■逆行列の求め方携帯版

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○ 単位行列の定義
 任意のn次正方行列Aに対して右から掛けても左から掛けてもAとなるような行列を単位行列という.
Eが単位行列 ⇔  任意のn次正方行列Aに対して
AE=A
EA=A

※ 単位行列は次数ごとに決まる.紛らわしくなければ,単にEで表してもよいが,次数の異なる様々な単位行列を扱っているときは,その次数に応じてEnで表す.
2次の単位行列はE2=
==
3次の単位行列はE3=
=
=
n次の単位行列はEn=

=
=
※ 任意の数xに対して右から掛けても左から掛けてもその値を変えない数を単位元という.
eが単位元 ⇔  任意の数xに対して
xe=x
ex=x
 数の単位元e1である.すなわち,次の等式が成り立つ.
任意の数xに対して
x·1=x
1·x=x

※ 単位元は,すべての数に対して共通なものが1つだけある.(e=1










※ 各々の数x (x0)に対して右から掛けても左から掛けても単位元となる数yx逆元という.
yxの逆元⇔ 各々の数xに対して
xy=1
yx=1
 0でない数xの逆元y
ある.すなわち,次の等式が成り立つ.
各々の数xに対して
=1

·x=1

※ 逆元は各々の数に対応して1つずつ決まり,異なる数の逆元は異なる数になる.

 2の逆元は3の逆元は

○ 逆行列の定義
 与えられたn次正方行列Aに対して右から掛けても左から掛けても単位行列Eとなるような行列をA逆行列といい,A−1で表す.
A−1Aの逆元 ⇔  各々の行列Aに対して
AA−1=E
A−1A=E
※ 行列の割り算は定義されていないのでとは書かない.ここでは,−1という記号を「逆の」という意味の記号だと考えるとよい.

※ 逆行列は,正方行列に対してのみ定義でき,正方行列でない行列に対しては逆行列は考えない.

 また,0でない数に対してのみ逆数があるのと同様の事情があり,下記に述べるように行列式が0とならない行列に対してのみ逆行列が存在する.

 逆行列が存在する行列は正則であるという.(このような行列を正則行列という.)
Aは正則行列 ⇔ det(A)0

○ 逆行列の求め方
(1) Excelで求める方法
 下の表1においてA1:D4に4×4行列が入力されているとき,その逆行列をF1:I4に書き込む場合を例にとって解説する.

Excelのワークシート関数で逆行列を求めるものは MINVERSE(元の行列の範囲) なので,これを利用する.

1) セルF1に =MINVERSE(A11:D14) と書きこむ.
 (関数を覚えずにメニューからたどっていくときは,画面上の方にある数式バーの左側のfxをクリック→関数の分類:数学/三角またはすべて,関数名:MINVERSE OK →配列:A1:D4 OK)

2) 1)の段階ではF1のセルに逆行列の1つの成分が書き込まれるだけで逆行列全体(配列=行列)が書き込まれるわけではない.そこで,次に逆行列全体を得るために,F1:I4の範囲を配列にする.そのためには,
 F1:I4の範囲を選択,反転表示にしておいて,画面上の数式バーをポイントし,Ctrl+ShiftしながらEnterを押す.

*) 下記の表1の例のように,元の行列Aの各成分が整数値であってもその逆行列の各成分は小数(または分数)となることが多い.Excelでセルの書式設定が「標準」や「数値」になっているとどのような分数を表しているのか分からないことがある.
 (i) 分母が3桁までの分数になるときは,下記のように分数で表示することができる.このとき,負の分数は帯分数として表示され,整数部分にのみ符号が付けられる.例 -3 1/3 = -10/3 のこと

Excel2002:書式→セル,分数,3桁増加
Excel2007:ホーム→セル 書式,分数,3桁増加
 (ii) 元の行列の各成分が整数であるのに,分母が4桁以上の分数になるようなときは,後に述べるように逆行列の計算においてdet(A)で割ることが原因なので,得られた逆行列の各係数をdet(A)倍してみると,それがどのような分数を表していたかが分かる.(結果は戻して考える必要あり.注→
表1
  A B C D E F G H I
1 4 4 1 0   -3 1/3 3 5/6 3 1/6 1 1/3
2 2 3 1 -2   1 2/3 -1 2/3 -1 1/3 - 2/3
3 0 1 -1 2   7 2/3 -8 2/3 -7 1/3 -2 2/3
4 5 -1 2 1   3 -3 1/2 -2 1/2 -1
逆行列の例
A=のとき
=
=
だから A−1=

