■ 数列の和の極限を定積分に直すには,次のような図を考えます.
(公式)
上の図において,青の矢印で示したように,各々の短冊の右肩がグラフ上にあるようにしてできた短冊の面積を全部足すと,次の公式になります.…(A) 上の図において,赤の矢印で示したように,各々の短冊の左肩がグラフ上にあるようにしてできた短冊の面積を全部足すと,次の公式になります. …(B)
区分求積法によって面積を求めるときに,上の図のような単調増加関数の例で考えると,(A)は実際よりも少しずつ大きな短冊を集めたものになり,(B)は実際よりも少しずつ小さな短冊を集めたものになりますが,
さて,実際に問題を解くときに,下記の[4]で「おや?」「はてな?」と思うかもしれないポイントに触れておきます.のときに(A)と(B)が同じ値に収束したら,その値を図形の面積と定義します.(単調減少関数であっても,増加区間と減少区間の両方があっても(A)(B)が一致したらそれを面積の定義とする.) したがって,(A)と(B)は等しいと言えます.(これらが等しくなければ,面積は定義されないから) 上の図において,n個の短冊は(植木算の仕組みで)n+1本の線で区切られています. のうちの のn個を使う・・・(初項はのy座標を使う:各短冊の右肩がのグラフ上にある)・・・のが(A)で のn個を使う・・・(初項はのy座標を使う:各短冊の左肩がのグラフ上にある)・・・のが(B)です. (A)の式では,Σ記号には積分区間の端になるべき値が入っていませんが,これを求めるためにはを計算しなければなりません. 逆に,(B)の式でも,Σ記号には積分区間の端になるべき値が入っていませんが,これを求めるためにはを計算しなければなりません. ■ この公式を使うには,「各部品」を正確に対応させることが大切です.(初めは,大変難しいものです.)
<要点>
[1]
まず,(通常は)を分離すること
→ これがになります. (Σ記号の初項から末項までの項数個の等分となっている) [2]
を決める→を決める→を決める.
[3]
とします.
[4]
とします.(でないなら,[1]の段階でを調整します.)
※なお,数列の和が求められるとは限らないことに注意.
【例題1】
数列の和は求められない場合でも,数列の和の極限は「定積分」だから計算できるのです. 極限を求めよ. (茨城大2014年度)
[1] まず,を分離する.(この問題では初めからそうなっている) [2] を決める→を決める→を決める. とおく. [3] とする. [4]とします.(でないなら,[1]の段階でを調整します.) (区間の幅が 1 だから,[1]においてとしたこととつじつまが合う) 以上から 後は,この定積分を計算すればよい. …(答) 右上に続く→
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[4]に関連して:を主役として,次のように見直してみると全体の有機的なつながりについて何かつかめる事があると思う. からスタートして,もし としたいのなら とすることになり から,区間の幅が になる.そのn等分としてを使うことになるから 【問題1】 (日本大2005年度)
[1] まず,を分離する.(この問題では初めからそうなっている)
[2] を決める→を決める→を決める. とおく. [3] とする. [4]とします.(でないなら,[1]の段階でを調整します.) (区間の幅が 1 だから,[1]においてとしたこととつじつまが合う) 以上から 後は,この定積分を計算すればよい. ところで,次の公式を思い出そう. これにより …(答) [4]に関連して:を主役として,見直した場合. からスタートして,もし としたいのなら とすることになり から,区間の幅が になる.そのn等分としてを使うことになるから |
【例題2】
次の極限値を求めよ.
(解説)(千葉大2005年度)
[1] まず,(通常は)を分離する.(この問題では「ないから作る」:nで割ってnを掛ける) [2] を決める→を決める→を決める. とおく. [3] とする. [4]とします.(でないなら,[1]の段階でを調整します.) (区間の幅が 1 だから,[1]においてとしたこととつじつまが合う) 以上から 後は,この定積分を計算すればよい. …(答) 【問題2】
(1) 次の極限値を求めよ.
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(千葉大2005年度)
[1] まず,(通常は)を分離する.(この問題では「ないから作る」:nで割ってnを掛ける)
[2] を決める→を決める→を決める. とおく. [3] とする. [4]とします.(でないなら,[1]の段階でを調整します.) (区間の幅が 1 だから,[1]においてとしたこととつじつまが合う) 以上から 後は,この定積分を計算すればよいが,次のように部分分数分解を使って行う. …(答)
(2) 次の極限値をもとめよ.
