【組立除法の要点】
(1) 割る式は「1次式」かつ「xの係数が1」でなければならない.
 割る式がx−aのとき,窓枠にはaと書き,割る式がx+aのとき,窓枠には−aと書く.(見かけの符号を逆にする)
(2) 割られる式を「降べきの順」にしたものの係数だけを図の上端に並べる.
 ただし,抜けている次数があるときはその欄に0と書き込み,次数がズレないように気を付ける.
(3) 割られる式の先頭の係数は,そのまま下端に下げて,商の先頭の数字にする.
(4) 下端に書いた商の数字と窓枠の数字を掛けて2行目に書き,上端の数字と足したものを下端に書く.
(5) (4)の操作を繰り返す.最後の数字は余りになる.

【問題1】 選択肢の中から正しいものを1つクリック
(1)次の割り算を下図のような組立除法で行うとき,空欄に入る数字を答えてください.




(2)次の割り算を下図のような組立除法で行うとき,空欄に入る数字を答えてください.



1 2 3 −3

(3)次の割り算を下図のような組立除法で行うとき,空欄に入る数字を答えてください.




(4)次の割り算を下図のような組立除法で行うとき,空欄に入る数字を答えてください.






【問題2】
(1)次の割り算を組立除法で行ってください


(2)次の割り算を組立除法で行ってください


(3)次の割り算を組立除法で行ってください


(4)次の割り算を組立除法で行ってください


(参考1)
2018.3現在の教育課程では,数学Uで習うようになっている「剰余の定理」は,次のようなものです.
整式で割ったときの余りはである
証明は,次のように行います.
1次式で割ったときの余りは定数になるから,商を,余りをとおくと

と書ける.
この式のを代入すると

となって,余りに等しいことが示されます.
上の証明は,どんな整式に対しても成り立つ簡潔明瞭な証明ですが,オバケのちゃんは最後まで正体不明という不気味さがあります.
組立除法の途中経過を振り返ってみると,このも見える形で余りを示すことができます.
の計算を組立除法で行うと



各々の係数は,次のように求めています.





これにより,余りは,

の代わりにを代入したものに等しいことが分かります.
また,商は

になるということも分かります.

(参考2)
 剰余の定理を使うと,整式で割ったときの余りはであると言えます.
 しかし,また多項式で割ったときの余りもであると言えます.
 これらの関係を整理すると,1次式で割る場合まで組立除法を拡張することができます.
【例】
です.これを商と余りの関係(割り算の原理)で書き直すと

になります.
これに対して,
です.これを商と余りの関係(割り算の原理)で書き直すと

になります.
 一般に,で割ったときの余りとで割ったときの「余りは等しい」.
 で割ったときの商はで割ったときの「商のになる」と言えます.

ならば

となるからです.
【組立除法の拡張】
 のとき,多項式で割る計算を組立除法で行うには
(1) で割る計算を組立除法で行う.
(2) 余りはそのまま使い,商はで割るとよい.

【例4】
 の割り算を組立除法には,まず次のようにで割る計算を行い,商,余りを求めておきます.
 次に,商を2で割ってとし,余りはそのまま使ってを元の問題の答えとします.




【例5】
 の割り算を組立除法には,まず次のようにで割る計算を行い,商,余りを求めておきます.
 次に,商を3で割ってとし,余りはそのまま使ってを元の問題の答えとします.





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