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 私たちが、新婚旅行から帰ってくると、いるはずのない犬の鳴き声
聞こえてきました。というのも、初代エルマーの逝った後、犬好きの
親父が早速に買ってきた柴犬の「タロー」がヒィラリアで2ケ月前に7
歳という若さで逝ったところだったからです。「タロー」はちょうど嫁さん
の荷物が入った日に死んでしまったものですから、本当にショックでした。
私が学生の時に飼われていたもんですから、たまにしか家に帰らなかった
私は、「タロー」にすれば後からきたただの新参者でしたから、言うことなど
ほとんど聞きませんでした。卒業して家業を手伝うようになってから、
やっと一緒に遊んでもらえるようになりました。そんなある日何となく元
気がないなあと思っていた矢先に咳き込んだり血便が出はじめ、慌て
て動物病院へ連れて行ったのですが、医者から「もうそっとしといてや
った方がええで」といわれて帰ってきた時、しゃがみ込んで泣きながら
タローの頭を撫でてやっていたら、タローが今までにない優しい顔で
私の手を何度も嘗めてくれました。今思うと、さようならの挨拶だった
のかなという気がしました。タローの棺桶を作りながら
「満れば欠ける」ということが確かにあるんだと思い知ったときでした。
 おかしいなあと思いながら、裏に回ってみると、赤い首輪をしたラブラ
トルがちょこんと、座ってこっちを見ていました。なんでやねん、と思いな
がらももう既に子犬をこねくりまわしていました。犬好きの親父が犬バカ
新婚夫婦にプレゼントしてくれたようです。名前は知らず知らずのうちに
2代目エルマーになってしまってました。雄だったのですが、生まれつき
腸が弱かったので、よく腸炎になって病院通いしました。私たちの子供が
生まれたときも、最初は気が動転したのかよく吠えまくっていましたが、
少し経つと気持ちも落ち着き、子供が成長するに従って良き遊び相手と
なっていきました。例えば子供達が私たちに叱られた時、よくエルマーの
所へ行って愚痴を聞いてもらっていました。エルマーも迷惑そうな顔を
しながらも相手になってやっていたのが印象に残っています。それから
14年間子供の成長と共にエルマーはいつも私たちの側にいました。が
どうしても避けてとうれないことが、やはり私たち家族にもおとずれて
しまうことになったのです。

2代目エルマー 95.12.13永眠
 12歳の夏頃から後ろ足が思うように動かなくなり、それ以後は半年程
は横になっている生活が続きました。下半身が腰砕けの様になってしゃが
み込んでしまうと、立ち上がれなくなってしまって起こしてくれと言わん
ばかりに吠えて誰かを呼んでいました。腰を持ち上げて立たしてやるとまた
フラフラと工場の方に散歩に行き、戻ってきては何かに躓いてしゃがみ込み
そこでそそうをしてしまうといった毎日でした。
 ヘルニアだったのかもしれませんが、獣医さんも「もう、そこそこの年やし
そっとしておいてやった方がいいのかなあ」ということで、食べられるだけ
のご飯と、歩きたいだけの散歩をして余生を過ごさせてあげました。目の
方も白内障になっていたみたいで、昼間の方が見えにくい様でした。
 動物の病気って本当に可哀想に思います。自分で症状が言えずに怯え
ている姿をみると、胸が痛みます。エルマーも最後のころは、体を撫でて
やっても、力を振り絞って唸り声をあげて噛みつこうともしました。体が痛い
のか、誰に触られているのか解らずに不安だったのでしょう。優しく声を
かけると落ち着いて横になっていましたが、目からは涙らしいものがにじん
でいるようでした。もう一度元気になって、みんなと遊びたかったのでしょう。
私たち家族も覚悟は決めていました。余計な延命措置はしませんでしたが
苦しそうに体を起こそうとするエルマーを見ると、安楽死という言葉も脳裏を
よぎりましたが、一生懸命生きながらえようとする姿を見ると、自然にして
やるのが一番だと思いました。
 95年の12月13日エルマーは本当に眠るように逝ってしまいました。
一緒に暮らしている動物の死に目にあうのは本当に辛いものです。朝の7
時でしたが嫁さんは泣く、子供は学校行きたくないと言い出す、仕事に行か
なくてはならないのに全然する気なし、の無気力状態が続きました。こんな
に辛いのなら本当にもう二度と犬なんか飼わへんぞと思いました。ただ、
責任が果たせたというか、苦しんでいるエルマーを見なくて済むというか、
言いようのない安堵感みたいなものがありました。
 家庭で動物を飼うということは、子供にとってとてもいいことです。エルマー
を最後まで見届けてやったということは、大げさかもしれませんが人間の
縮図を子供達に、見せてやることができたと思います。動物が死んだ時に
辛いのはそれ以上に動物と暮らしていて楽しい事がたくさんあったからです。
ですから私は心に決めました。
”またかわいい子犬をさがそう”と
次回はついにコースケの登場です。