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(日本大2005年度)
[1] まず,(通常は)を分離する.(この問題では「ないから作る」:nで割ってnを掛ける)
※各項の分母にが見えているからといってで割って掛けてはいけない.
(項数を数えると項になっているから,それに合わせてで割って掛けなければ等分にならない.) [2] を決める→を決める→を決める. とおく. [3] とする. [4]とします.(でないなら,[1]の段階でを調整します.) (区間の幅が 1 だから,[1]においてとしたこととつじつまが合う) 以上から 後は,この定積分を計算すればよいが,分子が分母の微分となる形に変形できる. …(答) 右上に続く→
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(3) 次の極限値を求めよ.
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(奈良県立医大2014年度)
[1] まず,(通常は)を分離する.
※各項の分母にが見えているからといって「まとめて」を分離してはいけない.
(項数を数えると項になっているから,それに合わせて等分する.) [2] を決める→を決める→を決める. とおく. [3] とする. [4]とします.(でないなら,[1]の段階でを調整します.) (区間の幅が 1 だから,[1]においてとしたこととつじつまが合う) 以上から 後は,この定積分を計算すればよいが,次のように対応させて部分積分法を利用する. …(答) [4]に関連して:を主役として,見直した場合. からスタートして,もし としたいのなら から,区間の幅が になる.そのn等分としてを使うことになるから とすることになり の計算になる.(結果は同じ) |
…(A)
[1] 皮1枚分多い場合…(B) 以外の場合 …(*1) のような極限は,(A)よりも次図の桃色の短冊が1枚多いことになります. きっちりとした答案に仕上げるには,「ちょうど定積分になる式」を作り,多い部分を引きます.このように正しい変形をしながら,引いた部分が0に収束することを示せばよい. の形で答案をまとめとよい. 【例題3】
次の極限値を求めよ.
(解説)
元の問題が
の場合は とすればよい.また,次のように変形してもよい. 右上に続く→
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[2] 皮1枚分少ない場合 …(*2) のような極限は,(A)よりも次図の水色の短冊が1枚少ないことになります. この場合は,ちょうど定積分になるように1枚足してから引けばよいことになります.
次の極限値を求めよ.
(解説)
次のように変形してもよい.
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[3] 短冊が2n枚,3n枚ある場合 【例題5】
次の極限値を求めよ.
(解説)ア) 極限移項する前の項数は2n項であるから,この項数に合わせて2n等分すると考えるとき [1] まず,()を分離する. [2] を決める→を決める→を決める. と変形しておく とおく. [3] とする. [4]とします.(でないなら,[1]の段階でを調整します.) (区間の幅が 1 だから,[1]においてとしたこととつじつまが合う) 以上から イ) 横幅の短冊を2n個足していくと考える場合 とおく. 以上から 右上に続く→
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【問題5】
次の極限値を求めよ.
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ア) 極限移項する前の項数は3n項であるから,この項数に合わせて3n等分すると考えるとき
[1] まず,()を分離する. [2] を決める→を決める→を決める. と変形しておく とおく. [3] とする. [4]とします.(でないなら,[1]の段階でを調整します.) (区間の幅が 1 だから,[1]においてとしたこととつじつまが合う) 以上から イ) 横幅の短冊を3n個足していくと考える場合 とおく. 以上から |
[4] n+1 から 2n(3n)までの和になっている場合 【例題6】
次の極限値を求めよ.
(解説)(愛媛大2014年度)
ア) 1からnまでの和に直して考えるとき と変形しておいてから,従来の方法で行う. とおく. 以上から イ) n+1から2nまでをn等分するとき とおく. 以上から 右上に続く→
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【問題6】
次の極限値を求めよ.
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ア) 項数に合わせて2n等分の短冊で考え,1項から2n項までの和に直すとき
とおく. 以上から イ) 項数に合わせて2n等分の短冊で考え,n+1項から3n項までの和のまま求めるとき とおく. 以上から ウ) 横幅の短冊を2n個足していくと考え,1項から2n項までの和に直すとき とおく. 以上から エ) 横幅の短冊を2n個足していくと考え,n+1項から3n項までの和のまま計算するとき とおく. 以上から |