== ベクトルの定義,大きさ,向き ==

○小中学校以来学んできたものの量は,単位が決まっていれば,大きさを表す数字を1つで表すことができました.
【例1】 身長 172.5(cm)
【例2】 体重 61.3(kg)
【例3】 面積 80(m2)

○これに対して,「力」「移動」「速度」のような量は,「大きさ」だけでなく「向き」も持った量で表されます.このように「大きさ」と「向き」を持つ量はベクトルと呼ばれ,1つの数字だけでは表せないので矢印を使って表されます.
【例1】 はベクトルで表されます
台の上のボールがどちらに落ちるかは,力の「大きさ」だけでなく,力の「向き」によって変わる.

【例2】 移動はベクトルで表されます
荷物が届けられる家は,移動の「大きさ」(=距離)だけでなく,移動の「向き」によって変わる.

【例3】 速度はベクトルで表されます
日本海沿岸では,風の速度の「大きさ」(=速さ)だけでなく,風の「向き」によって海の状態が変わる.
南風なら海は静かだが,北風なら海が荒れる.

○ベクトルは「大きさ」と「向き」をもった量で,1つの数字だけでは表せないので,矢印を使って図形的に表します.
 ベクトルの名前の付け方として,始点Aから終点Bに向かうベクトルは,

で表します.
が左にあっても,のような書き方はしません.
 ベクトルを1つの名前で表すときは,

などで表します.

→右上に続く
○「矢印の向き」がベクトルの向きを表しており,「矢印の長さ」がベクトルの大きさを表しています.
 右図のベクトルについては,
は向きが等しくて大きさは異なります.
は大きさが等しくて向きは異なります.

【例】
(1) 右図の平行四辺形において,AD=BCかつAD//BC
です.すなわち,ADBCは同じ「向き」で「長さ」が同じです.したがって

が成り立ちます.
同様にして

も成り立ちます.
しかし,ADCBは「長さ」が同じですが「向きが逆」なので


(2) 右図の等脚台形において,
 2.1) EHFGは,「向き」が同じですが「長さが違う」ので

 2.2) EFHGは,「長さ」が同じですが「向きが違う」ので

【要点】
○2つのベクトルは,「大きさ」と「向き」の両方とも等しいとき,ベクトルとして等しいといい

と書く.
○2つのベクトルは,「大きさ」と「向き」さえ等しければ「等しい」といい,”どこに描いてあるか”は問題にしない.
例えば,上の図においての始点はで,の始点はであり,明らかに違う場所に書いてあるが,これら2つのベクトルは等しいといい,同じものとして扱う.
※(本気の雑談)
「向き」とよく似た用語に「方向」という用語があります.これらの用語の日常用語としての類似点・相違点については,ここでは述べませんが,高校数学で普通に使われる用語としての「向き」と「方向」の違いについて
ほぼ,次のように使い分けます.

平行だったら「同じ方向」という.
さらに,「あっち向き」「こっち向き」まで一致しているとき「同じ向き」という.
したがって,「同じ向き」なら「同じ方向」になるが,「同じ方向」でも「同じ向き」と「逆向き」の区別がある.

【問題1】 (選択肢の中から正しいものを1つクリック)
(1)
右の正六角形ABCDEFの中心をOとするとき,ベクトルと等しいベクトルを次の中から選んでください.
(2)
右の正六角形ABCDEFの中心をOとするとき,ベクトルと等しいベクトルを次の中から選んでください.
(3)
右の正六角形ABCDEFの中心をOとするとき,ベクトルと等しいベクトルを次の中から選んでください.

【問題2】 (選択肢の中から正しいものを1つクリック)
(1)
右図においてベクトルと等しいベクトルを次の中から選んでください.
(2)
右図においてベクトルと向きが等しく,大きさが異なるベクトルを次の中から選んでください.
(3)
右図において点を始点として,ベクトルに等しいベクトルを描くと,終点は次のどの点になりますか.

ベクトルの大きさ(長さ)は絶対値記号を付けて表します.
例えば,ベクトルの大きさ(長さ)はで表され,ベクトルの大きさ(長さ)はで表されます.
【例】
(1) 右図において,です.
ではないことに注意.ベクトルそのものは,1つの数字では表せません.今ここで表しているのは,ベクトルのうちの「大きさ」だけを取り出したものです.
中学校以来2点間の距離は,記号で表してきましたが,「2点を結ぶベクトルの大きさ」は「2点間の距離」と全く同じものになります.
(2) 右図において,です.
中学校で習った三平方の定理,または2点間の距離の公式を使うと,横の長さがで縦の長さがである直角三角形の斜辺の長さは
になります.だからです.

※ベクトルの「向き」表す記号はないのか?
- - -高校では,後に習う複素数zの向き(偏角)を表す記号arg(z)はありますが,「ベクトルの向き」を表す特別な記号は使いません.何年やっていても特に不便は感じません.
 右図のように,ベクトルの大きさ(長さ)が3であるとき,後で習う「ベクトルの定数倍」という操作で,3で割るとと同じ向きで大きさ1のベクトルを作ることができます.これを利用することが考えられる程度です.(すぐ後で習う)

によって,その向きの大きさ1のベクトルが表せる.
【問題3】 (選択肢の中から正しいものを1つクリック)
(1)
右図においてベクトルの大きさを求めてください.
1 2 3 4
(2)
右図においてを求めてください.
1 2 3 4
(3)
右図においてを求めてください.
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