研究班紹介:小児班







 -小児の臨床;夜尿症-



夜尿症:

  夜尿症の原因として種々の説があり、治療もさまざまなものが行われている。特に普 段の家庭での生活における「指導」は非常に厳格なものまである。その指導の根拠と して、夜間睡眠中の尿量が夜尿症患者において多いという研究報告がある。デンマー クのグループによるすばらしい研究報告であるが、この研究はそのような患者の夜尿 が治った後の状態までは報告していない。私たちの研究では夜尿症のない子供はいく らたくさんの水分を寝る前にとっても、朝まで尿を我慢するか夜中に1回起きて排尿 することで夜尿をしないことがわかった。また別の研究において夜尿をする瞬間の膀 胱容量を測定すると、その量は昼間の膀胱容量とほぼ同じか少ないという結果であっ た。一方、正常児の睡眠時の膀胱容量は昼間の1.5倍以上ということもわかった。す なわち正常の子供は睡眠中に昼間の1.5倍以上まで尿意を我慢できるが、夜尿症の子 供は昼間と同程度かそれ以下で夜尿をしてしまうということである。
 これらより考え ると、睡眠中に尿意を我慢できるようになるか尿意でトイレに起きることができるよ うになると夜尿が治ると推測される。実際、尿量を減らす抗利尿ホルモンという薬で 夜尿が治った患者の睡眠中の尿量は、治療前後で有意な差はないという報告がある。 まとめると、夜尿症患者の睡眠中の尿量は多いが、それが治っていく時には尿量が減 るのではなく、多い尿を十分膀胱に溜めることができるようになるか、あるいは尿意 でトイレに起きることができるようになる。 
 このような背景を元に治療を考えると、夜尿ブザー(濡れれば鳴るブザー)は条件付 け療法といい、睡眠中の膀胱容量を増やし、尿意により起きやすくする効果がある方 法で、海外では第1選択として使用されていることも多い。抗利尿ホルモン(デスモプ レシン点鼻薬)は尿量を減らす薬なので、使用している時は夜尿は減るが、根本的な 治療となっていないことが多いため、短期間で中止すると元に戻ることも多い。すな わちこの治療法は、尿量を減らして夜尿を見かけ上減らしながら、前述の睡眠中に膀 胱に尿を溜める能力や尿意で起きる能力が自然に完成するのを待つ、言い換えれば自 然治癒を待つ治療法と考えられる。その他に三環系抗うつ薬がよく用いられるが、こ の薬も飲んでいる時は尿意で起きたり、朝まで尿を我慢できるようになる。特殊な治 療法として鍼治療がある。仙骨部のつぼを鍼刺激すると膀胱容量が増えることが判明 しており、週1回の治療で効果がある。一方、夜尿症の原因に膀胱機能が悪かった り、尿道が細かったりする泌尿器科学的異常がある。いろいろな治療に抵抗性の夜尿 症や尿失禁は泌尿器科で精査する必要がある。
 夜尿症の生活指導については最初に述べたように厳格に水分や食べ物を制限するとい う考え方もあるが、見かけ上夜尿の回数は減っても根本的な治療とはいえない。当 然、寝る直前の水分は夜尿に直結するので止めた方がよいが、その他は制限する必要 はないと考えている。また夜中に起こすのがいけないという考え方がある。夜中に起 こすと抗利尿ホルモンの分泌が減って尿量が増えるというのであるが、これを科学的 に証明した研究はない。実際、家庭において祖父母や両親が夜中に起こすことにより 夜尿がなくなり、病院にかからずに済んだという人も多くいると思われる。よって、 起こすのが良いか悪いかは一概には言えないが、少なくとも夜尿ブザーで起こすのは 有効な方法であるといえる。ちなみに知りえる限り、海外の学会や論文では「夜中に 起こすのがいけない」という議論についての報告はない。


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       ・停留精巣


       ・先天性水腎症


       ・膀胱尿管逆流症


       ・夜尿症


         2001.7.13.  文責:河内明宏

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