B=のとき
=
=
だから B−1=


 左の表1の例では,det(A)=6となり,
det(A) * A−1=
-20 23 19 8
10 -10 -8 -4
46 -52 -44 -16
18 -21 -15 -6
となるので,det(A)=6で割れば左の結果と一致する.

 次の行列の逆行列を求めよ.(各成分は小数第3位まで求めよ.)
(1)
1.2 2.3 2.4 3.2
0.7 0.23 0.1 0.3
3.1 3.2 3.5 -4.1
1.3 1.2 0.1 0
(2)
0.365 0.361 0.783 0.019 0.624
0.817 0.93 0.59 0.68 0.037
0.699 0.429 0.643 0.71 0.794
0.4 0.092 0.158 0.88 0.44
0.365 0.406 0.719 0.527 0.396
(解答)
(1)
-0.127 1.887 0.039 -0.224
0.123 -2.097 -0.057 1.152
0.169 0.629 0.178 -0.920
0.145 0.328 -0.107 -0.055
(2)
73.145 18.168 -77.481 71.430 -40.970
-80.878 -18.608 87.480 -80.026 42.699
40.212 9.218 -44.179 39.054 -19.037
-9.735 -2.288 9.069 -7.852 6.095
-44.554 -11.359 49.873 -44.252 22.964


○ 逆行列の求め方
2) 余因子行列を用いて筆算で求める方法
(各成分が数値として与えられた行列の行列式を求めるには1)のExcelによる方法で十分である.
 線形代数の教科書では行列の「基本変形」を用いて逆行列を求めることが多いが,その説明はかなり長くなるので,ここでは次の定理によって説明する.)
【もとになる定理】
 行列A余因子行列とおくと
A =det(A) E
が成り立つ.
よって,
A−1=
【逆行列を求める手順】
(1) 元の行列の各成分aijに対して,その行と列を取り除いた行列の行列式を求め,これに符号を付ける.(符号までつけたものが余因子Aij
(2) (1)で求めたものAijを成分とする行列を作る.
(3) (2)でできた行列の転置行列を作る.(これが余因子行列
(4) 余因子行列(の各成分)をdet(A)で割ったものが元の行列の逆行列
(解説)
◇余因子とは◇
○ 各(i,j)成分に対して,i行とj列を取り除いた残りの行列を考える.
---------------------------------------
(1) 例えばa11に対しては,次のようにa22a33の2×2行列を考える.
a11 a12 a13
a21 a22 a23
a31 a32 a33
 次に,(−1)1+1の符号を付けたものを(1,1)余因子といいA11で表す.
A11=(1,1)余因子という.
 符号は下の符号一覧表のようにチェック模様になり,(1,1)余因子の符号はである.
---------------------------------------
(2) 同様にして,a21に対しては,次のようにa12a33の2×2行列を考える.
a11 a12 a13
a21 a22 a23
a31 a32 a33
 次に,の符号を付けたものが(2,1)余因子となる.
A21=(2,1)余因子という.
---------------------------------------
(3) a31についても同様にa12a23の2×2行列を考える.
a11 a12 a13
a21 a22 a23
a31 a32 a33
 次に,の符号を付けたものが(3,1)余因子となる.

A31=(3,1)余因子という.

◇符号一覧表◇
 次の表のように(1,1)成分からスタートして各(i,j)成分に符号を付ける.・・・式では(−1)i+jと書かれるが,結果は「左上端が+のチェック模様」になる.
 水色で示したのは第1列に関して余因子展開するときに使う符号
続く→
続き
○ 行列Aの行列式det(A)は,これらの余因子を用いて表すことができる.(余因子展開)
det(A)
=a11·a21·+a31·

det(A)=a11·A11+a21·A21+a31A31

→ これは,行列式が2つのベクトルの内積で表されることを示している.

→ 行列Aの行列式det(A)はベクトル(a11, a21, a31 )とベクトル(A11, A21, A31 )の内積に等しい.

→ これは,行ベクトルと列ベクトルの行列としての積が行列式det(A)に等しいことを表している.
=det(A) …(1)
=det(A) …(2)
 ここでは行列Aの第1列について展開した余因子展開で示したが,余因子展開はいずれかの列または行について,「行列の成分とその余因子の積の和」を求めたものとなっている.


◇余因子行列とは◇
 行列Aの余因子をそのまま並べた行列と行列Aとの積では,上記のような余因子展開に対応するものができない
 行列Aの余因子を並べた行列の転置行列を作ると行列Aとの積が,上記のような余因子展開に対応する
…(3)
 行列Aの余因子を並べた行列の転置行列 t [Aij]を余因子行列といいで表す.

Aの対角成分,対角成分以外の成分◇
1) Aの対角成分は,次のようになる.

A(1, 1)成分は
a11·A11+a21·A21+a31A31=det(A)
⇔ 行列Aの第1列について展開したものだからdet(A)に等しい.
det(A)を求めるときに,行列Aのどの行,どの列について余因子展開してもよいから,第2列,第3列について展開したときを考えると次の等式が成り立つ.

A(2, 2)成分は
a12·A12+a22·A22+a32A32=det(A)
⇔ 行列Aの第2列について展開したものだからdet(A)に等しい.

A(3, 3)成分も同様
2) A対角成分以外の成分は,次のようになる.

A(1, 2)成分は
a12·A11+a22·A21+a32A31
となる.
ところで,であるならば,
det(A)=a11·A11+a21·A21+a31A31
となるはずであるのに対して
a12·A11+a22·A21+a32A31
になっているのであるから,これは

という行列を第1列について展開したものとなっている.
このような式は,行列Aの2つの列が等しいときの展開に対応しており,2つの列が同じ場合の行列式は0になる.

a12·A11+a22·A21+a32A31=0
2つの列が等しいとき行列式は0になることは,次のことから分かる.
 例えば,上記のA'を第3列について展開すると


となって,各々の2×2行列式は
a22a32−a22a32=0, a12a32−a12a32=0, a12a22−a12a22=0となるから,det(A')=0になる.

 線形代数の基本から順に習う場合は,行列式の基本性質○5 【行列式の性質 III 】 において,列の写像としての行列式の「交代性」(2つの列を入れ替えると行列式の符号が逆になる)により

2つの列が等しいときに入れ替えると,

だから

が直ちに示される.
同様にして,一般にijのとき,A(i, j)成分は0になることが示される.

 以上の1)2)をまとめると上記の(3)のようになり

A
対角成分はdet(A)に等しい.
対角成分以外の成分は0に等しい.
したがって,

A=det(A) E
よって,
A−1=


例1 次の行列の逆行列を求めよ.
A=
(解答)
 各成分の余因子を求める.
a11=4の余因子はA11=2
a12=−の余因子はA12=−5
a21=−の余因子はA21=−(−1)=1
a22=−の余因子はA22=4
 行列の転置行列が余因子行列
 これをdet(A)=4 · 2−5·(−1)=13で割ると
…(答)
例2 次の行列の逆行列を求めよ.
A=
(解答)
 各成分の余因子を求める.(個々の余因子は2×2行列の行列式det(A)=ad−bcに符号を付けたものになる)
a11=1の余因子は10·2−(−2)·(−9)=2
a12=5の余因子は{ 2·2−(−1)·(−9) }=5
a13=−4の余因子は2·(−2)−(−1)·10=6
a21=2の余因子は{ 5·2−(−2)·(−4) }=−2
a22=10の余因子は1·2−(−1)·(−4)=−2
a23=−9の余因子は{ 1·(−2)−(−1)·5 }=−3
a31=−1の余因子は5·(−9)−10·(−4)=−5
a32=−2の余因子は{ 1·(−9)−2·(−4) }=1
a33=2の余因子は1·10−2·5=0
 行列の転置行列が余因子行列
 これをdet(A)=1(20−18)−2(10−8)+(−1)(−45+40)=2−4+5=3で割ると
…(答)

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